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 商標「」は、 引用各商標「」及び 「」と非類似であり、また、引用各商標が周知であるとしても、外観・観念・称呼のいずれからしても十分に区別し得ると判断された事例
(平成11年異議第91353号、平成12年4月3日決定、審決公報第11号)
 
1.本件商標
 本件登録第4284742号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成10年5月29日に登録出願され、別掲したとおりの構成よりなり、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年6月18日に設定登録されたものである。

2.登録異議の申立の理由
 本件商標は、昭和46年2月24日に登録出願され、別掲したとおりの構成よりなり、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和58年5月26日に設定登録されている登録第1592525号商標、昭和46年2月24日に登録出願され、別掲したとおりの構成よりなり、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和62年12月28日に設定登録されている登録第2006244号商標(以下、「引用各商標」という。)と類似するものであり、かつ、両者の指定商品は抵触するものであるから、商標法4条1項11号に該当する。
 また、引用各商標は、申立人の業務に係る商品「ジーンズ」に使用され取引者・需要者に広く認識されている商標であるから、本件商標をその指定商品について使用するときは、申立人若しくは申立人の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれがあるので、本件商標は商標法4条1項10号に該当する。
 したがって、本件商標の登録は取消されるべきである。


3.当審の判断
 本件商標と引用各商標は、別掲したとおりポケットを思わせる五角形の図形の中に二重波線の山形状の図形を描いてなるものであるが、本件商標のそれは、図形の中央部に頂点がくるように三つの山形状の図形を描いてなるのに対して、引用各商標のそれは、図形の中央部に谷がくるように二つの山形状の図形を描いてなるという差異があり、構成上これだけの差異があれば、例え両者を時と処を異にして離隔的に観察した場合でも外観上彼此見誤るおそれはないものとみるのが相当である。
 また、本件商標と引用各商標よりは、特定の称呼・観念は生じ得ないものと判断するのが相当であるから、両者は称呼・観念において比較し得ないものである。
 さらに、引用各商標が申立人の業務に係る商品「ジーンズ」に使用され、取引者・需要者の間に広く知られている事実は認められるとしても本件商標と引用各商標とは、上記したとおり、その外観、称呼及び観念のいずれからしても十分に区別し得る商標であって、ほかに、両商標が紛れ得るとする事由は見出だせないから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品が申立人又は申立人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれのないものである。
 したがって、本件商標は商標法4条1項11号及び同10号に違反して登録されたものではない。
 よって、結論のとおり決定する。


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鈴木正次特許事務所