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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2019年2月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(14)特許庁への情報提供(2)


  ☆ニューストピックス☆

 ■特許料等の軽減措置、すべての中小企業に拡充
 ■4月1日以降の特許出願、審査請求料が引き上げ
 ■「ティラミスヒーロー」の類似ロゴを商標登録
 ■特許権侵害で査察制度を創設(特許庁)


  ☆イベント・セミナー情報


 2019年4月1日から全ての中小企業に対して、特許料、審査請求料および国際出願関連手数料の軽減措置が適用されることになりました。軽減措置の対象は、これまで一部の中小企業だけでしたが、4月1日からは、全ての中小企業が対象となります。
 一方、出願審査請求費用については、20,000円程度(出願の種類によって変わります)引き上げられることになっています。引き上げられた出願審査請求費用は、4月1日以降に出願された特許出願になりますので、ご注意ください。
 今号では、4月1日施行の特許料等の軽減措置の概要を紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(14)特許庁への情報提供(2)

【質問】
 ライバルメーカーの会社名を特許出願人の検索キーワードにして特許庁のJ-Plat Patで検索したところ、特許権が成立し、特許公報が先月発行されたものを見つけました。この特許の内容は当業界で従来から行われていた技術で、特許権が付与されたのが間違いではないかと思います。何か対応したいのですが、どのようなことが可能でしょうか?

【回答】
 発見した特許に対して、将来、特許無効審判が請求された際に特許庁での審理で利用してもらうべく特許庁へ情報提供を行う、特許の取り消しを求めて特許掲載公報発行後6カ月以内に特許異議申立を特許庁へ提出する、あるいは、特許を無効にすべきであるとして特許無効審判請求を特許庁へ提出する等の対応が可能です。

<特許付与後の情報提供>
 特許権が成立した後であっても特許庁に対して情報提供することができます。
https://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/jyouhou_01.htm

 特許権成立後の情報提供は、特許権成立後のいつでも行えます。特許権が成立する前に、特許庁での審査に利用してもらう目的で行う情報提供と同様に、誰でも提出可能です。また、特許庁へ提出する書類の「住所又は居所」、「氏名又は名称」の欄に「省略」と記載することで匿名で提出できます。
 提出する情報は、特許権が成立する前に行う情報提供と同様に、特許権が成立した発明が新規性、進歩性、等の特許要件を満たしていないものであること等を主張する根拠になる書籍、等の刊行物の写し、特許出願公開公報、実験報告書などの証明書、インターネットに掲載されていた技術情報などになります。
 特許庁の審査に利用されていなかった可能性がある業界紙・誌、発行日を特定できる商品カタログなども技術情報として提出できます。
 特許権成立後に情報提供が行われたことは特許庁のJ-Plat Patの経過情報−登録情報にアップされます。特許権者が権利行使を考慮するときには自己の特許権の状況を確認しますし、特許無効審判を請求しようとする第三者も特許権の状況を確認します。特許庁へ情報提供された技術文献の内容は書類閲覧を行うことで特許権者や、特許無効審判請求を検討している第三者の目に留まることになります。
 情報提供された技術情報によって特許無効になる可能性が高いときには、特許権者は特許権の行使に慎重になると思われます。特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められる場合、特許権者は権利行使できないとされているからです(特許法第104条の3 特許権者等の権利行使の制限)。また、第三者は、情報提供された技術情報を利用して特許無効審判請求に臨む可能性が出てきます。
 特許権成立後の情報提供にはこのような意義があります。

<特許異議申立>
 上述した特許権成立後の情報提供から一歩踏み込んで、特許の取り消しを求めて、特許庁に再審査を求める特許異議申立を行うこともできます。
 特許異議申立も特許付与後の情報提供と同じく誰でも行うことができます。ただし、情報提供制度のように匿名で行うことはできません。
 後述するように、特許異議申立が特許庁へ提出された後の審理は特許庁と特許権者との間で進められ、原則として書面審理になります。そこで、例えば、いわゆる、ダミーを立てて、真の申立人がわからないようにして特許異議申立を行うことも可能です。
 なお、特許付与後の情報提供の際、特許庁へ料金納付する必要ありません。特許異議申立では16,500円の基本料金に、異議を申し立てる発明1個あたり、すなわち、特許請求の範囲に記載されている請求項一個あたり400円が追加される特許異議申立料を特許庁へ納付する必要があります。

特許公報発行後6カ月に限り提出可能
 特許権が成立すると、特許庁は成立した特許権の内容を社会に公示するため特許掲載公報を発行します。特許出願公開公報と同様に紙で特許掲載公報が発行され、また、同時に、特許庁のJ-Plat Patでも公表されます。
 特許権成立から2〜3週間で特許掲載公報が発行され、その後6カ月以内に限って特許異議申立を特許庁に提出できます。

