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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2017年10月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■中小企業の知財戦略■

 (6)特許出願での保護、営業秘密での保護


  ☆ニューストピックス☆

 ■「国際出願促進交付金」の概要
 ■類似の収納棚、無印良品がカインズに勝訴(東京地裁)
 ■知財権侵害の輸入差し止め11%増(財務省)
 ■音のみの曲、初めて商標登録(特許庁)


  ☆イベント・セミナー情報


 外国に特許出願をする場合、近年は、外国の特許庁に直接特許出願するのではなく、まず「PCT出願」という手続きを日本国特許庁に日本語で行うケースが増えています。PCT出願は、それをするだけでPCT加盟国の全てに特許出願したものとみなされ、各国特許庁へ翻訳文提出、出願料納付などを行う時期を18〜30カ月遅らせることができます。
 所定の条件を満たした中小ベンチャー企業や小規模企業がPCT国際出願を行う場合、納付する手数料の一部を交付金として受け取れる制度があります。
 今号では、「国際出願促進交付金」の概要について紹介します。

 PCT国際出願に関しては、お気軽に当事務所までご相談ください。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■中小企業の知財戦略■

(6)特許出願での保護、営業秘密での保護

 会社内で行う発明発掘・発明創作活動、その過程での特許調査についてこれまで説明してきました。
 今回は、発掘・創作した発明を、特許出願によって保護するか、あるいは特許出願せず、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)などで保護するか検討・判断する際のポイントについて説明します。

A.特許出願は社会に公表される

 特許出願で特許庁へ提出する書類(明細書、特許請求の範囲、必要な場合の図面)には、特許権の取得を希望する発明の内容を明瞭・明確に記載すること、記載されている通りに行うことで特許権取得を希望している発明を誰でもが再現できる程度に詳細に説明することが要求されます。産業の発達という特許法の目的から要請されるものです。
 特許庁は受け付けた特許出願の内容を秘密に保持しますが、出願日から18カ月(1年6月)経過した時点で、それ以前に取り下げられている、等の事情が存在しない限り、特許出願人に関する情報(名称、住所)などと共に特許出願の内容を社会に公表します。紙ベースでは特許出願公開公報を発行して誰でも閲覧可能にし、特許出願公開公報発行と同時に特許出願公開公報の内容が特許庁のJ-Plat Pat にアップされてインターネット上で誰でも閲覧可能になります。

B.営業秘密は社会に公表されない

 ノウハウなどの営業秘密は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(不正競争防止法2条6項)ですから、そもそも、社会に公表されていないことを前提にしています。
 また、先使用権(特許法第79条)も、特許権者から「特許権侵害に該当する」等の権利行使を受けた際に、その特許権についての特許出願が行われるより前から事業の実施あるいは、事業の実施の準備を行っていたので、引き続き事業を継続できるとするものなので、社会に公表されていないのが一般的です。
 そこで、内容がいずれ社会に公表されて同業他社が知ることになるのを前提とした特許出願で保護を図るか、社会に公表されない営業秘密、先使用権(特許法第79条)によって保護を図るのか検討することになります。

C.一般的な判断基準(1)

 次のような場合には一般的に特許出願を行うべきと思われます。

ア.いずれ同業他社もたどり着くであろうと思われる技術
 発明発掘・創作活動、特許調査などを通じて、特許出願を行うに足ると考えられた技術が、同業他社であっても通常に技術開発を行っておれば、いずれ到達・開発し得る技術であろう、と思われるものである場合。
 このような場合には、同業他社が先に開発を行って、先に特許出願してしまえば特許権取得されて、自社の実施が不可能になることがあり得ます。そこで、特許出願して特許での保護を図る方が望ましいことになります。

イ.市場に提供する製品を分解・解析することで把握できる技術
 発明発掘・創作活動、特許調査などを通じて、特許出願を行うに足ると考えられた技術が採用された製品が市場に投入された際、その製品を分解・解析することで採用されている技術内容を把握できる場合。
 このような場合には、開発した商品を市場に投入することで技術内容が他社の知るところになってしまうわけですからあらかじめ特許出願して保護を求めることが望ましいことになります。

