最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「AND(標準文字)」は、「アンドラ公国」の国名を認識させるというよりも、英語の等位接続詞の大文字表記と認識させるものであるから、当該国の尊厳を害するおそれはなく、国際信義に反することもなく、公序良俗を害するおそれもない、と判断された事例
(不服2002-3147、平成16年5月7日審決、審決公報第54号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「AND」の文字を書してなり(標準文字による商標)、第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成12羊4月17日に登録出願されたものである。
 そして、願書記載の指定役務については、平成13年5月25日付手続補正書により、補正されている。


2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、ヨーロッパに在する『アンドラ公国(アンドラ・1993年5月独立)』を意味させる『AND (Principality of Andorra)』の文字に通じる『AND』の文字よりなるので、日本の法人である出願人が他国の国名を商標として採択使用することは、その国の尊厳を害するおそれも生じることにもなり、また、国際信義に反することにもなるので、穏当でない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記構成よりなるところ、該文字が、原審説示の如くヨーロッパに有する「アンドラ公国」の国名コードを表すものとして記載されている例があるとしても、我が国においてこの欧文字がアンドラ公国の国名コードを表すものであると一般に知られているとはいい難く、また、その欧文字の綴りに接する者は、我が国の外国語の普及の程度からすれば、英語の等位接続詞「and」の大文字表記として把握、認識する場合も少なくないとみるのが自然である。
 そうすると、本願商標より直ちにアンドラ公国を想起、認識することはないものというべきであるから、本願商標を使用することがその国の尊厳を害するおそれを生じ、また国際信義に反するとする相当の理由はないものであり、本願商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とは認められない。
 したがって、本願商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、法令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結講のとおり審決する。


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B. 商標「全日本めんこ協会」は、任意に設立された一種の会の名称を表示したものであるから、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなく、社会公共の利益・社会の一般的道徳観念に反するものではない、などと判断された事例
(不服2003-399、平成16年5月17日審決、審決公報第54号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「全国めんこ協会」の文字を標準文字で横書きしてなり、第16類、第28類及び第41類に属する願書記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成14年2月18日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品及び指定役務については同年11月5日付の手続納正書をもって補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『或る目的の為に会員が協力して設立、維持する会』を意味し、全体として団体の名称を表示する為に用いられる『協会』の文字を有してなるものであるから、この団体との関係が認められない出願人が、これを自己の商際として使用するときは、取引者・需要者に該名称の者の取り扱いに係るものであるかの如く認識させることから、商取引における秩序を乱すおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は商標法4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、構成中の「協会」の文字は、特定の法律に準拠して設立される団体をいうものではなく、ある目的のために会員が協力して任意に設立・維持する会を意味するものであって、このような名称の会の一部にしばしば使用されるものであることよりすれば、「全日本めんこ協会」の文字は、任意に設立された一種の会の名称を表示したものとして看取されるというべきである。
 また、本願商標はその構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、また、本願商標をその指定商品及び指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとは認められない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/11/22