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◇◆◇  鈴木正次特許事務所 メールマガジン  ◇◆◇
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2021年1月1日号


  本号のコンテンツ


  ☆知財講座☆

 ■弁理士が教える特許実務Q&A■

(37)特許出願の早期公開


  ☆ニューストピックス☆

 ■世界の特許出願件数が10年ぶり減少(WIPO)
 ■次世代通信規格「6G」、日本主導へ向け新組織(総務省)
 ■改正種苗法が成立 高級品種の海外への流出防止



 新年明けましておめでとうございます。旧年中は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。
 本年も知財サービスの向上に所員一同、精励する所存でございますので、変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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■弁理士が教える特許実務Q&A■

(37)特許出願の早期公開

【質問】
 当社が販売開始した製品について特許出願を行っているという事実を特許庁から付与されている特許出願番号で表示するだけでなく、特許出願している発明内容を紹介することで世の中に示したいのですが、特許出願日から18ヶ月が経過するまで特許出願の内容は特許庁から公表されないそうです。特許庁から公表される時期を早めることはできませんか?

【回答】
 特許出願が行われた事実及びその内容は、特許出願後18ヶ月が経過して特許出願公開が行われるまで秘密にされます。これに対して、特許出願が行われている事実や、特許出願の内容をいち早く特許庁から公表してもらいたい、となることが時にはあります。これを可能にするのが「申請による早期公開制度」(特許法第64条の2)です。

<特許出願の早期公開が求められる事情>

 特許出願の内容は、特許出願人、発明者に関する情報と共に、特許出願後18ヶ月が経過した時点で、特許庁から公表されます(特許法第64条)。この公表は、紙に印刷された特許出願公開公報が特許庁から発行されることで行われると共に、特許庁のウェブサイトJ-Plat Patに電子情報で掲載されて行われます。
・特許庁のウェブサイトJ-Plat Pat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
 誰にも先駆けて特許出願を行った発明内容が、特許出願公開が行われるまでは秘密にされるわけですから、特許出願人にとってはこの期間が、法定通りに、特許出願後18ヶ月であることが望ましいことであると思われます。
 しかし、特許出願公開が行われますと、特許出願に係る発明内容を実施していると思われる競合他社に対して、補償金請求権行使のための警告書を送ることが可能になります(特許法第65条)。
 例えば、次のような文面の警告書を送付することが可能になります。
 「御社は近頃〇〇の製造・販売を開始されましたが、これは当社が既に特許出願を行い、その出願内容が特許庁から特許出願公開公報(特開〇〇〇〇−〇〇〇〇号 別便の書留郵便で特許出願公開公報をお届けします)で公表されている発明内容を実施する行為に相当するものであると認められます。当社の特許出願については特許庁での審査が完了していませんが、特許庁での審査で特許成立が認められ、御社による〇〇の製造・販売が特許権侵害行為に相当することになる場合には、特許権成立後の御社の行為に対して差止請求(特許法第100条)等の権利を行使するとともに、この警告書を御社にお届けした日から特許権成立までの御社による〇〇の製造・販売行為に対して実施料相当額の補償金(特許法第65条)を請求させていただくことがありますので、お知らせしておきます。」
 自社が特許出願を行った後、他社が開始した行為が、将来、自社特許出願に成立する特許権に抵触することになるのではないか、と思われるような場合、既に特許出願公開が行われているならば、上述したような内容の警告書を送付することが可能です。しかし、特許出願公開が行われていない状態では補償金請求権を成立させるための警告書を送付できません。
 このような事情を考慮して認められるようになったのが特許出願人の請求による特許出願の早期公開です(特許法第64条の2)。これによって、特許出願日から18ヶ月が経過する前であっても特許出願の内容を特許庁から出願公開してもらうことが可能です。
 早期の出願公開を行ってもらうための「出願公開の請求」(特許法第64条の2)について注意すべき事項としては次のようなことがあります。