D.一般的な判断基準(2)

 物を製造する方法について特許取得できた場合には、その製造方法を使用して物を製造する行為だけでなく、その製造方法を用いて製造した物を販売する行為などにも特許権の効力が及びます。
 一方、検査方法のような、いわゆる単純方法と呼ばれる発明の場合には、その方法を使用する行為に対して特許権の効力が及ぶだけであって、物を製造する発明に与えられる上述した効力はありません。
 そこで、検査方法のような、いわゆる単純方法についての発明であって、その方法を採用していることや、その方法の内容を同業他社が把握することは困難であるし、その方法が同業他社によって使用されているかどうかを調査・把握することも困難である場合には、特許出願を行わずに、営業秘密として保護を図ることが考えられます。

E.総合的な検討・判断

 特許取得を希望する発明(技術内容)を誰でもが再現できる程度に詳細に記載して特許出願を行う必要があるといっても、記載するものは特許出願の時点で把握していた実施例、実施形態になります。また、発明は、「技術的思想の創作」という抽象的・概念的なものですから、特許請求する発明によっておさえることのできる効力範囲は、特許出願の際に記載する実施例、実施の形態に限られません。
 特許権での保護を受ける場合には、国(特許庁)が審査を行って独占排他権(特許権)が付与され、その内容が国(特許庁)から特許公報で公示されているので、相手の侵害行為と、それが特許権の効力範囲に属すること、等を立証するだけで権利侵害行為の排除が可能になります。
 一方、社会に公表されていなかった営業秘密などの場合には、相手の侵害行為などを主張、立証する前に、保護を受け得る営業秘密であることや、先使用権を有していることを、最終的には裁判所が納得するように、主張・立証する必要が生じます。

 「中小企業白書2009」を用いて紹介したように、中小企業において特許権の取得は、ヒット商品の誕生、企業業績の向上、信用力の獲得、新規顧客の開拓などに関係することが認められています。社内における発明の発掘・創作活動は、市場やユーザー・顧客のニーズの収集・把握、同業他社の技術動向の把握を伴うので、これらによって会社の技術力・開発力を高め、その結果の特許出願によって技術部門・開発部門の意欲向上を期待できます。
 また、同じ発明については一日でも先に特許出願を行っていた者に特許が与えられるという先願主義(特許法第39条)の下、自社で実施する技術について特許出願を行っておけば、その日より後に誰かが行った特許出願に特許が成立し、自社が実施している技術に対して「特許権侵害に該当する」等の権利行使を受ける危険が少なくなります。
 そこで、特許出願によって保護するか、あるいは特許出願せず、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)で保護するかは、単純に、上述した一般的な観点からだけで判断できるものではありません。市場や、同業他社の動向、発掘・創作した発明の特質などを総合的に考慮した上で判断することになります。

 次回は、営業秘密や、先使用権(特許法第79条)での保護を図る場合どのような取り組みになるのか説明します。
以上


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■ニューストピックス■

●「国際出願促進交付金」の概要●

 「国際出願促進交付金」は、中小ベンチャー企業や小規模企業を対象に、PCT出願(国際出願)における「国際出願手数料」および国際予備審査請求を行う場合の「取扱手数料」について、納付金額の2/3に相当する額を交付する制度です。

1.対象者

 PCT国際出願をする日において、出願人(共願の場合には、出願人全員)が以下の要件に該当しなければなりません。
[1] 個人事業主の場合、(1)従業員20人以下、(2)事業開始後10年未満、のいずれかに該当する必要があります。なお、事業を行っていない「個人」は対象となりません。
[2] 法人の場合、(1)従業員20人以下、(2)設立後10年未満で資本金3億円以下、のいずれかに該当する必要があります。

2.対象手数料

[1] 2014年4月1日以降に日本語でされた国際出願の「国際出願手数料」
 2014年4月1日以降に日本語でされた国際出願について、国際予備審査の請求をした場合の「取扱手数料」

