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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2016年2月1日号


  本号のコンテンツ
   ☆知財講座        ■特許法上の発明■
   ☆ニューストピックス   ■改正特許法が4月1日施行■
                ■特許料金等が改定へ■
   ☆イベント・セミナー情報
 

 まだまだ寒い日が続いていますが、いよいよ立春を迎え、暦の上では春になります。暖かい地域ではまもなく梅の花が開花するのではないでしょうか。とはいえ、冬の寒さとインフルエンザの流行はまだ続きますので、体調管理はしっかり行いたいものです。

 改正特許法等の施行日が4月1日と決まりました。企業活動にとって影響があり、注目された「職務発明制度」などが改正されることになりましたので、今号では、その概要について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(2)特許法上の発明

 前号では特許制度の目的(発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する)(特許法第1条)を説明しました。本号では「保護及び利用を図る」とされている「発明」について説明します。
 特許法では、「発明」を、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています(特許法第2条第1項)。
 法律で定義しているわけですから、この定義に該当しないものについて特許取得を目指して特許庁へ申請(出願)しても、「そもそも特許で保護する対象ではありません」と判断されて特許権取得できません。
 一方、企業などで日常的に行われている技術開発・研究活動や、実際の生産活動の現場などで生まれてくる新しい技術的な工夫・改良・改善・アイディアが「発明」であって特許で保護される対象であると一般的に理解されているのではないかと思います。
 一般的にこのように理解されている「発明」が実は上述した特許法の定義にかなったものであることを、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」という特許法の文言に沿って説明します。

A.自然法則の利用

 ここでの自然法則は、自然界において経験的に見いだされている法則のことをいいます。例えば、「水は高いところから低いところへ流れる」、「木は水に浮かぶ」というようなものです。
 自然法則を利用していることが要請されるのは特許法の目的に関係しています。特許法は産業の発達を目的にしています。産業になり得るためには、どこのだれがやっても同様の結果が得られる必要があります。
 すなわち、産業として成立するためには、何らかの因果関係が存在しているがゆえに、反復して行うことができ、どこのだれがやっても同じように再現できることが要請されます。
 このために、「自然法則」を利用しているものでなければ特許法上の発明に該当しないとしているものです。
 そこで、永久機関のように自然法則に反するもの、人為的取り決めに過ぎないもの(例えば、人為的に取り決めたビジネス方法・ゲームのルールなど)、万有引力の法則のように自然法則そのものであって自然法則を利用していないもの、等は、特許法上の発明に該当しません。

B.技術的思想

 所定の目的を達成するための具体的手段が技術的思想であるとされています。
 単なる「技術」ではなく、「技術的思想」とされているのは、何らかの目的、例えば、従来のこの装置では「このような不具合があるのだが」、従来のこの装置では「効率がいま一つなのだが」というような克服・解決すべき目的、問題点・課題が存在しているときに、その目的を達成する、その問題点・課題を解決する程度に具体化されている「技術」を「技術的思想」として特許で保護しようとするものです。
 なお、「技能」と呼ばれるものがあります。技能は、個人の熟練によって習得されるもので、熟練している先達から同じように教えを受けても身に着けることのできる人と、身に着けることができない人とが出てくることがあります。
 これに対して、「技術的思想」における「技術」は、実際に利用することができ、知識として伝達することができるものです。
 「技能」はノウハウなどの営業秘密として不正競争防止法で保護されることがあります。

 営業秘密〜営業秘密を守り活用する〜(経済産業省HP)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html

 中小企業経営者のためのノウハウの戦略的管理マニュアル(東京都知的財産総合センター)
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/knowhow/index.html

C.創作

 創作とは、創り出すことをいいます。この意味で、何ものをも創り出さない「発見」は特許法上の発明に該当しません。
 例えば、従来から地球上に存在していた物質(天然物)を発見しただけでは、特許法上の発明に該当せず、当該物質(天然物)について特許取得することはできません。
 なお、発見した物質(天然物)によって発揮される機能や用途を発見した場合、例えば、抗がん機能を発揮できることを発見した場合などには、当該物質(天然物)について「抗がん剤」などと表現される発明として特許取得することが可能になります。
 「創作」とは何かを作り出すことですので、従来になかった新しいものであることが要求されます。発明は創作であって、そもそも、新しさが要求されるものですから、特許権付与に値するかどうか特許庁が検討・判断する際に、従来知られていなかった新規なものであることが検討・判断されます。

D.高度

 ここでの高度性は、いわゆる「ハイテク技術」と呼ばれるような、技術のレベルにおける高度性を要求するものではありません。
 「自然法則を利用した技術的思想の創作」を保護するものとして特許法(特許権)の他に実用新案法(実用新案権)があります。「自然法則を利用した技術的思想の創作」という点で同質のものを2つの異なる法律で保護することから、両者でそれぞれ保護する対象の相違を明確にするため、特許法で保護する「発明」については「高度」という文言を定義に入れているものでしかありません。
 企業における日々の研究・開発活動、生産活動の中で、ふと思いついた、簡単な、ちょっとした工夫・改良・改善であっても、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当し、特許権取得を目指して特許庁へ申請(出願)した時点で新規であり(=新規性)、申請(出願)より前に世の中で知られていた技術・知識に基づいて申請(出願)の時点で簡単・容易に考えつくことのできるものではなかった(=進歩性)、等の、特許権付与を認めるための実体的な条件が満たされていれば、他社による模倣を排除できる独占排他権たる特許権が付与されることがあります。