特許取消決定になれば特許権は消滅
 異議申立が提出されると特許庁では3人又は5人の審判官による合議体を構成して審理します。特許が成立するまでの審査では、拒絶査定不服審判を経ていない場合、審査官1人で審査しています。特許異議申立では審判官の合議体によって慎重で、的確な審理が行われることが期待されています。
 審理の結果、特許を取り消すべきとなった場合には特許取消決定が下されます。一方、特許を取り消すことはできないとなった場合には特許維持決定が下されます。
 特許取消決定に不服がある特許権者は、知的財産高等裁判所に決定の取消を求める訴えを提起できます。一方、特許維持決定に対して異議申立人は不服を申し立てることができません。特許異議申立人は、同一の証拠、同一の理由で、あらためて、特許無効審判を請求し、特許庁の審理を受けることができるからです。
 特許取消決定に対して不服を申し立てる道が無くなり、特許取消決定が確定したときには、特許無効審判請求で無効審決が確定した時と同じく、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます。
 なお、特許異議申立を審理した審判官合議体が「特許を取り消すべき」との判断になった場合には「特許取消理由」が特許権者に通知されます。特許権者は、新規性欠如・進歩性欠如、等が指摘される取消理由を解消する目的で、特許請求している発明の効力範囲を狭める「訂正請求」を行ったり取消理由に反論することができます。

異議申立を受けた特許権の10%程度が特許取消
 近年では毎年18〜19万件程度の特許権が成立し、特許掲載公報が発行されます。特許庁が公表しているデータによりますと、この中の0.6%程度に対して特許異議申立されているようです。
 特許庁が公表しているデータによれば、特許異議申立を受けた特許権の中の40%程度はそのまま維持され、45%程度は効力範囲を狭める訂正請求が行われて維持され、10%程度が取消決定となって消滅しているようです。
 10%程度しか取消決定確定になりませんが、異議申立を受けた特許権の中の45%程度は特許権の効力が及ぶ範囲が狭くなる訂正が行われています。これらのケースの多くでは特許異議申立の目的が達成されているといえるのかもしれません。
 特許権成立後の情報提供も、特許異議申立も、国(特許庁)が独占排他権として成立を認めた特許に対するもので、慎重に進めることが望ましいです。
 詳しくは専門家である弁理士にお問い合わせください。

<次号のご案内>
 次号では、特許異議申立とは異なって特許権成立後のいつでも提出可能で、特許異議申立と同じく、特許権が初めから存在しなかったものとみなされる効力を発揮できる特許無効審判についてのご質問に回答します。

以上

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■ニューストピックス■

●特許料等の軽減措置、すべての中小企業に拡充(4月1日施行)

 「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の一部を施行するための関係政令が昨年末に閣議決定され、2019 年4月1日に施行されます。改正法により、これまで一部の中小企業が対象だった特許料、審査請求料および国際出願関連手数料の軽減措置が、すべての中小企業に拡充されます。
http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181228004/20181228004.html

 現状では、所定の条件を満たしている中小企業のみが、必要な証明書を提出する等の手続を行うことで、特許出願した発明について特許庁で審査を受けるための審査請求料や、特許料(1〜10年分)について1/3に減免される措置を受けることができます。
 4月1日以降は、すべての中小企業が審査請求料、特許料(1〜10年分)が現状の半分程度に減免される措置を、証明書提出などの手続を行うことなしに、一律に受けることができます。
 また、一律半減措置が施行される前に行われていた特許出願について、施行後に審査請求する場合であっても半減措置を受けられます。
 4月1日以降の特許料、審査請求料、国際出願関連手数料の軽減対象者と軽減率は、以下のとおり。

1.中小事業者、特定中小事業者、試験研究機関等(大学、大学の技術移転を行う事業者、試験研究独立行政法人等):1/2軽減
2.小規模企業(従業員20人以下)、ベンチャー企業(設立10年未満):2/3軽減
3.福島復興再生特別措置法に係る事業を行う中小事業者:3/4軽減

●4月1日以降の特許出願、審査請求料が引き上げ

 すべての中小企業に対する特許料等の減免措置の適用に伴い、特許庁の歳入が減ることが予想されるため、4月1日以降の出願審査請求費用については、20,000円程度(出願の種類によって異なる)引き上げられることになりました。
 通常の特許出願に係る出願審査請求料は、118,000円+請求項数×4,000円が、138,000円+請求項数×4,000円となります。
 新料金が適用される特許出願は、出願日(または国際出願日)が、2019年4月1日以降のものとなるため、2019年3月31日までに行われた特許出願についての審査請求料は従前の料金となります。

