最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「HAMA(標準文字)」は、氏「浜」に通じるとしても、「海又は湖に沿った水ぎわの平地。はまべ。」等の意味合いとして用いられることも多いから、氏姓を普通に用いられる方法で表示したものとのみ認識するとはいえないと判断された事例
(不服2002-482、平成15年10月31日審決、審決公報第49号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「HAMA」の欧文字を標準文字とし、第9類「半導体ウエハマッピング用センサ,ディメンジョン(寸法)測定用センサ,その他の測定機械器具,電気磁気測定器,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、2000年4月13日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成12年10月13日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶理由
 原査定は、「本願商標は、ありふれた氏と認められる『浜』に通じる『HAMA』の文字を普通に用いられる方法で書してなるに過ぎないものと認める。従って、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、「HAMA」の欧文字を標準文字としてなるところ、これよりは、「浜」の文字(語)を想起させるものであるとしても、該「浜」の文字は、「広辞苑」(第5版、岩波書店発行)によれば、「海又は湖に沿った水ぎわの平地。はまべ。」等の意を有する旨の記載が認められるものであり、「HAMA」の文字が、氏に通じる「浜」のローマ字綴りで表されたものであるとしても、前記の如き意味合いを有し、該意味合いとして用いられることも多いことから、本願商標を構成する「HAMA」の文字は、該氏姓を普通に用いられる方法で表示したものとのみ認識するとはいえない。
 そうとすれば、本願商標をその指定商品について使用した場合、取引者、需要者はその出所識別の標識として認識し把握するとみるのが取引の実情に照らし相当であって、自他商品の識別機能を有しないということはできないから、これを理由に本願商標を商標法第3条第1項第4号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当でなく、その取り消しを免れない。
 その他、政令に定める期間内に本願を拒絶すべき理由は発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 立体商標「」は、商品の美感を高めるために加えられた、単なる装飾的なものではなく、独創的な図形というべきものであるから、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を有すると判断された事例
(不服2001-21078、平成16年3月11日審決、審決公報第53号)
 
1.本願商標
 本願商標は上掲のとおりの構成よりなり、第18類「ハンドバッグ」を指定商品として、平成12年10月30日に立体商標として登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その指定商品であるハンドバッグの一形状を表示した図形を描いたものであり、同種の商品が採用し得る立体的形状の範囲を越えているものとは認識し得ない形状からなるものと認められるから、このようなものは、単に商品の形状を表したに過ぎず、立体商標として識別力を有するものとは認めることができない。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲のとおりの構成よりなるところ、そこに表された立体的形状は、指定商品である「ハンドバッグ」が採用し得る一形状に過ぎないものであるとしても、当該立体的形状の表面には、小丸によって描かれた楕円形内の欧文字「H」が顕著に表されてなるものである。
 しかして、該図形は、指定商品「ハンドバッグ」の美感を高めるために加えられた、単なる装飾的なものであるとはいい難く、独創的な図形というべきものであるから、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を充分に果たし得るものというのが相当である。
 してみると、本願商標はその指定商品の形状そのものを表示してなるに過ぎないものということはできず、全体として自他商品の識別標識としての機能を有する立体的形状といわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/10/03