新春展望
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 皆様あけましておめでとうございます。

   穏やかな景気拡大が期待される2007年
 昨年11月、大田経済財政担当大臣は2002年に始まった景気拡大局面がこれまでの戦後最長だった「いざなぎ景気」(1965年−1970の4年9カ月)を超え、4年10カ月になったとする月例経済報告を発表しました。個人消費の伸び悩みが見られるものの、昨年12月発表の日銀短観によれば、景況感は3期連続改善、設備投資は好調さを維持し、大企業製造業における人員不足感が強まり、中小企業や中堅企業でも人員不足傾向が続くなど、雇用の拡大傾向も見受けられます。このような景気拡大傾向は本年も引き続き穏やかに進むものと期待されます。

   世界の経済発展と特許制度
 昨年10月、世界知的所有権機関(WIPO)は世界各国の特許庁からの報告に基づいて統計報告書「WIPO特許報告」を発表しました。
 これによりますと、2004年の世界の有効特許は約540万件(@米国(約163万3千件)、A日本(約110万5千件)、B英国(約47万4千件)、Cドイツ(約41万2千件)、D韓国(約33万1千件)でした。
 2004年の新規の特許登録件数は、@米国(約16万4千件、国外からの出願が49%)、A日本(約12万4千件、同9%)、B欧州特許庁(約5万9千件、域外からの出願が47%)、C中国(約4万9千件、国外からの出願が63%)、D韓国(約4万9千件、同28%)でした。
 2004年の出願件数は、約160万件でした。出願を受理した特許庁別の件数は、@日本(約42万3千件)、A米国(約35万7千件)、B韓国(約14万件)、C中国(約13万件)、D欧州特許庁(約12万4千件)で、これら上位の5特許庁で世界全体の特許出願の約75%が占められています。
 日本国特許庁発行の「特許行政年次報告書2006年版」(平成18年9月15日)によれば、2005年に中国特許庁、韓国特許庁が受理した出願件数はそれぞれ17.3万件(前年比33%増)、15.73万件(前年比12%増)でした。
 中国、韓国における近年の特許出願件数の急増にみられるように、我が国をはじめ、中国、韓国における活発な特許出願、特許権取得の活動が東アジア地域での景気拡大局面に関連していることがうかがわれます。

   わが国における特許出願などの動向
 我が国における特許出願件数は1998年以降、毎年40万件を超え、2005年も427078件と前年比1%増でした。2006年は出願件数の減少傾向がうかがわれますが、やはり40万件程度の出願件数になると思われます。
 2006年における出願件数の減少には、審査請求件数の急増(2003年以前は毎年25万件前後、2004年33万件、2005年40万件)に伴う審査の順番待ち期間の長期化(2001年には審査請求後平均22カ月が、2005年は平均26カ月)や、2004年4月1日以降の出願についての審査請求料の大幅な値上げなどが少なからず影響しているものと思われます。
 なお、経済のグローバル化に伴い、特許協力条約に基づく国際出願は2.4万件と2004年に比較して22%増加し、この増加傾向は2006年も続くものと思われます。
 日本からの海外への特許出願では、米国への特許出願が6.5万件(2004年)と依然として最多であることに変わりはありませんが、中国への特許出願が急増し(2004年は2.6万件と2002年に比較して65%増加)、2003年以降は、欧州よりも中国への特許出願件数の方が多くなっています。
 実用新案登録出願は、権利存続期間を出願日から10年に延長する等々の改正法が2005年4月施行されたこともあって11386件と1999年以来6年ぶりに1万件を越え、前年に比較して43%急増しました。2006年も1万件程度の出願が見込まれています。
 意匠登録出願は39,254件と2004年を若干下回りましたが、ここ数年毎年4万件程度で安定しています。審査の順番待ち期間は出願日から7カ月程度にまで短縮されました。
 商標登録出願は125,807件(2004年比3%増)と3年連続で増加し(1出願における平均指定区分数は1.6区分)、審査の順番待ち期間は出願日から6カ月台で推移しています。

   強化される知的財産保護政策
 昨年7月、財政・経済一体改革会議(総理、関係閣僚と与党幹部で構成される政府与党協議会)において「経済成長戦略大綱」が決定され、知的財産保護強化を目指して特許審査の迅速化・模倣品対策等に取り組むことが明らかにされました。この「経済成長戦略大綱」は経済財政運営の基本方針2006にも反映されています。
 経済産業省はこの「経済成長戦略大綱」などを踏まえ、新たな特許行政の基本方針として「イノベーション促進のための特許審査改革加速プラン」(特許審査迅速化・効率化推進本部 本部長:甘利経済産業大臣)を昨年10月公表しました。
 特許審査改革加速プランでは、
(1)グローバルな権利取得の促進と知的財産保護の強化、
(2)特許庁による審査迅速化・効率化に向けた更なる取組、
(3)企業における戦略的な知財管理の促進、
(4)地域・中小企業の知財活用に対する支援の強化
の分野で合計20項目の取り組みが取り上げられました。
 政府の知的財産戦略本部(本部長:安倍晋三首相)を先頭に、本年は、より一層強力な知的財保護強化政策が進められるものと思われます。

   知的財産保護の動きを強める2007年
 「特許行政年次報告書2006年版」によれば、企業等における知的財産活動費(出願系費用、職務発明制度などによる補償費、知的財産業務を担当する者の人件費などを含む)は2003年度7800億円から、2004年度9200億円へと拡大しています。これは、外国への出願件数の増加や、審査請求件数の増加に伴なう知的財産担当者の増加、出願系の費用の増加に伴なうものとされています。
 また、知的財産活動費が増加している企業においては、現存している特許発明を利用している件数(自社実施、他社への実施許諾)と、利用していない件数(防衛出願であって実施していないものを含む)との割合がほぼ同程度(約48%)になっています。1995年度の時点では大企業における保有特許の67%が未利用であったとされており、近年、特許出願や、特許権の有効活用が積極的、戦略的になされていることがうかがわれます。
 一方、2005年の内国出願人に占める中小企業の比率は、出願件数では約11%(2004年約12%)、出願人の数では約43%(2004年約45%)と伸び悩んでいる傾向が見られます。各企業の努力だけでなく、特許行政の基本方針たる「特許審査改革加速プラン」でも取り上げられている「地域・中小企業の知財活用に対する支援の強化」などによって、中小企業における知的財産保護を一層強化する必要があると思われます。
 こうして、創意・工夫に溢れた新しい技術・知的な財産を創出し、保護強化する政策・施策、行動をより一層強めることにより、2007年は、戦後最長となった景気拡大局面を更に持続、拡大させる礎を築く年になるものと期待されます。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/1/22
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