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 商標「OPENTYPE」は、前半の「OPEN」の文字部分が指定商品中、特にコンピュータ関係において「プログラムでデータを読み書きするために該当のファイルに対してアクセス可能な状態にする」等の意昧を有するとしても、かかる構成においては、特定の商品の品質を具体的に表示するものとは言い難く、むしろ、構成文字全体をもって一種の造語として認識されるとみるのが相当であるとして、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(平成10年審判第19782号、平成14年10月22日審決、審決公報第36号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「OPENTYPE」の欧文字を横書きしてなり、第9類に属する願書記載の商品を指定商品として、1996年5月3日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を王張して、平成8年11月1日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、同10年6月26日付け手続補正書により「フォント生成用及びフォントデータ変更用のコンピュータプログラム・フォント表示用のコンピュータープログラム及びプリンター制御用のコンピュータープログラムが記憶された磁気デイスク、同磁気テープ、同光デイスク及びその他の記録媒体」と補正されているものである。

2.原査定の拒絶理由
 原査定は、「本願商標は、『OPENTYPE』の欧文字を普通に書してなるところ、本願の指定商品中特にコンピュータ関係においてはプログラムでデータを読み書きするために、該当のファイルに対してアクセス可能な状態にすることをオープン(OPEN)と言い、また、電気通信機械器具においては、メーカーが製品の仕様や規格を一般に公開することを言うことからも、本願商標をその指定商品中、例えば「電気通信機械器具、電子計算機その他の電子応用機械器具及びその部品」に使用するときには上記の機能、規格を有してなる部品であることを認識させるに止まり、単に、商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、「OPENTYPE」の文字を書してなるところ構成各文字は、外観上纏まり良く一体的に表現されていて、しかも、全体をもって称呼した場合もよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、構成中前半の「OPEN」の文字部分は、原査定説示の如くの意味を有するものであるとしても、かかる構成においては、特定の商品の品質を具体的に表示するものとして理解されるとは言い難いものであり、むしろ、構成文字全体をもって一種の造語として認識されるとみるのが相当である。
 また、当審において職権をもって調査したが、該文字が本願指定商品を取り扱う業界において商品の品質を表示するものとして取引上普通に使用されている事実は見出せない。
 してみれば、本願商標をその指定商品について使用しても、商品の品質を表示するものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/12