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 商標「」は、構成中のカエデの葉様の図柄の外形、輪郭等においてカナダ国の記章のそれと共通するとしても、かかる構成からは、同国の記章そのものを単独に想起し得ないばかりでなく、同記章との同一又は類似の範囲を逸脱しているから、パリ条約の同盟国の記章であって、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標に該当しない、と判断された事例
(不服2000-10957、平成14年2月13日審決審決公報第28号)
 
1.本件商標
 この出願に係る商標(以下、「本願商標」という。)は、上のとおりの構成よりなり、国際分類第24類に属する願書記載のとおりの商品を指定して、平成11年5月26日に登録出願、その後、指定商品については、平成12年4月28日付の手続補正書により「カナダ産乃至カナダ製素材を用いた織物,同メリヤス生地,同フェルト及び不織布,同レザークロス,同布製身の回り品,同ふきん,同かや,同敷き布,同布団,同布団カバー,同布団側,同まくらカバー,同毛布,同織物製壁掛け,同織物製ブラインド,同カーテン,同シャワーカーテン,同テーブル掛け,同どん帳」と補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、経済産業大臣が指定するカナダの記章中の三(平成6年4月26日号外経済産業省告示第228号)と類似すると認める。したがって、本願商標は、商標法4条1項2号に該当する。」旨認定、判断し本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は上に示すとおり、深緑色矩形内に、白抜きの縁取りをした赤色の一枚のカエデ(楓)の葉様の図柄を背景として、同図柄のほぼ全面を覆う如く、頭部を左側に向けて飛翔する一羽のカモ科の鳥の図柄を白黒の濃淡色を用いて表してなり、これら図形下部に、「CANADIAN ROCKY GOOSE」及び「Canada」の欧文字を上下二段に白抜きに或いは籠字風に表してなるものである。
 しかして、前記の図形部分は、カエデの葉様の図柄と鳥の図柄が渾然一体に表現されていて、しかも、それらの全体の占めるスペースの割合も均等なものというべく、殊更カエデの葉様の図柄部分のみを単独の存在として抽出しなければならない合理的必然性は見出せない。
 そうとすると、たとえ、構成中のカエデの葉様の図柄の外形、輪郭等においてカナダ国の記章のそれと共通するものとしても、かかる構成からは、同国の記章そのものを単独に想起し得ないばかりか、同記章との同一又は類似の範囲を逸脱しているものとみるのが相当である。
 してみれば、本願商標は、パリ条約の同盟国の記章であって、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標に該当するものとはいえないから、これを商標法4条1項2号に該当するものとして拒絶すべきものとすることはできない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所