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 商標「」は、公益に関する団体であって営利を目的としない「社団法人日本ホテル協会」を表示する著名な標章と類似するから、商標法4条1項6号に該当すると判断された事例
(平成9年審判第7467号、平成11年9月20日審決、審決公報第6号)
 
1.本件商標
 本願商標は、上に表示したとおりの構成よりなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)、薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和63年3月16日に商標登録出願されたものである。


2.原査定の拒絶理由
 原査定において、登録異議申立てがあった結果、標章「」(以下、「引用標章」という。)を引用し、「引用標章は、社団法人日本ホテル協会(東京都千代田区大手町2−1−1、新大手町ビル)の標章として著名であり、本願商標はこれと類似する図形を含むものであるから、商標法4条1項6号に該当する。」旨認定し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 まず、本願商標と引用標章との類否について判断するに、本願商標は上に表示したとおり、図形と文字とからなるものであって、外観上分離して看取されるばかりでなく、これら図形部分と文字部分とが常に一体として把握されるものとすべき格別の事情は認められないから、それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たしうるものである。
 そして、本願商標の図形部分と引用標章とは共に細い線の輪郭内にアルファベット「H」の図案化した図形を表してなり、一見して同一と思われるほど酷似した構成よりなるものである。
 してみれば、本願商標は、引用標章と外観において類似するものといわなければならない。
 つぎに、引用標章の所有者である「社団法人日本ホテル協会」は、「全国各種団体名鑑'95年版」(株式会社シバ発行)によれば、昭和16年3月に設立、会員数440、全国に支部13及び関連団体を有する公益法人であることが認められる。
 同協会の広告は、不特定多数の購読、利用に供される出版物、例えば、「JTB時刻表」(JTB日本交通公社出版事業局発行)、「JR時刻表」(弘済出版社発行)及び「文芸春秋」(文芸春秋社発行)等各種雑誌に掲載されており、その内容は引用標章を大きく表示すると共に同協会の会員名称とその宿泊料金及び電話番号等の一覧を含むものであって、単なる宣伝のためだけでなく、ホテルを利用しようする者がホテルの選定のために使用し得るものである。そして、会員の多くは一流ホテルといい得るものであり、これら会員によって同協会は構成されているものである。したがって、引用標章は、同協会を表示すると共に一覧表に表示されたホテルが同協会の会員であることを表示しているものである。
 以上によれば、引用標章は、日本ホテル協会及びその会員ホテルを表示するものとして、ホテルを利用しようとする者やホテル関係者のみならず、一般にも広く認識されていたものというべきである。
 したがって、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似する商標であるから、商標法4条1項6号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取消すことはできない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所