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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━

2019年1月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

 (13)特許庁への情報提供(1)


  ☆ニューストピックス☆

 ■世界の特許出願件数が過去最高、中国が4割超える
 ■意匠・商標の審査・審判書類がJ-PlatPatで照会可能に
 ■スタートアップ企業向け「知財戦略ポータルサイト」開設


  ☆イベント・セミナー情報


 新年明けましておめでとうございます。
 昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。
 本年も所員一同、益々高まる知的財産の重要性に対し、皆様にご満足いただける知財サービスを提供できるよう、更なる努力を重ねて参りますので、昨年に増してご愛顧くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(13)特許庁への情報提供(1)

【質問】
 特許調査でライバルメーカーが行っている特許出願を発見しました。この特許出願で特許請求されている発明は当業界では従来から行っていたことの延長線上にあるものなので、特許は成立しないのではないかと思います。ライバルメーカーの特許出願に特許成立することを阻止する目的で何かできることはありますか?
【回答】
 発見した特許出願に特許成立することを阻止する目的で特許庁の審査に利用してもらうことを求めて先行技術文献などを提出できます。特許出願に対する情報提供になります。

刊行物提出
 特許出願で特許請求されている発明が、新規性、進歩性などの特許性を備えていないと思われる、等の事情について、特許庁に情報提供することができます(特許法施行規則第13条の2)。一般的に、特許出願で特許請求されている発明の新規性や進歩性などを否定する根拠になると思われる先行技術文献を提出する手続で「刊行物提出」と呼ばれます。
 特許庁によりますと、近年、刊行物提出件数は、年間7千件前後で推移し、刊行物提出を受けた案件の73%において、提出された文献等を拒絶理由通知中で引用文献等として利用しているとのことです(平成25年12月に拒絶理由通知書が起案された案件について調査)。
https://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/tt1210-037_sanko2.htm

情報提供できる人
 何人も刊行物提出できます。なお、特許庁へ提出する「刊行物提出書」における「提出者」の欄の「氏名又は名称」、「住所又は居所」に「省略」と記載することで、匿名で刊行物提出を行うことができます。

情報提供の対象となる特許出願
 特許庁に係属している特許出願に対して刊行物提出できます。特許庁の審査で拒絶査定が確定した等で特許庁に係属しなくなった特許出願に対しては刊行物提出できません。
 なお、対象の特許出願に審査請求が行われているかどうかに関係なく刊行物提出を行うことができます。
 刊行物提出は提出する刊行物を特許庁での審査に利用してもらう目的で行うものです。そこで、J-Plat Patでの検索で、審査請求が行われているが審査請求後数カ月しか経過しておらず、まだ特許庁審査官が審査に着手していないと思われるような特許出願や、まだ審査請求が行われていない特許出願に対して刊行物提出を行うのが一般的です。

提出することができる情報
 対象出願で特許請求している発明(=「特許請求の範囲」の請求項に記載されている発明)が、新規性、進歩性欠如により特許を受けることができない旨の情報(特許出願前に頒布されていた刊行物、インターネットを通じて公衆に利用可能となった情報、等)を提出できます。
 特許出願の技術分野に関係している業界内で頒布されている雑誌などの刊行物は特許庁が収集している先行技術情報の中に含まれていないことがあります。
 そこで、J-Plat Patの検索で発見した先行技術文献(特許出願公開公報、等)だけでなく、雑誌や、業界紙・誌、発行日を確定できる宣伝・広告物なども刊行物提出で提出することがあります。

