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 商標「DATAQUEST」は、登録出願時における著名性が認められないとして、他人の名称若しくは他人の著名な略称を含む商標とはいい得ないと判断された事例
(平成10年審判第8896号、平成13年11月8日審決、審決公報第25号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「DATAQUEST」の欧文字を書してなり、国際分類第9類「生理的データ分析用電子計算機及びその他の電子応用機械器具およびその部品」を指定商品として、平成5年1月19日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶理由(要旨)
 原審において商標法4条1項7号、同8号及び同15号を理由とする登録異議の申立があった結果、原査定は、本願商標を商標法4条1項8号に該当するものとして、本願を拒絶したものである。

3.請求人の主張(要旨)
 申立人の業務は「半導体、コンピュータ、テレコミュニケーション等のハイテク産業の継続調査及びコンサルティング業務」であり、その会社名も一部の限られた取引者・需要者の間で知られているにすぎない。
 これに対し、請求人(出願人)の業務は、電気計測機製造業であり、生理的データ分析用電子計算機、その他の電子応用機械器具を製造・販売しているものであって、米国データクエストインコーポレイテッドが提供する役務と請求人(出願人)が製造・販売する商品は類似する関係に無いことは明らかであり、またそれぞれの用途が一致するとはいえず、しかもそれぞれの対象となる需要者の範囲が異なる。
 そして、請求人(出願人)の商品は、日本において昭和60年5月頃から学研ヘルスプロダクト社(甲第10号証)が販売を開始し、昭和63年4月2日以降はプライムテック株式会社(甲第11号証、甲第12号証)が販売を行っており、1990年から1995年までの6年間平均で約2億円弱の売上があり、過去10余年間今日に至るまで「DATAQUEST」のマークをつけた慢性実験テレメトリー自動計測システムを日本国内にて大々的に販売し、東大、京大、阪大、慶応大をはじめ多くの大学の医学部、薬学部、農学部の研究室、国立循環器センター、財団法人大阪バイオサイエンス等の国公立研究機関、武田薬品工業(株)の中央研究所等、国内製薬会社等に納入し、現在も引き続きこれらの研究機関で使われている。


4.当審の判断
 本願商標は、前記の通り「DATAQUEST」の文字を書してなるところ、これを構成する前半の「DATA」の文字部分は、「データ」と読まれ、「情報、資料、文献」の意味合いの英語として、また、同後半の「QUEST」の文字部分は「クエスト」と読まれ、「探索、探求、追及」の意味合いの英語と理解されるものであるから、全体として「データクエスト」と読まれ、「データ探索」の如き抽象的意味合いの語として理解されるものである。
 しかして、原査定は、本願商標を商標法4条1項8号に該当するものとして拒絶したところ、該法条に該当するか否かの判断に当たっては、当該商品又は役務の分野における需要者一般の注意力と取引の実情に照らし、その当否を判断するのが適当と解される。
 さらに、同第16号証(日本データクエスト株式会社の取引先別売り上げリスト)、同第17号証乃至同第29号証(同会社の主催する各種セミナー及び会議のパンフレット)及びその他同各号証(新聞記事)によっても一定の当該事業の実績が認められるにすぎないから、本願商標の登録出願時において、これが著名であったとみるべき証拠とはいい難いものである。
 そうとすると、「DATAQUEST」の文字は、申立人の「略称」を表すものであることは認め得るとしても、本願商標の登録を排除し得るほど、「生理的データ分析用電子計算機及びその他の電子応用機械器具及びその部品」についての一般の取引者、需要者が本願商標の登録出願時に「DATAQUEST」の文字より申立人会社を直ちに想起し得る程度に著名性を取得していたものとは認め難い。
 してみれば、「DATAQUEST」の文字を書してなる本願商標は、他人の名称若しくは他人の著名な略称を含む商標とはいい得ないものであるから、商標法4条1項8号に該当するものということができない。
 したがって、原査定の理由をもって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
 その他、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所