新春展望
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 皆様あけましておめでとうございます。

   2008年の日本経済
 政府は、昨年末、2008年度の政府経済見通しについて、物価変動の影響を除いた実質経済成長率:2.0%程度、名目成長率:2.1%程度とする政府経済見通しを閣議了解しました。
 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の問題や、原油の急激な値上がりによる不透明感もありますが、韓国・ソウル以来20年ぶり、アジアで三回目となる夏季オリンピックが開催される中国をはじめとしたアジア諸国、欧州向けの輸出が好調さを維持しており、また、2007年度の設備投資計画(修正計画、1695社)(日本経済新聞社調査)が全産業において、前年度実績を11.0%上回り、4年連続の二桁増になるなど、日本経済は堅調さを維持しております。
 昨年、いわゆる「格差」の拡大が指摘されるようになりましたが、福田首相指示の下、昨年末には、政府の経済財政諮問会議が新経済成長戦略の基本骨格をまとめ、「格差を克服するためにも経済成長が大事」(福田首相)、とする方向で、いわゆる「格差」問題にも対策が採られるものと期待されます。

   わが国における特許出願などの動向
 我が国における特許出願件数は、2006年に前年より4.3%減少して408,674件となり、長期にわたって維持してきた世界一の出願件数の座を米国(2006年の出願件数:416,000件程度)に譲りました。
 2006年における若干の出願件数の減少には、特許出願後1年6月経過した時点で行われる出願公開の内容がインターネットを介して世界中に公表されることを考慮した世界的な技術流出防止、平成16年4月1日以降の出願に適用されている高額の審査請求料金、平成13年10月1日以降の出願についての審査請求期間の変更(従来の7年間から3年間への短縮)等々の事情を考慮した出願戦略の再構築があったものと思われます。
 一方、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願は、経済のグローバル化に伴い、2006年も前年比9%増の26,422件となり、2003年にドイツを抜いて以来、4年連続して米国に次ぐ世界第2位の国際出願件数になっております。
 毎年増加し続ける国際出願の件数と、2006年に若干減少したとはいえ、1998年以来9年連続して毎年40万件を越えている日本の特許出願件数は、依然として我が国産業の競争力を支える柱になっております。
 審査請求期間の変更に伴う一時的な審査請求件数の増加により、審査待ち件数が2006年で838,000件にまで積みあがり、審査順番待ち期間も2006年には26カ月となりました。しかし、特許庁が進めてきた種々の施策と特許出願人の協力とにより、特許庁が審査着手した特許出願の件数は2002年の年間215,288件から、2006年の年間292,756件へと増加しています。前述した一時的な審査請求件数増加は本年で解消されるものと思われることから、特許庁が目標にしている「2013年の審査順番待ち期間11カ月」に向けて、今後、特許出願の審査順番待ち期間の短縮が進むものと期待されます。
 実用新案登録出願は、権利存続期間を出願日から10年に延長する等々の改正法が施行された2005年に前年比43%増の11,386件と1999年以来6年ぶりに一万件を越えましたが、2006年は10,965件とまた減少傾向に転じました。 意匠登録出願は2003年に8年ぶりに4万件を越えた後、毎年減少し続け、2006年は前年比6%減の36,724件となりましたが、意匠登録出願全体に占める部分意匠の出願が約24%にまで拡大し、戦略的な意匠権取得が試みられていることがうかがわれます。意匠権の権利存続期間を登録日から20年に延長し、関連意匠の出願時期に関する条件を緩和した昨年4月からの改正意匠法施行により、意匠登録出願の減少傾向は止まり、増加に転じるのではないかと思われます。
 商標登録出願は2005年、2006年と連続して135,000件台(一出願における平均指定区分数は1.58から1.60と若干増加)で安定しております。昨年4月から小売サービスを指定した商標の登録が認められるようになったことから出願件数の増加が予想されています。

   世界最先端の知財立国を目指す日本
 政府の知的財産戦略本部(本部長・福田首相)は昨年12月13日、第18回本部会合を開催し、本年の「知的財産推進計画2008」に盛り込む報告書をまとめました。就任後、初めて出席した福田首相は「世界最先端の知財立国を目指して、未開の技術市場の開拓に果敢に挑戦することが重要」との意欲を示しました。
 この報告書では、昨年5月に策定された「知的財産推進計画2007」を踏まえて、科学技術上の重点4分野「ライフサイエンス」「情報通信」「環境」「ナノテクノロジー・材料」について、競争力強化の観点から、知的財産上の特性と現状、対応策が整理されました。
 そして、(1)実験用動物の特許情報開示など研究開発の障害を除去することをはじめとした技術フロンティアの拡大、(2)遺伝子組み換え生物の特許権存続期間の一部延長、国産のインターネット検索エンジン開発に向けた著作権法の改正などによる制度フロンティアの拡大、(3)優れた技術の共通基盤技術化、中小企業による知的財産の積極活用と国際展開の促進などによる市場フロンティアの拡大が提言されました。
 本年は「未開の技術市場の開拓に果敢に挑戦する」との姿勢での知的財産保護強化政策が進められる年になるものと期待されます。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/2/6
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