提供された情報の取扱い
 審査官は、提供された刊行物については、原則、その内容を確認し、審査において有効活用を図ることになっています。
 なお、特許出願の審査は職権探知主義になっていて、審査を受けている発明が拒絶理由を有するものであるかどうかは職権で調査すべき事項になります。そこで、刊行物提出が行われた場合に、提出された刊行物の記載によって審査している発明に対して新規性・進歩性欠如の拒絶理由があると認められた場合に審査官がその旨の拒絶理由を通知するのは当然ですが、刊行物提出が行われた場合であっても、審査している発明の新規性、進歩性を検討・判断するために必要な先行技術調査が通常の審査の場合と同様に行われます。そこで、刊行物提出で提出された刊行物で新規性欠如・進歩性欠如の拒絶理由を構成できない場合であっても、審査官が独自に行った先行技術調査の結果に基づいて新規性欠如、進歩性欠如の拒絶理由が通知されることがあります。

特許出願人への通知
 刊行物提出があった事実は特許出願人に通知されます。刊行物提出で特許庁に提出された刊行物は、特許庁から閲覧に供せられ、誰でもが閲覧申請を行うことで内容を知ることができます。特許出願人も刊行物提出があった旨の通知を特許庁から受けた後、閲覧申請を行って、提出された刊行物の内容を把握、確認できます。
 特許出願人が審査請求を行う前に刊行物提出が行われ、特許出願人がその内容を把握、確認して、「これでは、審査を受けても新規性、進歩性欠如と判断されて特許取得を望むことができない」と判断した場合には、期限(出願日から3年)までに審査請求を行わず、特許出願が取り下げ擬制によって消滅することもあり得ます。
 しかし、一般的には、提出された刊行物以外の情報についても調査、審査を行ってその結果が拒絶理由として特許庁から通知されるのを待つことになると思われます。

情報提供者へのフィードバック
 刊行物提出で提出した刊行物の利用状況については、提出者が希望することで特許庁からフィードバックを受けることができます。この場合は、刊行物等提出書にその旨を記載することになります。
 なお、これは利用状況を確認できるだけのものです。提出した刊行物を審査官が新規性・進歩性欠如の拒絶理由に利用し、その旨の拒絶理由を通知したことに対して特許出願人が拒絶理由解消の目的で提出した意見書・補正書の内容に関して何らかの意見申し立てを行うことはできません。あくまでも、審査に利用してもらう先行技術文献としての刊行物提出を行えるだけです。
 現状では、J-Plat Patで「経過情報」を確認することで、提出した刊行物が拒絶理由に利用されたかどうかを簡単に確認できます。

まとめ
 刊行物提出手続では、新規性・進歩性欠如の拒絶理由を構成すると思われる上述した刊行物だけでなく「特許を認めることができない」とする種々の拒絶理由について特許庁へ情報提供することができます。
詳しくは専門家である弁理士にお問い合わせください。

<次号のご案内>
 本号では特許出願中のものに対する情報提供を紹介しました。次号では、特許成立済のものに対する情報提供に関するご質問に回答します。 

以上

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■ニューストピックス■

●世界の特許出願件数が過去最高の317万件、中国が4割超える

 WIPO(世界知的所有権機関)は、2017年の特許出願件数が前年比5.8%増の316万8900件になったと発表しました。8年連続の増加で過去最高を更新。
 特許出願の受け付け国・地域当局別件数をみると、1位は中国の138万1594件で、7年連続の首位。前年から14.2%増え、全体の43.6%を占めました。2位は米国の60万6956件(前年比0.2%増)、3位は日本の31万8479件(同0.03%増)で、いずれも微増。
 4位は韓国の20万4775件(同1.9%減)、5位は欧州特許庁(EPO)の16万6585件(同4.5%増)。上位5位の全体に占める割合は84.5%。
 WIPOが昨年3月に発表した国際特許の出願件数では、中国が日本を初めて抜き、米国に次ぐ2位となりました。中国での出願は、電子機器やコンピューター技術、デジタル情報通信の分野が目立っており、情報通信などのハイテク産業を育成するため、知的財産権の保護を積極的に進める姿勢を改めて裏付けた形です。
 企業による国際特許出願件数でも、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)をはじめとしたハイテク企業が大幅に出願を増やしています。
 一方、トランプ米政権は、中国が技術移転を強要するなど、知的財産権を侵害していると批判、米中貿易摩擦の要因の一つとなっています。



