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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2017年4月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆
 ■外国での特許権の取得■


  ☆ニューストピックス☆

 ■輸入差止件数、10年連続で2万件を超える(財務省)
 ■外国特許出願等にかかる費用の半額を助成(東京都)
 ■「新技術開発補助金」の募集を開始(新技術開発財団)
 ■後発メーカーの特許侵害を認定(最高裁)
 〜均等の第5要件(特段の事情)〜


  ☆イベント・セミナー情報

 財務省は、平成28年度に全国の税関で輸入を差し止めた偽ブランド品などの知的財産権侵害物品の件数を発表しました。10年連続で2万件を超えており、依然、高止まりの状況が続いています。海外模倣品に苦慮されている場合、「輸入差止申立制度」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。侵害物品が市場に出回っていることを証明ができれば、輸入者を特定する必要なく、海外から輸入された時点で侵害物品を排除することが可能です。裁判に比べてコストがかからず、結果が出るのが早いのもメリットです。
 詳しくは当事務所までご相談ください。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■特許制度の概要■

(16)外国での特許権の取得

 これまで15回にわたって特許制度の概要を説明してきました。外国での特許権の取得を最後に説明します。

(A)特許権は各国ごとに取得する

 特許権の効力は特許権を取得した国の領域内に限られています。
 外国で第三者が製造、販売を行っている行為を特許権に基づいて差止などするときには、その国へ特許出願し、その国の特許庁で審査を受けて、その国で成立させた特許権に基づく必要があります。
 一つの国で特許権取得するだけで世界のどの国においても保護が受けられるようになる「国際特許」というようなものはありません。あくまでも国ごとに特許出願を行って、国ごとに特許庁の審査を受け、国ごとに○○国特許権を成立させることになります。

(B)世界各国で共通しているルール

 各国ごとに特許出願を行って各国ごとに審査を受けますが、これまで日本の制度で説明した次のような取り扱いは、基本的に、世界のどの国においても共通しています。

 先願主義:
 世界のどの国の特許庁でも、同一の発明については一日でも先に特許出願が行われているものが優先されます

 新規性:
 世界のどの国の特許庁でも、特許庁で特許出願を受け付ける前に世界のどこかで知られていた、あるいは用いられていた発明は新規性欠如と判断されて特許が認められません

 進歩性:
 世界のどの国の特許庁でも、特許庁で特許出願を受け付ける前に世界のどこかで知られていた、あるいは用いられていた発明に基づいて、特許出願の時点で、簡単・容易に発明できたものは進歩性欠如と判断されて特許が認められません

(C)外国へ特許出願するルート

 外国への特許出願には次の3ルートの中のいずれかを採用できます。

 (ア)最初から、直接、目的とする国へ特許出願する

 (イ)日本で特許出願を行った後、1年以内に、その日本国特許出願に基づく優先権を主張して、目的とする国へ、直接、特許出願する(パリルート)

 (ウ)日本国特許庁へ国際出願を提出した後、所定の期間内に、目的とする国へ移行する(PCTルート)

(D)優先権制度

 各国における特許出願は、その国の公用語で、その国の特許庁が定める形式・様式に従って、その国の代理人(弁理士など)を通じて行います。このため、(ア)の、最初から、直接、目的とする国に特許出願を行うルートは、外国人(法人)にとって容易ではありません。
 そこで世界各国はパリ条約を締結し、第一国で最初の特許出願を行った後1年以内に、最初の特許出願に基づく優先権を主張して、目的とする第二国への特許出願が行われた場合には、先願主義、新規性、進歩性、等の特許要件の判断を第二国の特許庁で行う際に、第一国で特許出願が行われていた日に第二国でも特許出願が行われていたとみなすようにしています。上述した(イ)を「パリルート」と呼ぶのはこのためです。

(E)国際出願(PCTルート)

 (イ)のパリルートの場合、日本国への特許出願の日から1年以内に翻訳文などを準備して外国へ特許出願する必要があります。
 しかし、日本国への出願日から1年では、将来どの国で特許の保護を受ける必要があるのか判断できないことがあります。

 (ウ)の特許協力条約(Patent Cooperation Treaty(PCT))に基づく国際出願はこのような場合などに活用できます。
 日本語※で、日本国特許庁に国際出願を行うことができます。
 ※英語で日本国特許庁あるいは特許協力条約の国際事務局へ国際出願することもできます。
 国際出願を行った日に、PCT加盟国(世界152カ国※)で特許出願を行ったことになります。上述したパリ条約の優先権を伴った国際出願を行うこともでき、この場合には、世界各国で審査を受ける際に上述した優先権制度の効果を享受できます。
 ※台湾(中華民国)は特許協力条約に加盟していないためPCTルートを使えません。台湾へ特許出願する場合には、直接、特許出願する、あるいは日本特許出願の日から1年以内に二国間の取り決めに基づく優先権を主張して特許出願します。
 国際出願を日本語で日本国特許庁に行って、台湾を除く、世界中の国での特許出願日を確保することができても、各国における特許権成立のために、各国特許庁の審査を受けねばならない点は変わりません。
 そこで、国際出願を行った日、あるいは優先権を主張した国際出願の場合には優先権主張出願の日から30カ月以内※に、特許取得を目指す必要のある国の特許庁に対して、必要な翻訳文を作成して提出し、必要な出願料などを納付する、等の国内移行手続を当該国の代理人(弁理士など)を通じて行います。
※優先日から31カ月以内であればよい国や、優先日から20カ月以内に所定の手続を行う必要のある国もあります。

