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 商標「はいれます」は、「入れます」の意味合いが認識されるとしても、誰が、何に、入れるのか具体的に認識されるものではないから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ではない、と判断された事例
(不服2000-4207、平成13年6月5日審決、審決公報第20号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「はいれます」の文字を横書きしてなり(標準文字による商標)、平成10年7月6日に登録出願、指定役務については、平成11年11月8日付けの手続補正書により第36類「生命保険の引き受け,生命保険契約の締結の媒介又は代理」と補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、指定役務との関係では、『保険に入れます』を認識し、保険の勧誘の際に、保険勧誘員等が客に対し保険に加入することが可能であることを示す言葉として需要者に理解されるに過ぎず、自他役務識別標識としての機能を果し得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法3条1項6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.請求人の主張の要旨
 請求人は、請求の理由において、要旨次のように主張し、証拠として甲第1及び2号証を提出している。
 (1)本願商標は、直接役務の内容を表示したものではなく、また、「はいれます」という一定の意味合いを有する語よりなるから、需要者の注意を引く商標となりうる特徴を有している。
 (2)本願商標からは、「いつ、誰が、どこで、何に、どのように、入れる」のか具体的内容を知ることはできない。また、指定役務に係る生命保険において、保険引受けの内容は、不保対象者の年齢、職業、健康状態 …不保対象者、保険期間等によって異なり、保険勧誘員は保険内容、保険対象者、メリット等を説明するものであるから、本願商標に接する需要者は、「はいれます」という保険はどのような保険であるのか興味を示し、内容を検討することになる。
 (3)請求人は、本願商標を付した生命保険を平成10年7月ごろから販売しており、パンフレットを顧客、クレジットカード等加入者へ配布し、新聞・雑誌・テレビコマーシャル等大々的に宣伝を行い、平成12年5月末の加入件数は、約11万件を超えるにいたり、本願商標に接する需要者が直ちに請求人に係る生命保険であると認識しうるほど周知されている。


4.当審の判断
 本願商標は、「はいれます」の文字よりなり、「入れます」の意味合いを認識されると認められるものである。
 ところで、本願商標が前記意味合いを認識されるものであるとしても、誰が、何に、入れるのか具体的に認識されるものとはいえず、むしろこれに接する取引者、需要者は、その具体的対象物のない断定的な表現方法に印象を受け、かえって、記憶に残るといえるものである。
 そうすると、本願商標は、自他役務の識別機能を有するものというべきである。
 したがって、本願商標は商標法3条1項6号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取り消しを免れないものである。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所