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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2016年12月1日号


  本号のコンテンツ

  ☆知財講座☆
 ■特殊な出願(1)■
 
  ☆ニューストピックス☆
 ■IoT関連技術の審査基準を公表■
 ■世界に先駆け、IoT関連技術の特許分類を新設■
 ■「革新的ものづくり補助金」の公募を開始■

  ☆イベント・セミナー情報
 

 今年も早いもので残り1カ月となりました。年末に向け慌ただしくなる時期ですので、体調管理には十分ご注意ください。
 最近、注目されているIoT(Internet of Things)関連技術ですが、先日、特許庁から同技術の審査基準等が公表されました。今号では、その概要について取り上げていますので、ぜひチェックしてみてください。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(12)特殊な出願(1)

 前回は「出願審査の請求」が特許庁に提出されることで開始される特許庁での審査の概要を説明しました。
 今回と次回はこれまで説明してきた通常の特許出願の他に行われることがある特殊な特許出願について紹介します。

優先権主張出願(特許法第41条)

 一年以内に日本国特許庁へ提出していた先の特許出願を基礎として、当該先の特許出願に基づく優先権を主張して行う特許出願です。
 特許出願を行った後に、改良発明や、関連した発明が完成することがあります。この場合、改良発明や、関連発明を、新たに特許出願して特許権取得を目指すことができますが、このようにすると、特許出願の数が増えます(先に行っていた特許出願と、その後に完成した改良発明、関連発明について行う特許出願)。
 一年以内に行っていた先の特許出願で特許請求していた発明の改良発明や、関連発明を別個独立の特許出願にせず、先の特許出願に付け加えて1件の特許出願として審査を受け、1件の特許権で成立させた方がコストの面でも、手続や、特許権管理の面でも有利になることがあります。
 そこで、先の特許出願を行ってからの1年以内に限って、先の出願に基づく優先権を主張した新しい特許出願(=優先権主張出願)を行って、改良発明や関連発明を先の特許出願に追加し、先の特許出願から新しい特許出願(=優先権主張出願)に乗り換えることができるようにしているものです。
 例えば、平成27年(2015年)11月30日に特許出願人Xが発明aについての特許出願Aを行い、その後に、発明aに関連した発明a´を完成させ、先の特許出願Aに基づく優先権を主張して、発明a´を先の特許出願Aに追加する新しい特許出願(=優先権主張出願)A´を1年後の平成28年(2016年)11月30日に行う場合で説明すると次のようになります。

(先の出願:A)平成27年11月30日出願
   特許請求の範囲 請求項1(発明a)
   特許出願人:X

(優先権主張出願:A´)平成28年11月30日出願
   特許請求の範囲 請求項1(発明a)
           請求項2(発明a´)
   特許出願人:X

<先の出願の取り下げ>
 優先権主張の基礎になっている先の出願Aは先の出願日から1年3カ月が経過した時点で取り下げたものとみなされ、消滅します(特許法第42条第1項)。
 これによって優先権を主張した後の特許出願A´のみが残ることになり、コスト、手続、特許権管理などの面で2件の特許出願に対応する場合に比較すると有利になります。

<優先的な取り扱い>
 優先権主張の基礎になっている先の出願Aは消滅することから優先権を主張した後の出願A´についてのみ審査請求し、実体的な審査を受けます。
 この際、特許性(新規性、進歩性、同一の発明については一日でも先に特許出願した者が特許を受けることができる先後願、など)の判断に関して、発明aについては先の出願Aの出願日(平成27年11月30日)を基準にして判断され、優先権主張出願で追加した発明a´については、優先権主張出願A´の出願日(平成28年11月30日)を基準にして判断されます。
 そこで、優先権主張の基礎になっている先の出願Aが消滅しても不利益を受けることはありません。

<出願公開の時期>
 特許出願については、出願日から18カ月(一年半)経過した時点でその内容が特許庁から公表されます(特許出願公開)。優先権主張出願の場合、優先権主張の基礎にしている先の出願は消滅するため出願公開されず、優先権主張出願のみが、優先権主張の基礎にしている先の出願から18カ月経過した時点で出願公開されます。
 上記の例の場合、優先権主張の基礎になっている先の出願Aは出願公開されず、優先権主張出願A´の内容が、先の出願Aの出願日(平成27年11月30日)から18カ月経過した平成29年5月30日以降に出願公開されます。
 一般的に、優先権主張出願では、先の特許出願で提出していた明細書、特許請求の範囲、図面の内容をそっくりそのまま利用し、優先権主張出願で追加する発明事項を先の特許出願の明細書、特許請求の範囲、図面に追加します。そこで、優先権主張の基礎にしていた先の特許出願の内容(明細書、特許請求の範囲、図面の記載内容)も、優先権主張出願が出願公開される際に出願公開されることになります。

