新春展望
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 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年は我が国の本庶佑氏(京都大学特別教授)が米国テキサス大学のジェームズ・アリソン教授と共に2018年ノーベル医学生理学賞を受賞されました。21世紀に入って自然科学分野での日本のノーベル賞受賞は18人(2人の米国籍取得者を含む)となり、自然科学分野における基礎研究の重要さが再認識されました。

   IoT技術が変える社会
 世界各国の政治家や経営者が集まる年次総会「ダボス会議」の主催団体である世界経済フォーラム(WEF)が昨年11月に発表した2018年版「世界競争力報告」で日本の総合順位は前年の9位から5位に上昇しました。
 WEFは人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながるIoT(インターネットオブスイングス)などの「第4次産業革命」が各国の競争力を大きく左右していると分析しました。今日、AIやIoTは生産、流通、販売、消費といった社会生活のあらゆる場面に影響を与えようとしています。
 昨年末、伊勢神宮内宮前の多くの飲食店が立ち並ぶ「おはらい町」で大正初期から百年余り続く飲食店「ゑびや大食堂」が新聞、等で紹介されました。AIで来客数を予測するシステムを開発し、9割を超える的中精度で来客数を予測、食材ロスを七割削減し、勤務シフトを無駄なく組めるようになり、生産性向上、働き方改革をAIで実現したと紹介されました。
 経済産業省・中小企業庁は、中小企業の生産性向上を加速させる目的で、本年度予算概算要求に「ものづくり補助金」として100億円を盛り込んでいます。これは、昨年度の第二次補正予算で中小企業の設備投資を促す「ものづくり補助金」を中心に「IT導入補助金」、「持続化補助金」の3本柱を統合して1000億円規模の「生産性特別補助金」を創設することに連続して中小企業に切れ目のない支援を実施しようとするものです。
 新しい技術の導入を生産性の向上や新しい商品、市場の開拓、より良い働き方の実現に結び付けることが求められています。

   重要性を増す知的財産
 昨年来、世界経済に大きな影響を与えているのは、米国と中国との間における貿易摩擦です。特許などの知的財産の分野や、科学技術における中国の競争力が急速に向上していることが激化する米中貿易摩擦の原因にあると思われます。
 2017年に日本国特許庁が受け付けた特許出願の数は32万件、米国特許庁が受け付けた特許出願の数は日本の2倍近い61万件、中国特許庁が受け付けた特許出願の数は米国の2倍をはるかに越える138万件でした。中国における特許出願件数の急速な増大、近年の研究開発費の増加、各種先端技術分野での論文発表数の増加、等からすれば、技術レベルにおいて、中国が米国と肩を並べ、更には抜き去ってしまう可能性をも米国は認識しているのかもしれません。
 20世紀後半から21世紀初頭にかけて我が国における特許出願の数は世界一の水準を維持していました。今や特許出願の数では、中国はもちろん、米国にもかなり引き離されてしまいましたが、特許などの知的財産が米中貿易摩擦に表れているように大きな意味を持つ今日、我が国においても知的財産活動の一層の強化が必要と思われます。
 昨年の法律改正により、本年度から、中小企業に対して、特許出願審査請求料及び、1年次〜10年次の特許料を、一律、半減する措置が開始される予定です。
 「我が国の付加価値額の55%を占める中小企業(平成23年)の知財活動を重点的に支援することが産業の発達にとって不可欠になっている」(特許庁)との認識の下で施行される審査請求料、特許料(1年次〜10年次)の軽減措置を十分に活用し、新しい技術の創造、開発、活用を図り、日本社会全体の活性化、発展に結び付けることが期待されています。

   新たな時代の幕開け
 本年は来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックが大きく注目される年です。同時に、30年にわたった平成が新しい時代になります。
 昭和から平成になった30年前、まだ自動車電話の時代で、ポケベルが活躍していました。インターネットは名前すら知られておらず、コンピュータといえば、大きなブラウン管の画面表示部が机の上に鎮座しているデスクトップ型でした。この30年の間に急速に普及しながら今日では高度なナビゲーション機能を有するスマートフォンの登場に押され気味のカーナビゲーションはその当時まだ珍しいものでした。今日では自動運転すら実現可能に近づいていますが、電気自動車が話題に上ることはありませんでした。昭和の後半から普及し始めた駅の自動改札は、磁気カードを改札の投入口に直接投入する形式で、非接触式でのデータ交信、更には、非接触でのキャッシュレス決済など想像もつきませんでした。昭和から平成に変わった時、30年後の今日の日本社会を予想できた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
 携帯電話や電気自動車といえば、我が国では、1970年の大阪万博で一般加入電話と携帯型の無線電話機との間で初めて通話デモンストレーションが行われ、会場内輸送用の車両として電気自動車が導入されたのでした。
 2025年大阪万博開催が決定しましたが、今年から始まる新しい時代にはどのような技術が開発され、私たちの社会、生活にどのような変化がもたらされるでしょうか。
 新しい時代の扉を開けるこの一年に胸を躍らせて臨みたいと思います。
以上

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '19/11/05
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