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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2018年12月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (12)特許庁の審査結果を受け取る時期


  ☆ニューストピックス☆

 ■国際出願(PCT)の主な特徴とメリット
 ■食品の用途発明で特許権取得(月桂冠)
 ■著作権法改正、商標法改正など12月30日に施行(TPP11)
 ■人型ロボット「Pepper」が立体商標に(ソフトバンク)
 ■特許資産規模、三菱電機が1位(パテント・リザルト)


  ☆イベント・セミナー情報


 日本が1978年10月に特許協力条約(PCT)の加盟国となって今年で40周年となりました。
 日本における国際出願は、ほぼ毎年、前年を上回る件数が出願され、2017年は、加盟翌年(1979年)に比べて、実に100倍以上が出願されるに至っています。
 そこで今号では、国際出願(PCT)の主な特徴とメリットなどを紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(12)特許庁の審査結果を受け取る時期

【質問】
 特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
 当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

【回答】
 審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができますます。

特許庁が受け付けている特許出願の数

 特許庁が公表している「特許行政年次報告書2018年版」によれば、近年、日本国特許庁が受け付けている特許出願の数は毎年31万件〜32万件です。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018_index.htm


特許庁が受け付けている審査請求の数

 特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別個に審査請求が行われた後に開始されます。
 近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年24万件程度です(特許行政年次報告書2018年版)。
 審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、一日でも先を争って行った特許出願で特許請求している発明を改良したより良い発明を後に特許出願した等々の事情が生じることがある等々を考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。
 出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、先願の地位(特許法第39条)を確保する特許出願が行われたという事実、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表されその後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願は消滅します。その後に復活させて審査を受けるようにすることはできません。

 特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。


審査の結果を受けとれる時期

 審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。
 特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で9.3カ月です(特許行政年次報告書2018年版)。
 技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でもこの程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、いちようの目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。

 一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。
 この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。一回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、速ければ、審査請求から1年〜1年半程度で特許成立します。
 特許庁が公表しているデータによれば(特許行政年次報告書2018年版)、審査請求したものの中の70〜80%に特許成立しているようです。
 特許出願の中の75%程度が審査請求され、その中の70〜80%に特許成立していますので、特許出願の中の50〜60%に特許成立しているものと思われます。ただし、技術分野によって特許出願の何割程度に特許成立するかは大きく相違していると思われます。また、特許権の効力が及ぶ範囲を非常に狭く補正することで拒絶理由を解消できたということもよくあります。


早期審査

 特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。
 早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており(2017年実績)、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/v3souki.htm

 早期審査の対象になる出願は(1)実施関連出願、(2)外国関連出願、(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願、(4)グリーン関連出願などです。
 ここで「中小企業」とは中小企業基本法等に定める中小企業のこととされており、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。
 特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。


むすび

 一般的には審査請求後10カ月程度で、また、早期審査を受ければ3カ月程度で審査結果を受けとることが可能です。
 特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。


<次号のご案内>

 次号は、特許調査でライバルメーカーが行っている特許出願を発見したときにどのような対応を行うことが考えられるかご質問に回答します。

以上


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■ニューストピックス■

●国際出願(PCT)の主な特徴とメリット

 特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。2018年11月現在、152カ国がPCTに加盟しています。PCTの主な特徴とメリットを紹介します。


1つの出願ですべての加盟国でも出願日を確保

 PCTでは国際的に統一された出願書類を加盟国である自国の特許庁に対して1通だけ提出すれば、すべての加盟国に対して国内出願をしたことと同じ扱いを受けること(出願日の確保)ができます。


簡素な出願・手続

 PCTに関するほとんどの手続きは、自国の言語で自国の特許庁に対して提出でき、その効果はすべての加盟国に及びます。なお、最終的に取得したい国で特許が認められるかは、各国特許庁の審査に委ねられます。


特許性判断のための調査結果の早期取得

 国際出願は、その発明に関する先行技術の有無等が調査されます(国際調査)。この調査結果は、各国で審査を受けるための手続(国内移行)を進めるか判断する際に、自分の発明の評価をする有効な材料として利用できます。


優先日から30か月の猶予期間

 国内移行のためには、各国言語による翻訳文の提出や手数料の支払いが必要となります。この国内移行は優先日から原則30か月以内に行えばよく、その間に市場動向の変化や技術の見極めなどによって、各国への国内移行の要否をじっくり検討することができます。


PCT国際出願を行う際の注意点

 PCT国際出願は、出願手続きに関する国際制度であることから、最終的に各国で特許権を取得するためには、その国の特許庁での判断(実体審査)を受ける必要があります。


費用補助・手数料減額などの支援制度

 特許庁・INPITでは、中小企業を対象にPCTに関する費用補助・手数料の減額制度など、様々な支援を実施しています。国際出願をする際には、こうした支援策の活用も検討してみましょう。

