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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━
2016年3月1日号


  本号のコンテンツ
   ☆知財講座        ■特許権の効力■
   ☆ニューストピックス   ■商標の不正使用で最低賠償を設定■
                ■秘密情報の保護ハンドブック公開■
   ☆イベント・セミナー情報
 

 いよいよ3月となりました。新年度を控え忙しくなる時期ですが、4月1日より特許関係、商標関係の料金が改正されますので、出願や登録のタイミングに注意しましょう。

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の正式合意を受け、特許庁は商標の不正使用で生じた損害に対し、最低賠償額を設定する新たな制度を設ける方針です。企業のブランド戦略に影響のある改正ですので、今号はその概要を紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(3)特許権の効力

 「特許を取る」などとよく言われます。これは、開発した新しくて有用な発明について特許庁へ出願(申請)し、審査を受けて特許権を取得することです。
 これまで、特許制度の目的、特許法上の発明について説明してきました。今回は、特許権を取得することによってどのような利点・効果を得ることができるのか、特許権の効力について説明します。

●排他的な独占権としての特許権

独占的な効力

 「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定されています(特許法第68条)。特許権を取得することで特許権者は特許成立した発明を独占的に実施可能です。なお、「特許発明」とは、特許庁へ出願(申請)し、審査を受けて特許権が認められた発明のことです。

排他的な効力

 正当な権限を有しない第三者が特許発明を事業として実施している場合、その特許発明に係る特許権が侵害されていることになります。
 この場合、その特許権を所有している特許権者は、その特許権に基づいて、民事上、刑事上の救済を受けることができます。
 民事上の救済としては、以下に説明する差止請求権(特許法第100条)、損害賠償請求権(民法第709条)があります。この他に、不当利得返還請求権(民法第703条)、信用回復措置請求権(特許法第106条)などがあります。
 民事上の救済の他に、特許権侵害を行った者には10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)という特許権侵害罪(特許法196条)が課せられます。

差止請求権(特許法第100条)

 特許権を侵害している者あるいは侵害するおそれがある者に対して侵害行為の差し止めを請求できます。
 特許権侵害を行っている者が製造、等している物が特許権の効力が及ぶ範囲内の物であることを立証することで侵害行為の差し止めが認められ、更に、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除去なども請求できる強い権利です。

 損害賠償請求権(民法709条)

 侵害行為が行われていること、侵害行為に故意又は過失があること、特許権者に損害が生じていること、侵害行為と特許権者に生じた損害との間に因果関係が存在していることを特許権者が立証すれば、民法709条の規定に基づいて損害賠償が認められます。

 なお、特許庁では、特許権が成立した後、成立した特許権の内容を特許公報に掲載して社会に公示しています。そこで、特許権侵害した者には過失があったと推定されます(特許法第103条)。このため、特許権者は侵害行為を行った者に故意又は過失が存在したことを立証する必要ありません。

 逆にいえば、事業を行う者は、新しく採用する技術が第三者の特許権を侵害するおそれのないものであるかどうか、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)
などで調査、確認しておくことが望ましいことになります。

●財産権としての特許権

 特許権は財産権であり特許権者は自由に使用、収益、処分できます。
 財産権ですから、特許権者は、特許権を自由に譲渡(贈与、売買、交換など)できます。また、特許権は、相続や会社合併などの一般承継によっても移転します。
 上述したように、特許権者自らが独占的に実施して収益を上げることができる他に、他社に実施許諾して収益を上げることもできます。

 特許権者が第三者に対して行う実施許諾には、特許権者との間の契約によって定めた範囲内において特許発明を独占排他的に実施可能になる専用実施権(特許法第77条)と、特許権者との間の契約によって定めた範囲内において特許発明を実施しても特許権者から権利行使を受けなくて済む通常実施権(特許法第78条)があります。

 特許権者だけで独占的に実施する、専用実施権を設定して専用実施権者と共同で特許発明品(特許発明)を独占排他的に実施する、多数の企業に広く通常実施権を許諾して特許発明品(特許発明)を日本国中で採用されるスタンダードな技術にする、等々、いろいろな考え方、活用方法があります。

●特許権の活用

 以上のような効力を有する特許権を所有していることで次のような活用が考えられます。
  • 特許発明品と同一の物を同業他者が後追いで生産開始して市場参入してくることを防止する。
  • 特許権者のみが生産・販売可能な製品であることや、特許権取得している新規・オリジナルな製品であること、あるいは、特許製品であることから第三者の特許権を侵害するおそれが少ない製品であること、等をアピールして取引先との交渉を進め、また、新たな取引先を開拓する。
  • 特許権取得している技術力を強みとして会社の信用を高め、また、他社との技術協力を行うきっかけにする。

 この他に、開発した新しくて有用な発明について特許庁へ出願し、審査を受けて特許権を取得する社内活動により次のような利点が考えられます。

 防衛的な効果

 同じ内容の発明については一日でも先に特許出願を行った者に特許権が与えられます(先願主義:特許法第39条)。そこで、自社が採用する技術内容について他社に先んじて特許出願を行っておけば、その後に、同一の発明について他社が行う特許出願に特許権が成立し、自社が採用し先に特許出願を行っていた技術内容に対して、当該後からの特許出願に成立した他社の特許権に基づいて「特許権侵害行為に該当します」という攻撃を受けるおそれを防止できます。