◆料金引き上げの対象となる出願審査請求料の新旧料金

料金金額新料金の適用時期※
通常の特許出願に係る出願審査請求料138,000円+請求項数×4,000円(旧料金:118,000円+請求項数×4,000円)2019年4月1日以降の出願から
特許庁が国際調査報告を作成した国際特許出願に係る出願審査請求料83,000円+請求項数×2,400円(旧料金:71,000円+請求項数×2,400円)2019年4月1日以降の国際出願日を有する出願から
特許庁以外が国際調査報告を作成した国際特許出願に係る出願審査請求料124,000円+請求項数×3,600円(旧料金:106,000円+請求項数×3,600円)2019年4月1日以降の国際出願日を有する出願から
特定登録調査機関が交付した調査報告書を提示した特許出願に係る出願審査請求料110,000円+請求項数×3,200円(旧料金:94,000円+請求項数×3,200円)2019年4月1日以降の出願から

分割・変更出願については、現実の出願日に基づいて新旧料金の適用が判断されます。出願日を遡及して料金が適用されることはありません。

●「ティラミスヒーロー」の類似ロゴを商標登録

 シンガポールの著名な菓子「ティラミスヒーロー」の名称や酷似したブランドロゴを日本の菓子メーカー「HERO'S」側が商標登録したことで、シンガポールの「ティラミスヒーロー」が日本でロゴを使えなくなり、改名せざるを得なくなったと報道されています。
 「ティラミスヒーロー」は、猫のキャラクター「アントニオ」がデザインされた瓶入りのティラミス。「THE TIRAMISU HERO」の文字の上で、仰向けに寝転ぶ「アントニオ」がブランドロゴとなっています。日本では、百貨店やネットで販売していますが、昨年末に「オリジナルブランドロゴがコピーされ、只今日本で使用できなくなった」とシンガポールの「ティラミスヒーロー」がトラブルを公表しました。
 これに対し、「HERO'S」側は、ホームページ上で謝罪したうえで、ロゴの使用権(登録番号第6073226号)を譲渡する意向を表明しました。
 商標登録は、「HERO'S」の社長が経営する別のパンケーキ会社「gram」の名前で2018年に行われていました。「ティラミスヒーロー」は、日本での商標登録を行っていませんでした。ただ、登録第6073226号には昨年10月に異議申立が請求されており、登録が取り消される可能性があります。

<商標登録第6073226号>(商標公報より引用)

●特許権侵害で査察制度を創設(特許庁)

 特許庁は、特許権侵害を立証しやすくするため、他社の特許を侵害したと疑われる企業に対し、専門家が立ち入り調査を行うことができる査察制度を導入する方針です。今国会に新制度の創設を盛り込んだ特許法改正案を提出する予定。
 新制度では、裁判所が選任した中立的な専門家が工場やオフィス等への立ち入り検査を行い、被疑侵害者側にある証拠を押さえることが可能となります。実際に製造工程や動作過程を確認しなければ証拠の収集が困難なケースにおいて、技術専門家が被疑侵害者の敷地・建物に立ち入り、実験や計測などを通じて証拠を収集します。
 特許権侵害訴訟では、現在でも文書の提出や検証物の提示を命令することはできますが、権利者が侵害を立証するための証拠収集は困難なケースが多いことから、相手方当事者の工場等において必要な証拠提示を強制するための仕組みが不可欠であると判断しました。
 一方、改正案では、制度の乱用を防ぐため、査察は「証拠品が十分に集まらない」などの条件を満たした場合に限るとしています。

●「世界の革新的企業」、日本企業が最多受賞

 米調査会社クラリベイト・アナリティクスは、世界で最も革新的な企業・機関を選出する「Top100グローバル・イノベーター2017」を発表しました。日本はトップ100に39社が選ばれ、2017年度に続いて国・地域別で最多受賞国となりました。
 日本の受賞企業をみると、日本電気、キヤノン、富士通、日東電工、日本電信電話、日立製作所、オリンパス、本田技研工業、パナソニック、セイコーエプソン、信越化学工業、ソニー、東芝、トヨタ自動車の14社が8年連続で選出されました。
 業界分野別をみると、ハードウェア・電子部品製造業界からの選出が最多となり、35の企業・機関が選ばれました。航空宇宙工業・防衛分野の企業・機関は3社から6社へと倍増しました。化学工業・化粧品、製薬、石油・ガス・エネルギー業界からの選出企業・機関数はやや減少しました。
 調査は同社が独自に保有する世界最大規模の特許関連の過去5年間のデータを基に「特許数」「成功率」「グローバル性」「引用における特許の影響力」の4項目を選定基準に選出しました。


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  ■イベント・セミナー情報■

2月21日 TKP新橋カンファレンスセンター
平成30年度 海外知的財産活用講座
https://faq.inpit.go.jp/gippd/seminar/
(工業所有権情報・研修館)

2月22日 東京都中小企業振興公社
知財戦略セミナー「ビジネスに勝つための知財経営戦略」
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/2018/310222keieisenryaku.html
(東京都知的財産総合センター)

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最終更新日 '20/01/03