改正特許法等の解説・2007

〜特許制度の見直し・意匠制度の見直し
    商標制度の見直し・模倣品対策の強化〜(1)

  目次
 
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  1.特許制度の見直し
 今回の法律改正においては、権利取得の容易化の観点から、出願を分割できる時期の追加、公平な審査の観点から、出願の補正を制限する改正などが行なわれた。なお、本誌に使用している図は、特にことわりがない限り、特許庁ホームページ「説明会テキスト」
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h18_houkaisei.htm)からの抜粋である。

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(1)分割制度の拡充
特許出願を分割できる時期的制限の緩和
 特許査定後又は拒絶査定後の一定期間(30日)にも出願の分割を可能にする改正が行なわれた(特許法第44条第1項)。
 改正前と同様に、明細書等について補正をすることができる期間内に分割出願を行なうことができるだけでなく、特許査定後30日以内及び、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本があった後30日以内ならば分割出願を行なえることになった(特許法第44条第1項)。
 なお、特許査定後においては、特許権の設定登録前でなければ分割出願することができない。
 また、拒絶査定不服審判を請求した後については、出願分割可能な時期は追加されておらず、改正前と同じく、明細書等について補正をすることができる期間内でなければ分割出願することができない。
 特許査定の謄本を受けた後、特許料を納付する期限及び、拒絶査定の謄本を受けた後、拒絶査定不服審判を請求できる期間は、請求により又は職権により延長されることがある(特許法第4条、第108条第3項)。今回の改正により追加された分割出願可能な期間(特許査定後30日以内及び拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本があった後30日以内)は、特許料を納付する期限及び、拒絶査定の謄本を受けた後、拒絶査定不服審判を請求できる期間が延長された場合には、連動して延長される(改正特許法第44条第5項、第6項)。
分割できる時期的制限の緩和

分割出願の補正の制限
 分割出願の審査において、下記の図に示されているように、もとの特許出願の審査において通知済みの拒絶の理由が解消されていない場合には、拒絶の理由がもとの特許出願において既に通知されていることから、分割出願の審査においては1回目の拒絶理由の通知に該当するときであっても、いわゆる、最後の拒絶理由が通知された場合と同様の補正の制限が課せられることになった(特許法第50条の2、第17条の2第5項)。

分割出願の補正の制限
 たとえば、上図の場合には、もとの特許出願の審査において進歩性が否定された発明Aが分割出願Iで特許請求されており、もとの特許出願の審査において通知済みの拒絶の理由が解消されていないので、分割出願Iの審査において一回目に通知される拒絶理由(進歩性欠如)に対応する際には、いわゆる最後の拒絶理由通知後に課せられる補正の制限が課せられる。
 最後の拒絶理由通知後に課せられる補正の制限:新規事項追加不可に加えて、特許請求の範囲の補正については、請求項の削除・特許請求の範囲の限定的減縮・誤記の訂正・明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的としたものに限る。
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(2)補正制度の見直し
 下図の説明のように、拒絶理由通知を受けた後に特許請求の範囲に記載された発明を技術的特徴の異なる別の発明に変更する補正を行なうことが禁止された(特許法第17条の2第4項、第49条1号)。
補正制度の見直し
 拒絶理由通知を受けた後、特許請求の範囲を補正するときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであることが要求される(改正後の特許法第17条の2第4項)。
 これを満たしていない補正が行なわれた場合には、拒絶理由(第49条1号)、最後の拒絶理由通知後の場合は補正却下(第53条)となる。
 上図の例の場合、「携帯電話用の高感度アンテナ」(発明A)と、「折りたたみ携帯電話用のヒンジ」(発明B)とは、一件の特許出願の中に含めることのできない(第37条の発明の単一性の要件を満たさない)2つの発明である。
 拒絶理由通知を受けた後、特許請求する発明が、拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断が示された発明Aとは発明の単一性を満たさない発明Bに補正されたので、このような補正が行なわれたことのみを理由として拒絶理由(第49条1号)が通知されることになる。
 なお、別発明に変更する補正が行なわれても、発明に実質的な瑕疵が生じるわけではなく、特許されたとしても直接第三者の利益を著しく害することがないので、無効理由にはされていない。
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(3)日本語翻訳文の提出期限の延長
 外国語書面出願の翻訳文提出期間を、下図に示すように、出願日から1年2月以内に延長することとされた。
 外国からパリ条約の優先権を主張してわが国に特許出願する場合、翻訳文の提出には、最大で1年2月の期間が与えられていたので、これを考慮して翻訳文作成負担の軽減を図り、また、外国語書面出願(先の特許出願)に基づく国内優先権を主張して外国語書面出願(後の特許出願)を行なう場合に、先の特許出願についてその出願日から2月以内に翻訳文を提出しておかねばならないという翻訳文作成の負担を軽減するもめである。
 なお1年2月の起算日となる出願日は、わが国に第1国出願した場合には、わが国の出願日、パリ条約の優先権を伴なってわが国に第2国出願した場合には、第1国出願日である。

施行時期
 改正法は、平成19年4月1日から施行され、施行日以降の出願に適用される。
 なお、特許出願を分割できる時期の制限の緩和に関しては「もとの出願」が施行日以前になされている場合には、施行日以後になされた分割出願に対して改正法は適用されない。
翻訳文の提出期限の延長
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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/6/14