最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「夢しずく」は、その指定に係る第31類の商品と品種登録を受けた品種「桃」(種苗登録第12299号)の種苗とは、生産部門、販売部門、用途、品質、需要者の範囲等を異にし、非類似であるから、商標法第4条第1項第14号に該当しない、と判断された事例
(不服2005-20095、平成19年5月14日審決、審決公報第91号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「夢しずく」の文字を標準文字で表してなり、第31類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成16年7月23日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、平成17年3月18日付提出の手続補正書により、第31類「あわ、きび、ごま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、もろこし、うるしの実、コプラ、麦芽、ホップ、未加工のコルク、やしの葉、食用魚介類(生きているものに限る。)、海藻類、獣類、魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。)、蚕種、種繭、種卵、飼料、釣り用餌、果実、野菜、糖料作物、草、芝、ドライフラワー、花、牧草、盆栽、生花の花輪、飼料用たんぱく」と補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『桃』の品種名として登録されている『夢しずく』(種苗登録第12299号)と同一又は類似のものであり、かつ、その品種の種苗又はこれに類似する商品に使用するものと認められる。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第14号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 商標法第4条第1項第14号は、「種苗法(平成10年法律第83号)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品谷しくは役務について使用するもの」と規定している。
 そこで、本願について、「夢しずく」の名称で品種登録を受けた品種「挑」(種苗登録第12299号)の種苗と本願商標の指定商品、第31類「あわ、きび、ごま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、もろこし、うるしの実、コプラ、麦芽、ホップ、未加工のコルク、やしの葉、食用魚介類(生きているものに限る。)、海藻類、獣類、魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。)、蚕種、種繭、種卵、飼料、釣り用餌、果実、野菜、糖料作物、草、芝、ドライフラワー、花、牧草、盆栽、生花の花輪、飼料用たんぱく」との類否について検討するに「桃」の種苗と本願商標の各指定商品とは、生産部門、販売部門、用途、品質、需要者の範囲等を異にするものであるから、非類似の商品というべきである。
 したがって、「桃」の種苗と本願商標の指定商品とが類似する商品であるとし、その上で、本願商標を商標法第4条第1項第14号に該当するとした原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「OriginaFake」は、「贋物商品」を意味するものではなく一種の造語よりなるものであるから、公正な取引秩序を阻害し、国際信義、公序良俗に反するものとはいえず、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2006-24081、平成19年5月30日審決、審決公報第91号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「OriginaFake」の文字を表してなり、第25類に属する願書に記載の商品を指定商品として、平成18年3月16日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 本願商標は、偽商品であることを表す「Fake」と元(偽造元)の商品であることを表す「Origina(l)」を連結し「OriginaFake」と書してなるから、該文字は「偽りの贋物商品」を直感させるものであり、公の健全商取引、公共の福祉に反し、公正な取引秩序を阻害し、国際信義、公序良俗にも反するから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3.当審の判断
 本願商標は、前記の通りの構成よりなるところ、その構成中前半の「Origina」が「原始の、本来の」の意味を有する英語「Original」と構成文字を異にするものであって、仮に該英語に通じる場合があるとしても、後半の「Fake」は本願指定商品を取り扱う業界において「合成皮革等の構造毛皮や構造皮革」を「fakefur(フェイクファー)」「fakeleather(フェイクレザー)」と称し、他の語と組み合わせ商品名の一部として使用されていることからすれば、これらを組み合わせた「OriginaFake」よりは、「原始の、本来の素材に近いもの」程度を想起する場合があるとしても、直ちに原審説示の意味合いを認識するものとは言い得ず、むしろ全体として一種の造語よりなるものとみるのが相当である。
 また、当審において調査するも、「OriginaFake」又は「Origina(l)Fake」が、「贋物商品」を表す語として、商取引において使用されている事実も見出すことができない。
 してみれば、本願商標は、公正な取引秩序を阻害し、国際信義、公序良俗に反するものとはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するとした原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/02/03