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A. 商標「PILOT'S/IP」は、「PILOT」の文字部分が株式会社パイロット又は同人と経済的・組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であることを認識するというよりも、「水先案内人」等を意昧する親しまれた英語として認識するものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない、と判断された事例
(不服2002-12235、平成16年8月9日審決、審決公報第58号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「PILOT’S/IP」の文字を書してなり、第9類「航空機の搭乗員に航空機・飛行及び航空の情報を表示するための統合エイビオニクス計器ディスプレイシステム」を指定商品として、平成13年3月27日(パリ条約による優先権主張2000年9月29日、アメリカ合衆国)に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その構成中に『万年筆・文房具類』のメーカーとして知られる『株式会杜パイロット』が、その商品に使用している著名な標章『PILOT』(以下、『引用商標』という。)の文字を有してなるので、これを本願指定商品について使用したときは、あたかも上記会社と何らかの関係を有する商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせる虞があるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、「PILOT'S/IP」の文字を書してなるところ、構成中の「PILOT」(pilot)は、「水先案内人、(航空機の)操縦士」の意味を有する平易な英語であり、大変親しまれた語である。
 また、本願指定商品は上記の通りであって、引用商標の使用商品「万年筆・文房具類」とは、その製造者、販売者等が相違し関連の薄い商品ということができる。
 そうすると、引用商標が、商品「万年筆・文房具類」に使用して著名であるとしても、上記事情及び本願指定商品と引用商標の使用商品とは商品の分野が異なることを考慮すると、本願商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者は本願商標の「PILOT」の文字部分から引用商標を直ちに連想、想起し、株式会社パイロット又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると認識するものというより、寧ろ、「水先案内人、(航空機の)操縦士」を意味する親しまれた英語として認識するものといえる。
 してみれば、本願商標は、原査定で指摘するように、商品の出所について混同を生じさせる虞があるとする相当の理由がないものである。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するものとした原査定の拒絶の理由は妥当でなく、原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「静音」は、第12類の商品について一種の造語として自他商品の識別機能を有する、等と判断された事例
(不服2002-5903、平成16年8月26日審決、審決公報第58号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「静音」の漢字を横書きしてなり、第12類「航空機並びにその部品及び附属品、鉄道車両並びにその部品及び附属品、二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品、電動式手押し車」等を指定商品として、平成12年11月14日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『静音』の漢字を横書きしてなるものであるところ、指定商品との関係において、これよりは、例えば、『エンジンの音の静かな航空機・鉄道車両・二輪自動車・電動式手押し車』の意味合いを理解、認識させるものであるから、これを本願の指定商品中、『前記に相応する商品』に使用されたときは、商品の品質を表示するに過ぎないものと認められる。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせる虞があるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、前記の通り「静音」の漢字よりなるところ、その全体からは格別の意味を認識し得ないものというべきであって、その指定商品を取り扱う業界において、「静音」の文字が特定の商品の品質等を表示するものとして普通に使用されているという事実も見出せない。
 してみれば、本願商標は、特定の意味を有しない一種の造語よりなるものと認められるから、本願のいずれの指定商品についても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせる虞もないといわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/4/25