最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「オペラ大学」は、学校教育法に基づいて設置された一般的な大学名を表したものと理解されるとは言い難く、「大学」の文字を有していても、学校教育法により認可を受けている「大学」という教育施設であるかの如く、世人を欺瞞し又は社会公共の利益に反するとはいえないと判断された事例
(不服2000-605、平成14年3月27日審決、審決公報第29号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「オペラ大学」の文字を書してなり、国際分類第9類の商品及び国際分類第41類の役務を指定商品及び指定役務として、平成10年5月15日に登録出願されたものである。


2.原査定の拒絶の理由
 原査定は「この商標登録出願に係る商標は、『オペラ大学』の文字よりなるものであるが、その正規の手続によって学校教育法に基づく『大学』の設置について認可を受けているものと認め難い登録出願人が、『大学』の文字を含む本願商標を使用する場合には、恰も学校教育法により認可を受けている者であるが如く、誤信せしめ、その信頼を裏切るばかりか、著しく社会的妥当性を欠く結果となり、ひいては公の秩序又は風俗を害するおそれのある商標である。
 したがって、この商標登録出願登録に係る商標は、商標法4条1項7号に該当する。」として拒絶したものである。


3.当審の判断
 本願商標は、その構成前記の通り「オペラ大学」の文字を書してなるところ、該文字全体からは、学校教育法に基づいて設置された一般的な大学名を表したものと理解されるとは言い難く、たとえ、その構成中に「大学」の文字を有していても、それをもって、直ちに学校教育法により認可を受けている「大学」という教育施設であるかの如く世人を欺瞞し又は社会公共の利益に反するものといえないものと判断するのが相当である。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用した場合に、公の秩序又は風俗を害するものに該当するとはいえない。
 さらに、本願商標は前記の構成よりなるものであって、それ自体何ら矯激、卑猥もしくは差別的な印象を与えるものではなく、また、本願商標をその指定商品及び指定役務について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとすべき事由はなく、かつ、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
 したがって、本願商標を商標法4条1項7号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶をすべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 商標「CT金閣寺」は、その指定商品においては建造物の名称をその商標に使用して識別している事実が認められるから、その商品が金閣寺の所有者又は同人と関係のある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について取引者・需要者が混同を生ずるおそれはないと判断された事例
(不服2000-20992、平成14年3月25日審決、審決公報第29号)
 
1.本件商標
 本願商標(標準文字による商標)は、「CT金閣寺」の文字を書してなり、国際分類第28類「遊戯用器具」を指定商品として、平成12年4月13日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、京都市北区にある禅寺で世界文化遺産にも指定されている『鹿苑寺』の別称として著名な『金閣寺』の文字を有してなるところ、当該建造物(寺)の所有者の承諾を得たものとは認められないことから、これをその指定商品に使用するときは、その所有者の業務に係る商品であると誤認し、或いは、その所有者と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同する虞があるものと認められる。
 したがって、本願商標は商標法4条1項15号に該当する。」旨認定し、判断して本願を拒絶したものである。


3.当審の判断
 本願商標は、前記の通り、「CT」の欧文字と「金閣寺」の文字とを結合して一連に書してなるところ、その指定商品においては「金閣寺」のような建造物の名称をその商標に使用して識別している事実が認められる。
 そうとすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、その商品が金閣寺の所有者又は同人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について、取引者・需要者が混同を生ずるおそれはないものである。
 したがって、本願商標が、商標法4条1項15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所