 国内移行手続を上述した所定の期間に行わなかった国における特許出願は消滅します。

(F)PCTルートの利点

 時間的余裕を確保できる

 パリ条約の優先権主張出願の場合、優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から12カ月(1年)以内に翻訳文を作成して目的とする国へ特許出願します。国際出願の場合には、優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から12カ月(1年)以内に日本語で日本国特許庁に国際出願しておけば、翻訳文を作成して目的とする国へ移行するのは優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から30カ月(2年半)以内になります。パリ条約の優先権主張出願の場合に比較して翻訳文作成、等の高額の費用が発生する時期を18カ月遅らせ、その間に、その国に入っていく必要があるのかどうか、その国における事業の進展などを勘案しながら余裕を持って判断できます。

 国際調査報告・見解を利用できる

 国際出願を行いますと、国際出願で特許請求している発明が世界の各国特許庁で審査されるときに新規性、進歩性の判断で引用される可能性がある先行技術文献(日本国特許庁が発行している特許出願公開公報だけに限らず、米国、欧州、中国などの各国特許庁が発行している公報もピックアップされます)を探す調査が日本国特許庁審査官によって行われ、その結果(国際調査報告)と、その結果に基づく新規性、進歩性に関する日本国特許庁審査官の見解(国際調査機関の見解)を受け取ることができます。
 国際調査報告、国際調査機関の見解は将来の各国特許庁の審査を拘束するものではありません。しかし、これらを受け取ることで、将来、目的とする国へ移行して審査を受けたときに特許成立する可能性についてある程度の判断を行うことができます。

(G)外国特許出願費用

 ある程度多くの国に特許出願を行う必要があるときには世界中の多くの国での特許出願日を確保できるPCTルートの方がパリルートより費用面で有利で、外国出願する国が1〜2カ国でしかなく、今後2年程度の間に「特許出願を行う必要がある」という判断に変更が加えられる可能性もないというときにはパリルートの方がPCTルートより費用面で有利であると考えられています。
 いずれにしても、翻訳文作成、外国において当該国の特許庁に対する手続を行う外国代理人の費用(手続手数料と外国特許庁へ納付する出願料)が必要になるため外国への特許出願には非常に高額な費用が必要です。
 このような外国出願費用について、ジェトロや、東京都などの地方自治体で助成が行われています。それぞれで申請時期や手続などに相違がありますので確認しておく必要があります。

ジェトロ:外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)
https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html

東京都:外国特許出願費用助成事業
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/tokkyo/index.html

(H)外国への特許出願の説明資料

 外国への特許出願については以下の特許庁HPで説明されています。また、弁理士などの専門家の助言を受けて行うことをお勧めします。

平成28年度知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト 第5節 外国での権利取得
https://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/pdf/h28_syosinsya/1_2_5.pdf
PCT国際出願制度の概要
https://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/kokusai1.htm

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■ニューストピックス■

●輸入差止件数、10年連続で2万件を超える(財務省)●

 財務省は、偽ブランド品など知的財産権を侵害したとして、平成28年度に全国の税関で輸入を差し止めた件数が26,034件だったと発表しました。10年連続で2万件を超えています。
 知的財産侵害物品の内訳をみると、偽ブランド品など商標権侵害物品が25,666件、偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が312件。バッグ類が10,727件で最も多く、携帯電話とその付属品が4,466件、衣類が3,873件などとなっています。

◆輸入差止申立制度◆

 ここでは「輸入差止申立制度」の概要について紹介します。
 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などを侵害する貨物が輸入されようとする場合に、権利者が税関長に対して、自己の権利を侵害する貨物の輸入を差止めるよう申し立てることができる制度です。
 この制度を利用すれば、海外で違法に製造された模倣品が日本国内で流通してしまうことを事前に阻止できますので、海外から輸入される模倣品対策に有効です。また、裁判に比べてコストがかからず、結果が出るのが早いのもメリットです。

 輸入差止の申立においては、輸入者を特定する必要はなく、侵害物品が市場に出回っていることの証明ができれば、海外から輸入された時点で侵害物品を排除することができるため、侵害物品の出所を特定できない場合も、この方法を使うことができます。

 申立には、侵害の事実を説明する侵害被疑物品・その写真、弁理士が作成した鑑定書などが必要になるほか、税関で侵害物品であることを識別できるサンプル、写真、カタログなどを提出します。申立が受理されれば、侵害品は税関で差し止められることになります。

 海外模倣品に苦慮されている方がいましたら、輸入差止申立制度の活用をお勧めします。

●外国特許出願等にかかる費用の半額を助成●
(東京都知的財産総合センター)