E.日々の仕事・業務の中から生まれる発明

 企業などで日常的に行われている技術開発・研究活動や、実際の生産活動の現場などで生まれてくる新しい技術的な工夫・改良・改善・アイディアは、日々の業務・仕事において直面している問題点・課題を解決できるものですから、一般的に、上記で説明した「自然法則の利用」、「技術的思想」、「創作」、「高度」をすべて満たしています。
 そこで、一般的に「発明」であると認識、理解されている日常の業務・仕事の中から生まれてくる新しい技術的な工夫・改良・改善・アイディアは、上述した新規性、進歩性、等の条件を満たすものであれば、いずれも、特許になり得る可能性を備えています。

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■ニューストピックス■

職務発明制度の見直しなど改正特許法が4月1日施行

 政府は昨年の通常国会で成立した「平成27年改正特許法等」の施行に関係する政令を閣議決定しました。施行日は平成28年4月1日。
 主な改正内容は、「職務発明制度の見直し」、「特許料や商標登録料・更新登録料の引き下げ」、「特許法条約、シンガポール条約(商標)への加入に伴う特許法、商標法の規定整備」などです。

【職務発明制度の見直し】

 職務発明制度の見直しは、企業や発明者にとって大きな影響があるため、注目を集めました。
 本改正により、企業の社員が職務上の研究で生み出した発明(職務発明)について、特許を取得する権利を、企業が報酬規程などを整備することなどを条件として、「社員の帰属」から「企業の帰属」に変更することが可能となります。

 現行法では、職務発明を特許にする権利は社員のもので、企業は「相当の対価」を支払って譲り受けています。新たな制度では、社員が発明した新技術の特許を取得する権利については、企業が社内の規程などによって、あらかじめ定めておくことで、その特許を取得する権利を発明が生まれたときから企業が保有することを可能にしました。
 使用者等が従業者等に対してあらかじめ職務発明規程等に基づいて帰属の意思表示をした場合に、初めから法人帰属とすることが可能となります。従業者は相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利を有することになり、これには金銭のみならず、研究費用、研究設備、処遇なども含まれます。
 ただし、施行後も規程整備が困難な中小企業や大学などに関しては、引き続き発明者に帰属する現行体制のままでいることも認められています。
 このため、使用者としては、まず、職務発明の特許を受ける権利を、その発生の時から使用者に帰属させるかどうかについて、どちらの体制を選択するかを決定する必要があります。
 また、特許を受ける権利の企業に帰属する場合の相当の利益を付与する手続や対価(報酬)などについては、特許庁が指針(ガイドライン)を近く公表する予定です。
 ガイドライン案は既に特許庁より公表されていますので、ご参照ください。

http://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/shokumu_guideline.htm

【特許料等の改定】

 改正特許法等の施行に伴い、今年4月1日から特許関係料金、商標関係料金、国際出願に係る国際調査手数料等が改定されます。

特許:特許料及び特許権登録後の毎年の特許料を10%程度引き下げ。
商標:商標登録料を25%程度、更新登録料を20%程度引き下げ。

 具体的には、特許出願料が現行の15,000円から14,000、特許料が第1年から第3年で、現行の毎年2,300円+請求項数×200円から毎年2,100円+請求項数×200円、商標設定登録料が現行の区分数×37,600円から区分数×28,200円、商標更新登録料が現行の区分数×48,500円から区分数×38,800円などに引き下げとなります。
 国際出願の調査手数料等は日本語及び外国語別の料金体系に改正されます。
 特許料金等の詳細については、特許庁HPをご参照ください。

平成27年特許法等改正に伴う料金改定(平成28年4月1日施行)のお知らせ

【特許法条約、シンガポール条約(商標)への加入】

 外国語出願における翻訳文の提出期間を経過した場合の救済規定等の導入。
 書類の添付忘れ等瑕疵ある出願について、一定期間内に限り補完を可能とする制度を導入。

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  ■イベント・セミナー情報■

2月3日 東京都中野区 中野サンプラザ
平成27年度改正特許法 職務発明ガイドライン案説明会
(特許庁)

2月9〜10日 東京都港区 金沢工業大学虎ノ門大学院
―ビジネスモデルの構築と知的財産・標準化の戦略的活用―先進事例に学ぶグローバルイノベーション実践研修 
2月9日東京都港区虎ノ門 発明会館
新・特許審査基準 〜新基準のポイントを特許取得の観点から詳細に解説〜
(発明推進協会)

2月10日 東京都中央区銀座 松屋アネックスビル
裁判例・審査基準からみた「新しい商標」制度の現状分析・対応策と意匠との新たな関係
(経済産業調査会)

2月19日 東京都千代田区霞が関 東京倶楽部ビル
日本弁理士会 中央知的財産研究所設立20周年記念(第13回)公開フォーラム
(日本弁理士会)

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最終更新日 '16/04/28