●技術開発力の育成・強化

 特許権を取得することで独占排他的な実施など、市場で有利な立場になり得ることで社員のモチベーションを高め、日々の生産活動、研究・開発活動において、新規で、有用な技術的工夫を見つけ出し、創作することの大切さを意識させ、技術開発力の育成・強化、人材の育成、社内の活性化を図ることなどが可能になります。

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■ニューストピックス■

●商標の不正使用で最低賠償額を設定、特許庁が商標法改正へ●

 特許庁は偽ブランドなどの商標の不正使用で損害が生じた場合に最低額の損害賠償(法定損害賠償)を受けられる新たな制度を設ける方針を決め、産業構造審議会の知的財産分科会で示しました。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の規定を踏まえ、商標法の改正案を今国会に提出する予定です。
 昨年10月に大筋合意したTPP協定では、商標の不正使用をめぐり、損害賠償額に下限を設けるといった法定の損害賠償制度を導入することを規定しています。権利者が賠償を得られやすい制度が整備されることにより、特にTPP協定域内の新興国において、日本企業のより効果的な侵害対策が可能となります。
 新たな制度では、被害額を算定できなくても侵害行為を立証できれば最低額の補償を受けられるようになります。商標の不正使用による損害の賠償を請求する場合において、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できる規定が提案される見通しです。被害額が算定できた場合は、その分の賠償金を得られます。
 インターネットの普及に伴い、不正商標商品が国境を越えて流通しやすくなっている状況においては、被害額の算定にあたり、不正利用者が得た利益などを立証するための証拠集めなどに費用や時間がかかることもあり、権利者が泣き寝入りするケースが少なくありません。そこで損害額に関する権利者の立証負担を相当程度軽減することにより、侵害を受けた権利者が賠償を得られやすくするとともに、商標の不正使用を抑止する狙いです。

●「秘密情報の保護ハンドブック」、経済産業省が無料で公開●

 経済産業省は、企業が情報漏えいを防ぐための対策例などをまとめた「秘密情報の保護ハンドブック〜企業価値向上に向けて〜」を作成し、公開しました。
 経済産業省によると、大企業の約40%、企業全体でも15%弱が、「自社の営業秘密の漏えいがあった若しくはそのおそれがあった」と回答しています。漏えいがないと回答する企業の3割は、漏えいの把握も含め対策を行っていないとのことであり、実際の漏えいはさらに高いものと推測できます。
 ハンドブックでは、経営者をはじめ、企業の担当者が秘密情報の管理を行う際の参考となるよう、秘密情報を決定する際の考え方、具体的な漏えい防止対策、取引先などの秘密情報の侵害防止策、万が一情報の漏えいが起こってしまった時の対応方法等を紹介しています。
 「保有する情報をどのように洗い出し、その情報をどのように評価するのか」「秘密として保持する情報と、そうでない情報を分ける際の考え方」などについて取り上げています。

【主な漏えい対策】

@秘密情報に「近寄りにくくする」…アクセス権の限定、施錠管理。
A秘密情報の「持出しを困難にする」…私物USBメモリ等の利用禁止。
B漏えいが「見つかりやすい環境づくり」…レイアウトの工夫、防犯カメラの設置。
C「秘密情報と思わなかったという事態を避ける」…マル秘表示、ルール周知。
D社員の「やる気を高める」…ワークライフバランス、社内コミュニケーション。

<他社から意図せず訴えられないために>
  • 保有する情報は、自社の独自情報と立証できるようにしておく。
  • 転職者の受け入れ、共同研究開発など、他社とのトラブルがやすい場面ごとに対応策を講じる。例えば、前職での契約関係の確認や他社情報の分離保管など。
 ハンドブックは経済産業省のHPから無料でダウンロードできます。

http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf

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  ■イベント・セミナー情報■

3月15日 東京都港区 TKP新橋ビジネスセンター
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/tokkyo/annai/tugboat.html
平成27年度戦略的知財マネジメント促進事業(知的財産セミナー)
支援機関向け知的財産セミナー 支援機関における中小企業の知的財産支援のあり方
(発明推進協議会)

3月16日 東京都千代田区 経団連会館
http://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/info/2016/chizai0316.html
国際シンポジウム 経営幹部のためのグローバルイノベーション
〜IoT・ビッグデータ・人工知能を活用した新たなビジネスモデルと知的財産・標準化戦略〜
(特許庁)

3月22日 東京都千代田区 東京都中小企業振興公社
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2015/280322chizaikatsuyo.html 「下町ロケット」のビジネスは現実にどこまで通用するか
〜中小・ベンチャー企業が学ぶべき「ビジネスモデルと知財マネジメント」入門〜
(東京都知的財産総合センター)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '17/04/03