<出願公開請求できる者は特許出願人のみ>
 早期の出願公開は特許出願人の意思により行われるもので特許出願人のみが早期の出願公開を請求できます。
 特許出願の内容は、本来であれば、特許出願日から18ヶ月経過するまで特許庁から出願公開されないところ、早期公開では18ヶ月が経過する前に特許出願の内容が社会に公表されることになります。「特許出願した新規な発明の内容は特許出願日から18ヶ月が経過するまで秘密に保たれていて、特許庁から公表されない」と考えている者にとって、18ヶ月が経過する前に公表されるのは不利益なことになり得ます。
 このため、複数人が共同で特許出願を行っている場合には、共同出願人全員で出願公開の請求を行う必要があるとされています(特許法第14条)。
 また、弁理士のような代理人によって出願公開の請求を行う場合には、そのための特別の授権の証明(特許法第9条、特許法施行規則第4条の3)が必要になります。これが満たされていない場合には、特別の授権が証明されるまで出願公開されません。

<出願公開請求は取り下げできない>
 出願公開が特許出願人から請求された後に「請求の取り下げ」を認めることにすると、いったん請求があって特許出願公開公報発行の準備を進めた事務処理作業が無駄になり、更に、当該特許出願の出願日から18ヶ月経過時の本来の出願公開の時期に再度同様の事務処理作業を行う必要が生じて特許庁内における業務の無駄が大きくなります。このような事情を考慮して、出願公開をいったん請求した後は、その取り下げを行うことはできないとされています(特許法第64条の2第2項)。

<出願公開の請求後に出願放棄されても出願公開される>
 出願日から18ヶ月が経過した時点で行われる通常の特許出願公開の場合、既に取下げされている特許出願や、放棄されている特許出願、特許庁での審査によって既に拒絶査定が確定した特許出願については特許出願公開が行われません。
 一方、特許出願人の請求によって特許出願が早期公開される場合には、出願公開請求書の提出後に特許出願が放棄、取り下げされたり、特許出願についての拒絶査定が確定しても、早期公開請求に従って、出願公開が行われます(方式便覧54.51)。
・方式便覧54.51
https://www.jpo.go.jp/system/laws/koho/general/document/koho_faq/54_51.pdf

<出願公開請求後に特許出願公開公報が発行される時期>
 具体的な案件によって異なるとされていますが、(1)特許出願と同時に出願公開の請求が行われたならばその後5ヶ月程度、(2)特許庁が特許出願を受け付けて特許庁内での方式審査を終え、国際特許分類の付与がなされている段階で出願公開の請求があったならばその後2ヶ月〜3ヶ月程度で特許出願公開公報が発行されるのが通常の取り扱いであるとされています。なお、国際特許分類を付与する作業によって多少前後する場合があるとされています(公報に関して:よくあるご質問 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp))。
・公報に関して:よくあるご質問 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/koho/general/koho_faq.html#anchor2-3

<早期公開の必要性については十分に検討を行う>
 補償金請求権行使の警告書を送付できるようにするという目的で「出願公開の請求」を行うことが上述したように可能ですが、早期に特許出願公開されることが望ましいのか、あるいは、早期審査を受けて、早期に特許成立させ、通常の出願日から18ヶ月経過後の特許出願公開公報発行よりも、特許公報が先に発行されるようにした方がよいのか、それぞれ、特許出願人にとって利害得失があります。
 早期公開が必要であるかどうかは専門家である弁理士によく相談することをお勧めします。


<次号の予定>
 特許出願の際には、特許出願人、発明者に関する情報を願書(特許願)に記載して提出します。この願書に記載した発明者を変更、追加、等することが可能であるのか、次回は、特許出願後に行う発明者の補正についてのご質問に回答します。

以上

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■ニューストピックス■

●世界の特許出願件数が10年ぶり減少(WIPO)

