最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「WHITEHOUSE COX」は、構成中前半の「WHITEHOUSE」の文字が米国の大統領官邸の通称を表すとしても、文字全体をもって一体不可分の語として認識されるものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2007-8400、平成19年9月6日審決、審決公報第95号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「WHITEHOUSE COX」の文字を標準文字で書してなり第16類、第18類及び第25類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成17年12月2日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その構成中の『WHITEHOUSE COX』の文字が、米国の大統領官邸の著名な通称を表しているので、これを一般人が営利目的で使用することは、該国の権威と尊厳を損ね、国際信義にも反するので、これを自己の商標として採択使用することは穏当でない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上記1の通り、「WHITEHOUSE」と「COX」の文字を1文字程度の間隔をあけてなるものの、各文字は、同じ書体、同じ大きさに一体に表してなるものであり、「WHITEHOUSE COX」の文字は、イギリスにおいて創業100年以上の歴史を持つ革製品メーカーとして知られている出願人(請求人)の名称の略称を表すものであり、また、日本国内においても当該文字を付した出願人(請求人)の製造、販売に係る「財布、バッグ、ベルト」等の革製品が多数販売され、同人の取り扱う商品のブランドとして広く知られていることよりすれば、たとえ、構成中の「WHITEHOUSE」の文字が、米国の大統領官邸の通称を表すとしても、本願商標に接する取引者、需要者は米国の大統領官邸の通称として認識するというより、「WHITEHOUSE COX」の文字全体をもって一体不可分の語として把握、認識するものとみるのが相当である。
 そして、本願商標はその構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、また、本願商標をその指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するものでなく、さらに他の法律によってその使用が禁止されているものと認められない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り、審決する。


〔戻る〕


B. 商標「」は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえない、と判断された事例
(不服2007-5203、平成19年10月25日審決、審決公報第96号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第25類「被服、帽子、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成17年8月1日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、輪郭として普通に用いられるありふれた図形の一である『△』と、商品の規格、型式又は品番などを表示するための記号、符号として取引上普通に使用されるローマ文字の『X』とを『△X』と書してなるに過ぎないから、全体として、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であると認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲の通り「△」と「×」との組み合わせからなるものであるところ、「△」と「×」は、それぞれ、それのみではありふれた輪郭図形や記号として取引上使用される場合があるとしても、これらの組み合わせは、商品の品番、型番等を表示するための記号、符号の一類型として認識されるものとはいえず、また、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものとも言い難いから、むしろ、独特の標章として理解、認識されるものといえるものである。
 そして、当審において職権をもって調査したが、「△」と「×」の組み合わせが、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の規格、型式又は品番等を表示するための記号、符号として、普通に採択、使用されている実情は見い出せなかった。
 そうすると、「△」と「×」との組み合わせよりなる本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるとはいえないから、これを本願の指定商品に使用しても、自他商品の識別標識として機能し得るものと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/09/12