3.交付金額

[1] 国際出願手数料:納付金額の3分の2に相当する額
[2] 取扱手数料:納付金額の3分の2に相当する額

4.申請期間

[1] 国際出願手数料:国際出願番号及び国際出願日の通知書の発送日後、かつ国際出願手数料を全額納付した日から6月以内
[2] 取扱手数料:国際予備審査請求書の受理通知書の発送日後、かつ取扱手数料を全額納付した日から6月以内
 軽減幅が約2/3と非常に大きいので、PCT出願をしようと考えている中小・ベンチャー企業や小規模企業の方がいましたら、検討してみてください。

 詳しくは特許庁HPをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/sokushinkouhu.htm

●類似の収納棚、無印良品がカインズに勝訴(東京地裁)●

 生活雑貨店「無印良品」を展開する良品計画が、自社製品と類似した収納棚を販売され、損害を受けたとしてホームセンターの「カインズ」に販売差し止めなどを求めた訴訟で、東京地方裁判所は「消費者が混同するおそれがある」などと類似性を認め、カインズに対して商品の廃棄と販売差止めを命じる判決を言い渡しました。
 判決では、無印の収納棚について「大規模な宣伝販売活動により、消費者の間で無印のデザインと認識されるようになった」と指摘。そのうえで、カインズの棚は「正面だけでなく、横や斜めから見たときの特徴も同一で、部材の直径や棚板の厚さが1ミリ程度違うだけであり、見た目で直ちに識別できない」と判断しました。
 カインズ側は「棚はありふれた形で、他社にも同種商品がある」と主張しましたが、判決では「両社の棚の形はほぼ同じで、消費者が商品を混同する恐れがある」として、カインズが棚を販売することは不正競争に当たると結論づけました。
 カインズは「内容を精査し、控訴する方向で対応する」とコメントしています。

●知財権侵害の輸入差し止め11%増(財務省)

 財務省は、偽ブランド品など知的財産権を侵害する物品の輸入差し止め件数が平成29年上期(1〜6月)で1万5393件となり、前年同期比11.1%増加したと発表しました。
 差し止め件数は過去3番目の高水準。地域別では中国からの輸入の差し止め件数が全体の9割を占めました。
 侵害案件を商品ごとに分類すると、商標権が57.2%、意匠権が27.9%、特許が7.7%の割合でした。デザインを保護する意匠権の侵害は18倍の7万7千点と増加が目立ちました。
 知的財産侵害物品の輸入差し止め点数では、使用時に発熱や発火などのおそれのある電気製品や、事故につながるおそれのある健康器具など、健康や安全を脅かす危険性のある物品の差し止め点数が大幅に増加しました。米アップルのスマートフォン「iPhone」の模倣品なども増加しました。
 財務省では、個人でインターネット通販を使って海外から輸入するケースが増加していることが要因の一つとみています。

●正露丸のラッパ音など、音のみの曲が初めて商標登録(特許庁)

 特許庁は、音楽的要素(メロディー、ハーモニー、リズムなど)のみからなる音商標3件について、初めて登録を認めました。大幸薬品と米インテル、独BMWの3社が出願していたメロディーを登録します。CMなどで長年使われており、広く認知されていると判断しました。
 「ラッパのマークの正露丸」で知られる大幸薬品の「パッパラパッパー」で始まるラッパ音のメロディーは1951年のラジオCMが始まり。パッケージに描いたラッパのマークとともに正露丸の広告宣伝に使われてきました。
 特許庁は、従来の文字や図形に加え、音商標、動き商標、色彩のみからなる商標などの新しいタイプの商標について、平成27年4月1日から出願受付を開始。これまでに、約1,600件の新しいタイプの商標の出願を受け付けており、すでに300件を超える登録がなされています。

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  ■イベント・セミナー情報■

10月10日 AP秋葉原
チャンスをつかむために〜今、中小企業が取り組むべきこと〜
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2017/291010chizaikatsuyo.html
(東京都知的財産総合センター)

10月10日 工業所有権情報・研修館
知的財産人材育成推進協議会主催 2017年度オープンセミナー
http://www.inpit.go.jp/jinzai/suishin/29_seminar.html
(知的財産人材育成推進協議会)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
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URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '18/03/12