最近の注目審決・判決を紹介します。

 商標「」は、指定役務「御祓」が経済活動上の取引の対象となり得る商標法上の役務であるから、本願添付の商標の使用説明書によれば商標法3条1項柱書の要件を具備する、と判断された事例
(平成7年審判第5606号、平成12年7月25日審決、審決公報第14号)
 
1.本件商標
 本願商標は、上に表示した通りの構成よりなり、第42類「御祓」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則5条1項の規定による使用に基づく特例の適用を主張し、平成4年9月29日に登録出願されたものである。

2.原査定の理由
 原査定において、「この商標登録出願の願書に記載された役務『御祓』を、『教義を広め、儀式を行い、及び信者を教化育成すること』を主たる目的とする『神社』が行うことからすれば、これは宗教活動の範疇に属し、その活動自体が経済活動上の取引対象となるサ?ビスとは言えないと判断されるものであるから、商標法で保護される商品や役務とは認められないものである。
 よって、出願人が商標法で規定するところの『自己の役務の係る業務』を行っているものとは認められない。
 また、本願添付の商標の使用説明書のみからでは『御祓』を業として行い、その業務に関して使用していることの確認はできないものである。
 したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法3条1項柱書の要件を具備しない。」として、出願を拒絶したものである。


3.当審の判断
 本願商標は、指定役務を「御祓」とするものである。
 そして、「御祓」は、「災厄を除くために、神社などで行う神事」として行う行為であることは社会一般に認識、理解されているところである。
 しかして、主として、この神事を行う神社等は「宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」を目的とする宗教法人であるところ、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができるものであって、神社が「御祓」による収益を得ることは宗教法人法6条において認められる業務といって差支えないものである。
 さらに、宗教法人は、法律上において経済活動が一部制限されているとしても、「御祓」の報酬として、第三者(利用者)都の間に金銭の授受の行為(その行為は寄付であったとしても)は存在することよりすれば、「御祓」は経済活動上の取引の対象となり得る商標法上の役務というが相当である。
 してみれば、請求人(出願人)は、商標法で規定するところの、自己の役務に係る業務(御祓)を行っているものと認めざるを得ない。
 また、本願添付の商標の使用説明書から、請求人は、「御祓」の業務に関し、本願商標を使用していることが確認できるものである。
 したがって、本願商標は原査定の拒絶の理由によって拒絶をすべきものとすることはできない。
 その他、本願について拒絶をすべき理由を発見しない。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所