 世界知的所有権機関(WIPO)は、年次報告書「世界知的財産指標(World Intellectual Property Indicators)2020」を発表しました。
 それによると、2019年の世界の特許出願件数は、18年に比べ3%減の約322万件となりました。世界の特許出願件数が減少するのは、金融危機下の2009年以来10年ぶりです。
 中国での特許出願件数が前年比9.2%減の140万件と減少したことが主な要因とみられます。ただ、中国の特許出願件数は米国の2倍以上に達し、2019年の全世界の特許出願のうち43.4%を中国が占めています。
 中国以外の上位国・地域の特許出願件数をみると、米国が4.1%増の62万件、日本が1.8%減の31万件、韓国が4.3%増の22万件、欧州(欧州特許庁、EPO)が4.1%増の18万件。
 商標の出願件数は、区分数ベースで前年比5.9%増の1,515万件。商標の出願件数は2009年以降10年連続で増加していますが、2019年は前年(18.9%増)や2017年(30.2%増)に比べて伸び率が鈍化しています。上位国の件数は、中国が6.4%増の783万件、米国が5.1%増の67万件、日本が6.7%増の55万件。


●次世代通信規格「6G」、日本主導へ向け新組織(総務省)

 総務省は、次世代通信システム「6G」について、特許権の取得や国際標準化を主導するため、産官学の連携組織「Beyond 5G推進コンソーシアム」を立ち上げました。
 日本は第5世代(5G)移動通信システムの商用化で世界に出遅れたこともあり、「6G」では産官学一体で中核技術の開発などで先行し、巻き返しを図る方針です。
 5Gの次の世代の通信規格は、「6G」や「ビヨンド5G」などと呼ばれています。6Gになると、通信速度や同時に接続できる機器数が約10倍、情報伝達の遅れは10分の1になると想定されています。高速・大容量・低遅延・多数端末との接続を実現する6Gは、生活や産業のデジタル化を推進し、社会問題解決につなげるインフラとして期待されています。
 6Gの実用化は2030年頃が見込まれていますが、既に米中をはじめ、世界各国の開発競争は激しさを増しています。このため、総務省は、産官学一体の「オールジャパン体制」を整備し、技術開発を先行して、特許を利用した技術の国際標準化をリードしたい考えです。
 コンソーシアムは、Beyond 5Gの企画立案などを行う「企画・戦略委員会」と国際競争などを担当する「国際委員会」で運営されます。グローバルな研究開発や拠点整備、知的財産権の獲得を迅速かつ戦略的に取り組むとしています。
 また、政府は、「6G」の研究開発を促進するため、2020年度第3次補正予算案で複数年度にわたって使える300億円規模の基金を新設しました。事務局の国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)を通じて民間企業や大学などに研究開発を委託します。
 民間企業などが技術開発に使う最先端の試験設備を備えた共用施設の整備にも約200億円を投じる方針です。


●改正種苗法が成立 高級品種の海外への流出防止

 国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を海外へ不正に持ち出すことを禁じる改正種苗法がこのほど成立しました。一部を除き2021年4月1日に施行されます。
 改正種苗法は、新品種の開発者が農林水産省に出願、登録する際に栽培地域や輸出先を指定できることが柱。許諾なしに指定された地域以外で栽培したり、無断で海外に持ち出したりした場合は、生産・販売の差し止め対象となります。
 また、第三者に種苗が渡るリスクを減らすため、農家が収穫物から種子を採取して翌シーズンの生産に使う「自家増殖」をする際にも、開発者の許諾が必要になります。
 今回の種苗法の改正の背景には、国内で開発されたブランドの果物などが海外に無断で持ち出される事例が後を絶たないためです。
 例えば、ぶどうの高級品種「シャインマスカット」は、農林水産省によると、苗木が海外に無断で持ち出され、中国では、「陽光バラ」などの名称で栽培され、タイなどに輸出されているということです。
 今の種苗法には、海外への持ち出しを規制する条項がありませんでしたが、今回の改正によって、種や苗の流通が厳しく管理され、開発者の権利や利益が守られることになります。


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発行元 : 鈴木正次特許事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿6‐8‐5
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TEL 03-3353-3407 FAX 03-3359-8340
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最終更新日 '21/07/14