<審査請求できる期限>
 特許出願については出願日から3年以内に審査請求することで審査が開始されます。優先権主張出願の場合、審査請求できる期限の3年は優先権主張出願の日から起算されます。上記の例の場合、優先権主張出願A´の出願日から3年である平成31年11月30日まで審査請求できます。

<特許権の存続期間の終期>
 特許権は特許庁での審査の結果「特許査定」を受け、それに応じて30日以内に1〜3年分の特許料を納付することで成立します。特許権成立後は、毎年、特許権成立の日(=登録日)に対応する日までに特許権を維持するための特許料を特許庁に納付することで、最長で、出願日から20年間存続します(医薬、農薬に関する発明の場合は出願日から25年まで延長されることがあります)。
 優先権主張出願の場合、権利存続期間の終期である出願日から20年は優先権主張出願の日から起算されます。上記の例の場合、優先権主張出願A´の出願日から20年である平成48年11月30日が権利存続期間の終期になります。

<優先権主張出願を行う際の注意>
 優先権主張の基礎にする先の特許出願の出願人と、優先権主張出願の出願人とが同一でなければ優先権主張出願できません。先の特許出願に係る発明についての特許を受ける権利を承継した者が優先権主張出願を行う場合には、まず、先の特許出願についての出願人名義変更を行った上で優先権主張出願を行うことになります。
 先の特許出願の日から1年以内でなければ優先権主張出願を行うことが認められません。なお、1年以内であれば何度でも優先権主張出願できます。例えば、先の特許出願A(請求項1:発明a)の出願日から半年後に、先の特許出願Aに基づく優先権を主張して改良発明a'を追加する優先権主張出願A'(請求項1:発明a、請求項2:発明a')を行い、先の特許出願A(発明a)の出願日から1年後に、先の特許出願Aと、A'とに基づく優先権を主張して改良発明a"を追加する優先権主張出願A"(請求項1:発明a、請求項2:発明a'、請求項3:発明a")を行うこともできます。
 先の特許出願が、既に、放棄、取り下げなどによって消滅していたり、早期審査を受けて特許査定や拒絶査定が確定している場合には、たとえ、先の特許出願の日から1年以内であっても先の特許出願に基づく優先権主張出願を行うことはできません。
 実用新案登録出願は「自然法則を利用した技術的思想の創作」という点で特許出願で保護を目指す発明と同じである考案の保護を目指しています。そこで、実用新案登録出願を基礎にして優先権を主張した特許出願を行うことが可能です。ただし、現状の実用新案は、実体的な審査を行うことなく出願日から1カ月半程度で登録になります。そこで、現状では、実用新案登録出願に基づく優先権を主張して特許出願を行うことができるのは実用新案登録出願の日から1カ月程度の期間に限られていると思われます。
 なお、先の特許出願が、分割出願、変更出願などである場合には、これを基礎にして優先権主張出願を行うことができません。分割出願、変更出願については次回に紹介します。
 出願時の明細書、図面などに記載していた事項に対して新規な技術事項を追加する補正を特許出願後に行うことは「新規事項追加の補正」となって、拒絶理由、無効理由になります。
 特許出願後に、新規な事項を明細書、図面の記載に追加したいということになり、それが、特許出願日から1年以内であるならば、先の特許出願に基づく優先権主張出願を行って、新規な事項が追加された新しい特許出願に乗り換えることが可能です。
 なお、優先権主張出願は、先の特許出願の取下・消滅という効果をもたらします。実際に行う場合には制度の内容をよく理解している弁理士、等の専門家に相談することが望ましいと思われます。
以上


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■ニューストピックス■

●IoT関連技術の審査基準を公表●
〜特許庁、特許審査の事例も紹介〜

 “「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報を活用し、新たな価値・サービスを見いだす技術”(IoT(Internet of Things)関連技術)の研究開発及びビジネスへの適用が急速に進んでいるとして、特許庁調整課審査基準室が「IoT関連技術の審査基準等について」(平成28年11月 特許庁)を公表しました。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/iot_shinsa_161101/all.pdf

 「特許になる発明」、「特許請求の範囲と明細書等」、「特許出願の審査の流れ」と、特許制度の概要を説明した上で、「IoT関連技術における審査基準」が説明され、「IoT関連技術の特許審査の事例」が紹介されています。
 IoT関連技術における審査基準の中から「新規性の判断」と「進歩性の判断」については次のように説明されています。