製造業の高度化目指す「中国製造2025」
 中国は、ハイテク産業を育成する「中国製造2025」計画を掲げ、知財の保護に積極的な姿勢を示しています。「中国製造2025」は、次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定し、製造業の高度化を目指す国家戦略です。
 第1段階である25年までの目標は「世界の製造強国の仲間入り」としています。品目ごとに国産比率の目標を設定しており、例えば、次世代通信規格「5G」のカギを握る移動通信システム設備では25年に中国市場で80%、世界市場で40%という高い目標を掲げています。また、産業用ロボットでは「自主ブランドの市場占有率」を25年に70%としています。
 中国政府は「中国製造2025」の策定後、関連産業に対する金融支援や、基盤技術の向上支援などの施策を相次ぎ打ち出しています。一方、米国は、昨年の米中貿易協議の中で、中国に対し、関連産業への補助金といった政府支援の中止など、計画の抜本的見直しを要求しています。


●意匠・商標の審査・審判書類がJ-PlatPatで照会可能に

 特許庁は、本年1月1日以降に出願された意匠・商標出願の審査・審判書類が、J-PlatPatで照会が可能になると発表しました。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/chouhoyu/chouhoyu2/tokkyo_platform_181129.htm

【照会可能となる主な申請書類】
 平成31年1月1日以降に特許庁で受け付けた申請書類
 願書、審判請求書、意見書、手続補正書、上申書 等
 その他に、特許庁が発送する書類(登録査定、拒絶査定、拒絶理由通知書、審決等)や面接記録、応対記録等が照会可能。

【照会の対象外となる主な申請書類】
 早期審査に関する事情説明書、手続補足書、刊行物等提出書 等
【照会可能となる内容】
 原則、全て(書類中の項目【意見の内容】【その他】の内容等)表示されます。ただし、以下の場合には表示されません。
(1)書類中の項目【住所又は居所】【電話番号】【ファクシミリ番号】の内容。J-PlatPatにおける書類照会においては、表示されません(<省略>と表示されます)。
(2)上記以外の項目の内容
 オンライン手続において、【提出物件の目録】及び【添付物件】の項目を設け、それらの項目より下に、画像データとして貼り付けた場合、その画像データは表示されません。
 申請書類に個人情報や営業秘密等を記載する必要がある場合、上記(1)及び(2)の範囲に記載することで、特許情報プラットフォームで表示されないようにすることができます。


●スタートアップ企業向け「知財戦略ポータルサイト」開設

 特許庁は、スタートアップに不可欠な知財戦略に関する基礎知識や支援施策、イベントなどの最新情報を集約した知財コミュニティポータルサイト「IP KNOWLEDGE BASE for Startup」 を開設したと発表しました。
https://ip-knowledgebases.go.jp/
 ポータルサイトでは、スタートアップに向けた知財事例集や各種支援策などの情報を集約して発信し、さらに、スタートアップやベンチャー・キャピタル、アクセラレータなどと、弁理士や弁護士などの知財専門家が共に参加する知財コミュニティを形成することを目指しています。
 サイトでは、掲示板、テーマ別勉強会などの会員限定情報や、CIPO(知財最高責任者)の普及に関する情報、スタートアップの知財活動に関する情報、スタートアップ向け支援施策、知財プロボノ・副業・インターンの普及に関する情報などを掲載していく予定です。


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  ■イベント・セミナー情報■

1月21日 銀座ブロッサム中央会館
平成30年度 意匠制度の改正に関する説明会
https://www.omc.co.jp/isyou2019seminar/
(特許庁)
1月28・29日 TKPガーデンシティ品川
グローバル知財戦略フォーラム
https://ip-forum2019.inpit.go.jp/index.html
(特許庁)

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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
新宿山崎ビル202
TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
E-mail:
URL: http://www.suzuki-po.net/

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最終更新日 '20/01/03