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A. 商標「」は、「田」字状の角丸四角形内の個々の升目に「個人書店」の各漢字を整然と配した構成を特徴とし、構成全体をもって一体不可分に表された固有の商標というべきであるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいい得ない、と判断された事例
(不服2003-5538、平成17年10月12日審決、審決公報第71号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第16類「印刷物」を指定商品として、平成14年2月25日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、ありふれた図形内に『個人経営の書物を売る店』の意味合いを容易に認識させる『個人書店』の文字を書してなるものであるから、このような商標をその指定商品について使用するも、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識できるものとはいえない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は上掲の通り「田」の字状の角丸四角形内の升目に、右側から「個」、「人」、「書」及び「店」の各文字を配した構成よりなるところ、その構成中の文字部分「個人書店」は、「個人が経営する書物を売る店」ほどの意味合いを容易に認識、理解させるものとみるのが相当であり、かつ、該文字が前記した意味合いを指称する語として普通に使用されている事実もあることから、「個人書店」の文字自体は自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないといい得るものである。
 しかしながら、本願商標の構成中の図形部分は、角丸四角形内を縦及び横の2本の線で略均等に4分割してなる構成よりなるものであり、これが本願商標の指定商品を取り扱う業界において、取引上普通に使用されているありふれた図形であるとはいい難いものであるばかりか、該角丸四角形内の個々の升目に「個人書店」の各文字を整然と配した構成を特徴とするものであるから、本願商標は構成全体をもって一体不可分に表された固有の商標というべきである。
 また、当審において調査するも、本願商標がその指定商品を取り扱う業界において、特定の商品の品質等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうとすれば、本願商標はこれをその指定商品に使用しても自他商品の出所識別標識としての機能を果し得るものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいい得ない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、その理由をもって本願を拒絶することはできない。
 その他、法令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「」は、「カクゲン」の称呼が生じないから、「カクゲン」の称呼しか生じない引用商標「」とは互いに非類似と判断された事例
(不服2003-20497、平成17年10月17日審決、審決公報第72号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第24類「布製身の回り品、かや、敷布、布団、布団カバー、布団側、まくらカバー、毛布」を指定商品として、平成6年4月6日に登録出願された平成6年商標登録願第33829号に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願(分割出願)として、平成15年5月27日に登録出願されたものである。

2.引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第1988117号商標は上掲の通りの構成よりなり、昭和55年7月4日登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載の通りの商品を指定商品として、昭和62年9月21日に設定登録され、現在も有効に存続しているものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上に示した通り、細線による正方形のありふれた輪郭図形内に漢字の「源」と見られる文字を行書体で大きく特徴的に書した態様からなるところ、かかる構成からは所謂暖簾記号と看取し得るものとはいい難いから、該輪郭を「カク」と読み込んだ「カクゲン」の称呼は生ずるものとは言い得ず、その構成中の「源」と行書体で表した部分より「ゲン」又は「ミナモト」の称呼を生ずるものとするのが相当である。
 他方、引用商標は上に示した通り、太線の正方形の輪郭図形内に「源」の文字を楷書体で書し、その下部に「カクゲン」の文字を横書きに併記した構成からなるところ、該文字部分より生ずる称呼がその商標より生ずる自然の称呼とみるのが相当であるから、個性全体よりは「カクゲン」の称呼のみを生ずるものとするのが相当である。
 そうとすると、本願商標より「カクゲン」の称呼が生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとする認定判断は妥当性を欠くものである。
 また、本願商標と引用商標とは、それぞれ前記した通りの構成からなるものであり、外観上も区別し得るものであり、かつ、観念上は比較することはできない。
 してみると、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点より見ても類似しない商標といわざるを得ない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '06/9/29