新春展望
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 皆様あけましておめでとうございます。長い間低迷していた日本経済も、昨年当初からプラス成長に転じ、一時は順調な経済成長(年率3%)も達成できるとされる位となりましたが、9月期以降若干の低下が見られ、色々の見方が発表されました。然し乍ら、マイナス成長と見るのは少数派に属するのではないでしょうか。
 我が国の来年度の予算案は、82兆円余とされておりますが、34兆円は国債依存型であって、健全財政には程遠くなっております。今年度経済について、政府見通しでは、1.6%の成長が見込まれており、全然駄目ということではないと認められ、努力によって、回復を本調子とし、経済成長の結果来年からは、国債発行高を著しく圧縮できるよう期待される希望があります。
 我が国の本年度の特許出願件数は、昨年度の減少傾向(特許出願40万件程度、推定)に歯止めをかけることになろうと思います。
 特許庁は、平成16年度予算額1157億円を上回る1202億円として、知的財産政策を強力に推進すべく、次の諸施策をかかげております(特許庁予算についての説明より)。

 世界最高水準の迅速・的確な特許審査の実現。
 その目標として、審査順番待ち期間のピークを迎える2008年において、20ヶ月台に留めると共に、2013年には世界最高水準である待ち期間11ヶ月達成の為の施策を総合的に実施すべく企画しております。
1.任期付審査官の大幅増員(毎年100人)。
 今後80万件に及ぶとされる審査順番待ち案件を一気阿成に処理するため、平成16年度から平成20年度までの5年間に毎年100人を増員し、合計500人を目途に任期付審査官を増員すること。
2.従来技術調査の外注の質的・量的拡大(20万件予定)。
 特許審査迅速化法に基づき、登録調査機関への民間企業参入の環境整備を行うと共に、審査効率の高い「対話型」外注の充実(13.0万件→15.5万件)を含め、従来技術調査の外注(アウトソーシング)を強化すること。
3.情報システムの最適化。
 特許審査迅速化等に向けた制度・業務改革に必要なシステム開発を行うと共に、電子政府構築計画の一環として、特許庁のシステムの最適化を計画的に実施すること。
4.特許審査迅速化のための基盤強化。
 工業所有権情報・研修館の事業を拡充し、知的財産関連専門人材の育成や特許情報等の迅速な提供を図ること。
5.知的財産保護の国際調和強力の推進。
 知的財産制度の国際調和を推進すると共に、審査結果の交換等を行うことにより、国際的な審査の効率化・迅速化に資する。

II 地域・中小企業の知的財産活用に対する支援。
 知的財産面から地域再生に資するとともに、中小ベンチャー企業の支援を行うため、総合的な施策を実施。
1.地域における戦略的な知財施策の展開。
 地方経済産業局毎に「地域知財戦略本部」を新たに設置することにより、関係する官民の組織・専門家等と協力し、独自の「地域知財戦略推進計画」を策定し、関連施策の活用を含め、施策を重点的に展開する。
2.出願・審査・審判段階の支援。
 中小企業等に対する出願アドバイザーの全国展開を行いつつ、従来技術調査に対する支援を強化するとともに、審査官の出張による地方での審査・審判を拡充、また早期審査・早期審理制度及び料金減免制度の中小企業における活用を拡大。
3.相談体制の整備、説明会・講習会の開催。
 地方経済産業局において知財に関する相談事業を行うとともに、初心者・実務者を対象とした制度説明会及び中小・ベンチャー企業に対するセミナー等を実施。大企業・大学等と導入希望者との直接的な出会いの場を提供する。

III 日本ブランドの確立と模倣品対策の強化。
 デザインやブランドの保護の活用により、我が国産業の国際競争力の維持強化に資する為、意匠・商標に係る施策の拡充を行う。
1.意匠・商標の迅速かつ的確な権利付与。
 意匠審査においてサーチ機能の向上を図るとともに、商標においても審査前サーチレポートの外注の拡充、不明確な出願内容の明確化のための調査を実施するための施策。
(1)意匠審査にかかる効率的なサーチ環境の実現。
(2)商標審査前サーチレポートの作成。
(3)商標審査における不明確商品・役務調査レポートの作成。
2.アジアにおける模倣品対策の強化。
 侵害発生国政府への要請、日本企業の権利行使等に対する支援を行うとともに、各国の知財関連行政庁・取締機関(裁判所・税関・警察)等における人材育成に協力する。また模倣品に関する消費者等への普及啓発活動を拡充する。
(1)侵害発生国への要請や日本企業の支援。
(2)アジアにおける知財侵害対策関係者の人材育成支援。
(3)消費者等への普及啓発活動。
3.意匠・商標制度の見直し検討。
 デザイン及びブランドの保護強化や、模倣品取締の適切な実施等の観点から、審議会を活用しつつ、意匠制度及び商標制度の見直しについて所要の検討を行う。
 
IV 知的財産サイクル活用化のための環境整備。
 特許情報等の迅速な提供、人材育成、企業経営者の意識改革等により、研究開発効率の向上を含めた創造・保護・活用からなる知的創造サイクル活用化のための環境整備を行う。
1.工業所有権情報・研修館事業の推進。
 知的財産関連専門人材の育成や特許電子図書館の機能向上等を通じて特許等審査迅速化のための基盤強化を図るとともに、企業や大学等が保有する開放特許の流通、有効活用を図る。
(1)審査官育成研修及び登録調査機関の調査業務実施者育成研修。
(2)産業財産権情報提供事業(特許電子図書館)。
(3)都道府県・TLOに対する特許流通アドバイザーの派遣。
(4)開放特許情報(約55,000件)の提供。
2.産業界の意識改革。
 企業経営者等の意識改革を通じて、研究成果の知的財産としての戦略的な保護・活用を促すとともに、出願・審査請求構造の改革を推進。
 我が国は去る2003年7月に決定された「知的財産推進計画」が、2004年に根付き、本年は本格的実行段階に入ったものと思われます。これを特許出願に限って考えても、各地方公共団体、及び大学等の知識集団と、産業界との結び付きが本格化し、共同研究、共同出願が飛躍的に増加するものと予測され、この面から技術革新が成り立つものと期待されます。
 然して、その範囲は、国内のみに止まらず、海外との協力関係も一層推進されるものと期待され、これに伴って国際出願も飛躍的に増加するものと推定されます。
 次に、知的財産の資金化、証券化が検討され実行されるに伴い、知的財産(特に工業所有権)の評価が益々重要視されることになります。
 知的財産の評価には、技術的評価と経済的評価と、その他市場流通まで含めた総合評価が最も適切ですが、総合評価には広範な知識経験を必要とし、その上技術革新、経済界の動向など、不測の事態も予測しなければならないことになります。従って、前記各評価の何れをとっても至難の業でありますが、適確な評価を行うことの必要性は益々大きくなります。
 前記のように、本年度の展望及び将来性並びに諸問題を列挙しましたが、特許庁の予算に伴う企画はもとより、何れも実現する可能性が高いことを銘記し、万全の対処を行えば、明るい将来が約束されるものと思います。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/1/14
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