 中小企業等向けの支援策については、特許庁HPをご参照ください。

http://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/tesuryou_keigen_shinsei.htm
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/sokushinkouhu.htm


●食品の用途発明で特許権取得(月桂冠)

 月桂冠株式会社は、日本酒の糖質を減らすと、飲酒後に息が酒臭くなりにくいことを発見し、「食品の用途発明」として特許権(特許第6404403号)を取得しました。
 「食品の用途発明」とは、食品の新たな機能性などを発見した場合、その用途に限定した発明が特許権として認められるものです。
 月桂冠の総合研究所は、日本酒を飲んだ後で特に増える主な臭い成分が6種類あることを突き止めました。複数の人に「糖質ゼロ」と一般的な純米酒を600ミリリットルずつ飲んでもらい、飲酒から2時間後の呼気に含まれる臭い成分を調べたところ、6種類中5種類の臭い成分が半分以下になったことが分かりました。その結果をもとに、飲酒後の不快臭を敬遠する人向けの糖質濃度の低い清酒の用途発明が特許権として認められました。

【請求項1】
 糖質を純米酒における糖質濃度よりも低い濃度で含有する、飲酒後呼気中不快臭気物質が前記純米酒の飲酒後よりも増加しない飲酒後の酒臭い不快臭を敬遠する人が飲むための清酒。


●TPP11協定が12月30日発効、著作権法、商標法など改正

 米国を除くTPP(環太平洋連携協定)参加11か国による「TPP11」は、発効に必要な6か国目となるオーストラリアの国内手続きが終了したことで、2018年12月30日にTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が発効することが決まりました。
 協定発効に伴い、日本国内において著作物等の保護期間の延長を含めた著作権法改正や、商標の不正使用に関する法定損害賠償制度を盛り込んだ商標法改正が12月30日に施行されます。
 著作権法の改正では、著作者の死後又は著作物の公表後「50年間」とされている著作権の保護期間(存続期間)が「70年」に延長されます。
 商標法の改正では、商標の不正使用による損害の賠償を請求する場合において、商標権者は、侵害者に対し、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できることになります。


●人型ロボット「Pepper」が立体商標に(ソフトバンクロボティクス)

 ソフトバンクロボティクスグループ株式会社は、人型ロボット「Pepper」の形状が、特許庁より「立体商標」として登録されたと発表しました。(登録番号第6081795号・登録番号第6047746号)
 立体商標とは、特徴的な看板やイメージキャラクター、お菓子や飲料水の容器など立体的形状の創造物に対して認められる商標権。現在、不二家の「ペコちゃん人形」、ケンタッキーフライドチキンの「カーネルサンダース人形」、キッコーマンの「しょうゆ卓上びん」、ヤクルトの容器など2,000件以上が登録されています。
 「Pepper」は2015年6月の発売。カメラやセンサーを通して人の感情を認識して会話できるロボット。胸のタブレットをタッチパネルとして活用できるため、企業の受付や接客、イベントなどで導入されています。

人型ロボット「Pepper」(ニュースリリースより)


●特許資産規模、三菱電機が1位(パテント・リザルト社)

 特許調査・分析のパテント・リザルトは、企業が保有する特許資産を質と量の両面から総合評価した「2017年度全業種・特許資産規模ランキング」を発表しました。トップ3は三菱電機、パナソニック、キヤノン。技術別でみると、運転支援技術が高く評価されました。
 1位の三菱電機は4年連続。車両制御などの分野に注目度の高い特許が多くみられました。車両制御の分野では「無線通信を用いて周辺車両との位置、速度、加速度などの車両情報を交換し、ドライバーに対して運転支援を行う技術」などが注目度の高い特許として挙げられました。
 2位のパナソニックは、撮像装置の信号処理や車両制御などの分野に注目度の高い特許が多くみられました。車両制御の分野では「複数のドライバーの運転状況を解析し、急ハンドルやふらつきなどの危険なハンドル操作を検知するための運転解析装置」などが注目度の高い特許として挙げられました。
 ランキングは2017年度に特許庁に登録された特許を対象に調査。
 早期審査請求や国際出願などの件数、競合他社が特許無効を求める審判や異議申立の有無、他の特許を拒絶する理由として引用された回数などといった指標をもとに、個別特許の注目度を指数化。企業ごとに総合得点を集計して資産規模を算出しました。

 詳細は、パテント・リザルト社HP
https://www.patentresult.co.jp/news/2018/11/all.html


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  ■イベント・セミナー情報■

12月12・18日   銀座ブロッサム中央会館
知的財産権制度説明会2018年(実務者向け)
http://www.jit2018.go.jp/kaisaichi_nittei.html
(特許庁)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
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E-mail:
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最終更新日 '18/12/31