 東京都及び東京都中小企業振興公社は、都内の中小企業の海外展開進出を支援するため、外国への特許・実用新案・意匠・商標の出願等に要する費用等に係る経費の半額を助成する「外国特許出願費用助成事業」を行っていますが、平成29年度の第1回目の募集が4月3日から始まります。

 助成事業及び事業概要は次の通りです。

【外国特許出願費用助成事業】

対象経費:出願手数料、弁理士費用、翻訳料等
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額300万円
受付期間:4月3日(月)〜6月16日(金)締切(事前予約制)

【外国実用新案出願費用助成事業】
対象経費:出願手数料、弁理士費用、翻訳料等
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額60万円
受付期間:4月3日(月)〜6月16日(金)締切(事前予約制)

【外国意匠出願費用助成事業】

対象経費:出願手数料、弁理士費用、翻訳料等
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額60万円
受付期間:4月3日(月)〜6月30日(金)締切(事前予約制)

【外国商標出願費用助成事業】

対象経費:出願手数料、弁理士費用、翻訳料等
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額60万円
受付期間:4月3日(月)〜6月30日(金)締切(事前予約制)

【外国侵害調査費用助成事業】
対象経費:侵害調査費用、侵害品の鑑定費用、侵害先への警告費用、
税関での輸入差止対策費用
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額200万円
受付期間:随時。事前予約制

【特許調査費用助成事業】

対象経費:調査委託費用
助成額:助成対象経費の2分の1以内、限度額100万円
受付期間:随時。事前予約制。

 上記事業については、必ず事前に東京都知的財産総合センターへご相談ください。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/index.html

●「新技術開発補助金」の募集を開始(新技術開発財団)●

 新技術開発財団は、4月1日より「新技術開発補助金」の募集を開始しました。中小企業が研究開発した新技術を実用化するにあたり、その開発費用の一部を助成します。
 基本技術について特許出願等がなされており、実用化を目的とした開発試作に直接必要な費用が対象で、補助率は5分の4(限度額2,400万円)となっています。
先に補助金が受け取れるため、優れた技術を持ちながらも、開発を進めていく上で資金繰りに懸案がある中小企業にとっては便利
な補助金といえるでしょう。

 概要については以下の通りです。

(1)開発技術の要件

基本技術の知的財産権が特許出願等により主張されていること
実用化を目的とした開発試作であること
開発予定期間が原則1年以内であること

 なお、臨床試験段階の開発・ソフトウエア製品の実用化開発・研究段階、商品設計段階、量産化段階の技術開発等については対象外となります。

(2)助成金の対象

本開発試作に直接必要な費用
2,400万円を限度(助成率5分の4)

(3)募集期間
第1次募集:4月1日〜4月20日
第2次募集:10月1日〜10月20日

 詳細については新技術開発財団HPをご覧ください。
http://www.sgkz.or.jp/project/newtech/download/outline.html

●後発メーカーの特許権侵害を認定●
〜均等の第5要件(特段の事情)、最高裁判決〜

 中外製薬が軟こう薬の製法特許を侵害されたとして、後発医薬品メーカーなど4社を提訴していた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷は、中外製薬の主張を認めて4社に販売の差し止めなどを命じた二審・知的財産高等裁判所大合議判決を支持し、後発メーカー側の上告を棄却しました。これにより中外製薬の勝訴が確定しました。
(平成28年(受)第1242号 特許権侵害行為差止請求事件 判決言渡:平成29年3月24日)。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/634/086634_hanrei.pdf

 後発医薬品メーカーが輸入・販売している医薬品の製造方法には中外製薬特許の製造方法と異なる点がありました。しかし、二審・知財高裁大合議判決は、均等論(最高裁 平成6年(オ)第1083号「ボールスプライン軸受」事件 平成10年2月24日判決)の適用を認めていました。
 後発医薬品メーカーは、中外製薬特許の製造方法と異なる点は、「特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情」に相当し、均等論の第5要件が満たされていないと主張していました。
 最高裁第二小法廷は、「中外製薬が、本件特許の特許出願時に、本件特許請求の範囲に記載された構成中の、後発医薬品メーカーの製造方法と異なる部分につき、客観的、外形的にみて、後発医薬品メーカーの製造方法に係る構成が本件特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて本件特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたという事情があるとはうかがわれない。」として、後発医薬品メーカーの上告を棄却しました。

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  ■イベント・セミナー情報■

4月13日 AP秋葉原
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/290413chizaikiso.html
知的財産基礎セミナー 〜中小企業にとっての知的財産とは〜
(東京都知的財産総合センター)

4月14日 コンファレンススクエア
http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-75734.html
2017年度 東京都の中小企業施策の概要と注目事業について
(東京商工会議所)

4月18日 発明会館
http://www.jiii.or.jp/kenshu/h29/0418.pdf
知的財産権 初心者講座 〜基本的な知的財産権の理解のために〜
(発明推進協会)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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最終更新日 '17/09/27