□新規性の判断□
 IoT関連技術は、通常、複数の装置や端末がネットワークで接続されたシステムで実現されるため、当該システムの一部がサブコンビネーションの発明(注)として特許出願されることがあるIoT関連技術のサブコンビネーションの発明の新規性の判断は、他のサブコンビネーションの発明についての新規性の判断と変わらない。
(注) 二以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明、二以上の工程を組み合わせてなる製造方法の発明等 (コンビネーション)に対し、組み合わされる各装置の発明、各工程の発明等。

□進歩性の判断□
 IoT関連技術の発明の進歩性の判断は、他の発明についての進歩性の判断と変わらない。
 IoT関連技術の発明においては、引用発明との相違点に関し、「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報の活用による有利な効果が認められる場合がある。
 このような場合は、進歩性の判断において、当該効果を「進歩性が肯定される方向に働く要素」の一つとして考慮する。

□特許審査の事例□
 「IoT関連技術の特許審査の事例」で紹介されているものには次のようなものがあります。
 「ネットワークを介して外部サーバと通信可能な電気炊飯器の動作方法」、
 「配車サーバと、配車希望者が有する携帯端末と、無人走行車とから構成される無人走行車の配車システム」、
 「ウェアラブルセンサ、健康管理サーバ、端末装置から構成される健康管理システム」、
 「三次元移動が可能なドローン装置によって、見守り対象を見守るドローン見守りシステム」、
 「画面インターフェイス及びGPS機能を有する腕時計型デバイスと、当該腕時計型デバイスとネットワークを介して通信可能な情報配信サーバとから構成されるランニング支援システム」、
 「複数の車両が備えるワイパーに装着されたワイパー動作センサ、及び前記ワイパー動作センサとネットワークを介して接続される分析サーバを備える豪雨地点特定システム」などが紹介されています。

●IoT関連技術の特許分類を新設●
〜世界に先駆け、横断的に検索可能〜

 特許庁は、世界に先駆けてIoT関連技術の特許分類を新設したと発表しました。横断的な分類である「広域ファセット分類記号」(ZIT)を新設し、日本の特許文献に対して付与を行います。広域ファセット分類記号とは、各分野にまたがり横断的な観点から文献収集(検索)を可能とするもので、超電導技術(ZAA)、環境保護技術(ZAB)、電子商取引(ZEC)などがあります。
 これによりIoT関連技術について、2017年から順次、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を通じて特許事例の網羅的な収集・分析が可能となり、IoT関連技術に関する特許取得の予見性が高まると期待されています。
 特許出願には、出願の技術内容の仕分けのために特許分類が付与されています。特許分類は、先行文献の調査を効率的に行うためや、技術開発動向の把握のツールとして重要ですが、これまで、IoT関連技術に関する特許情報を網羅的に収集可能な特許分類は存在していませんでした。
 このため特許庁では、世界で初めてIoT関連技術の特許分類(ZIT)を新設しました。ZITは、「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報を活用し、新たな価値・サービスを創造する技術に付与されます。

●平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の公募を開始●

 中小企業庁は、平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の公募を開始しました。
 ものづくり補助金は、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を支援する制度です。

◎事業の詳細◎
・中小企業者等が第4次産業革命に向けて、IoT・AI・ロボットを活用する革新的ものづくり・商業・サービス開発を支援
(補助上限:3,000万円、補助率:2/3)
・中小企業者等のうち経営力向上に資する革新的ものづくり・商業・サービス開発を支援(※)
(補助上限:1,000万円、補助率2/3)
※雇用増(維持)し、5%以上の賃金引上げについては、補助上限を倍増
※最低賃金引上げの影響を受ける場合は補助上限をさらに1.5倍(上記と併せ補助上限は3倍)
◎公募期間:平成29年1月17日(火)
◎公募要領等については、以下のページをご覧ください。
http://www.tokyochuokai.or.jp/sienseido/jyoseijigyou/monozukurihojyokin.html
東京都中小企業団体中央会

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  ■イベント・セミナー情報■

12月9日 東京都港区 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/h28/1209.pdf
企業の知財部員がすべき「知財実務手順の対応」
(発明推進協会)

12月16日 東京都千代田区 東京都中小企業振興公社
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2016/281216asean.html
ASEAN知的財産戦略セミナー
(東京都知的財産総合センター)

12月19日 東京都港区 虎ノ門三井ビルディング
http://www.inpit.go.jp/katsuyo/tradesecret/28fyseminar.html
平成28年度営業秘密・知財戦略セミナー
(工業所有権情報・研修館)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
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最終更新日 '17/04/11