最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、引用商標「OMEGA」とは区別可能な別異の商標であって、商品も構造、機能、用途等を異にするから、商品の出所について混同を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2000-3012、平成15年4月18日審決、審決公報第41号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第16類「紙類,印刷物,書画,写真,写真立て,かるた,歌かるた,トランプ,花礼,文房具類」を指定商品として、平成10年12月15日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その構成中に、スイス国 ビエンヌ市 リュー スタムプフリ 96番 在のオメガ エス アーが、時計に使用して著名な商標『OMEGA』と類似の文字を有してなるから、これを本願指定商品に使用するときは、恰も上記の会杜と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は上掲の通り、「オメガブースト」の片仮名文字と「Omega Boost」の欧文字とを二段に併記してなるところ、上段の片仮名文字が欧文字の表音を表したと見るのが自然であり、また、これより生ずる「オメガブースト」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、本願商標は、むしろ、その構成文字全体をもって一体不可分の造語よりなるものと認識され、把握されるものとみるのが相当である。
 そして、オメガ エス アーが時計に使用する「OMEGA」の商標(以下、「引用商標」という。)が、周知著名なものとなっているとしても、上記構成からなる本願商標と引用商標とは、明らかに区別することができる別異の商標であって、しかも、本願の指定商品と「時計」とは、構造、機能、用途、用法、取引系統等を異にするものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が、引用商標を連想・想起するようなことはなく、オメガ エス アー又は同人と経済的・組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
 したがって、本願商漂が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「CROSS AIR/クロスエア」は、スイスの航空会社「CROSSAIR(クロスエア)」社が社名変更され、航空会社の業務と本願商標の指定商品とは、関連性が薄いことからも、需要者をして同人の業務に係る商品又は役務を直ちに連想、想起し得るものということはできないと判断された事例
(不服2001-5412、平成15年3月12日審決、審決公報第41号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「CROSS AIR」の欧文字と「クロスエア」の片仮名を上下二段に書してなり、第3類「化粧品、せっけん類、香料類」を指定商品として、平成11年8月6日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、スイスの航空会社として広く知られている『CROSSAIR』社を表す『CROSS AIR』の欧文字とその表音『クロスエア』の文字を二段に書してなるものであるから、出願人がこれを指定商品に使用するときは需要者は上記会社もしくは上記会社と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上記の通り、「CROSS AIR」の欧文字と「クロスエア」の片仮名文字よりなるものであるところ、これが原査定説示のように、スイスの航空会杜「CROSSAIR(クロスエア)」社を表すものであったとしても、本願商標の登録出願時ないし現在までの間におけるその著名性は客観的に明かでなく、該社の名称が需要者間に広く認識されていたものとすることができないばかりか、現在では該社は、社名変更により「スイスエアライン(リミテッド)」となっているものである。
 さらに、航空会杜の業務である「航空機による輸送」と、本願商標の指定商品「化粧品」等とは、取扱業者・需要者等が異なっており、関連性が薄いところからも、本願商標をその指定商品に使用しても、需要者をして他人の業務に係る商標又は役務を直ちに連想、想起し得るものということはできないものである。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/07