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 商標「」は、引用商標「」(色彩については原本参照)とは称呼「エヌ」を共通にするものの、外観上は明らかに区別し得、観念上は比較すべくもないから、両者をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者が、両商標の称呼における類似点について、外観における相違点を凌ぐ程に印象、記憶、連想し、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があるとは認め難く、互いに非類似と判断された事例
(不服2006-15315、平成19年4月9日審決、審決公報第89号)
 
1 本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり第16類及び第20類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成17年8月30日に登緑出願されたものである。
 そして、指定商品については、平成18年4月10日付手続補正書により、第16類「封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用判かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書裁断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用穴開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗土用ブラシ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ取扱用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品、衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」と補正されたものである。


2 引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4548014号商標(以下「引用商標」という。)は、上掲の通りの構成より、平成13年2月20日出願、第9類、第14類、第25類、第29類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の通りの商品を指定商品として、平成14年3月1日に設定登録されたものである。

3 当審の判断
 一般に商標が類似するかどうかは、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずる虞があるか否かによって決すべきものであり、その類否判断をするに当っては、両商標の外観、称呼、観念を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであって、上記3要素の特定の一つの対比のみによってなされるべきものでないと解されるところである。
 そこで、本願商標と引用商標との類否について判断するに本願商標は前記の通り「エヌ」及び「enu」の文字をそれぞれ二段に書してなるものであるから、その構成各文字に相応して「エヌ]の称呼を生ずるものであり、特定の観念を有しない造語であるとみるの相当である。
 一方、引用商標は、前記の通り、「n」と記号「.」を組み合わせた「n.」を構成中の上半分に大きく顕著に表し、その下部に「natural balance」の文字と括弧書き付の「エヌ」の片仮名文字を配してなる全休が青で彩色された特徴ある構成態様からなるところ、該文字部分より、「ナチュラルバランスエヌ」及び「ナチュラルバランス」の称呼を生ずるほか、「エヌ」の称呼をも生ずるものであって、特定の意味を有しない造語よりなるものとみるのが相当である。
 してみれば、本願商標と引用商標は、「エヌ」の称呼を共通にするものの、外観上は明らかに区別し得るものであり、観念上は比較すべくもないものである。
 しかして、本願商標及び引用商標は、これをその指定商品に使用した場合、その取引者、需要者が、両商標の称呼における類似点について、外観における相違点を凌ぐ程に印象、記憶、連想し、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があるとは認め難く、むしろ特徴ある外観をもって充分に識別し得るものであって、かつ、観念上において比較できないものであることをも総合考慮すれば、互いに相紛れる虞のない非類似のものといわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願についての拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/12/3