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 商標(別掲(1))は、引用商標(別掲(2))とは、いずれも構成中の「片手でらくらく」の文字部分が自他商品の識別機能を果たし得ず、当該文字部分をもって取引に資するとはいえないから、互いに非類似、と判断された事例
(不服2011-14679、平成24年2月10日審決、審決公報第147号)
別掲(1) 本願商標


別掲(2) 引用商標
 
1 本願商標
 登録第4904535号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲(2)の通りの構成よりなり、平成16年12月16日に登録出願、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガ−ゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンテイ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,失禁用パッド,失禁用ライナー,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工授精用精液」を指定商品として、同17年10月28日に設定登録されたものである。

2 引用商標
 登録第4904535号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲(2)の通りの構成よりなり、平成16年12月16日に登録出願、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガ−ゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンテイ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,失禁用パッド,失禁用ライナー,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工授精用精液」を指定商品として、同17年10月28日に設定登録されたものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲(1)の通り、箱形の容器から出た紙を手の指で挟んでいる図形とその図形中の紙の部分に「片手で」「らくらく」の文字を2段に書してなる処、「らくらく」の文字は「たやすいさま。」を意味する「楽々」(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)を平仮名で書したものと容易に認識されるものであるから、当該文字部分は「片手でたやすく」程の意味合いを認識させるものである。
 そして、「片手でらくらく」の文字については、次のインターネット情報でもみられるように、一般に、キッチンタオルについて、「・・・片手でらくらく切れるピーチキッチンタオルが好評です。」、ウエットティシュについて、「ワンタッチでオープン!片手でらくらく取り出lせます。」、トイレットペーパーホルダーについて、「☆ペーパーホルダーはホルダーに置くだけ、片手でらくらく下向きカット!」、同じく、「・・・面倒なペーパーの巻取りからペーパーカットまで片手で楽々使用。」のように、その商品が片手でたやすく使用できることを説明するものとして、「片手でらくらく」(「らくらく」は、「楽々」や「ラクラク」と記載されることもある。)の文字が使用されている実情がある。
 そうとすれば、本願商標の構成中、「片手でらくらく」の文字部分は、「片手でたやすく使用できる」という程の意味合いを容易に理解させるものであって、商品の品質を表示するに過ぎないものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。
 そうとすると、本願商標は、その構成中、「片手でらくらく」の文字部分のみに着目し、これをもって取引に資するとは言い難いものである。
 一方、引用商標は別掲(2)の通り、角丸の台形図形内に「テークケア」の文字とその下部に「片手でらくらく」の文字を書してなる処、構成中の「片手でらくらく」の文字は上記と同様に、自他商品の識別標識として機能を果たすものではないとみるのが相当である。
 そうとすると、引用商標においても「片手でらくらく」の文字部分のみを取り出して、これをもって取引に資するものとは言えない。
 したがって、本願商標と引用商標の構成中の「片手でらくらく」の文字部分が、自他商品の識別標識としての機能を有するものとし、両商標が類似するとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '12/9/2