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A. 商標「シャンパントリュフロゼ ベシュレジャパン株式会社」は、構成中「シャンパン」が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性葡萄酒」として、我国の一般需要者に広く知られているが、当該シャンパーニュ地方で作られた発泡性ロゼワインを使用した商品に使用しても、公の秩序又は善良の風俗を害する虞はない、と判断された事例
(不服2011-27258、平成24年7月26日審決、審決公報第153号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「シャンパントリュフロゼ ベシュレジャパン株式会社」の文字を標準文字で表してなり、第30類「シャンパーニュ地方で作られた洋酒入りの菓子及びパン」を指定商品として、平成23年2月17日に登録出願されたものである。その後、指定商品については、「シャンパーニュ地方で作られた発泡性ロゼワイン入りの菓子及びパン」と補正されている。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は構成中に『シャンパン』の文字を有する処、該語は『フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性葡萄酒』を意味するものとして我国の一般需要者の間に広く知られている。そして、シャンパーニュ地方の葡萄酒製造者等が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性葡萄酒の生産に努めてきたこと及びINAO等が原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを考慮すれば、これを指定商品に使用するときは、著名な『シャンパン』の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせる虞があるばかりでなく、シャンパーニュ地方の葡萄生産者及び葡萄酒製造者はもとより国を挙げて葡萄酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害する虞があるというべきである。従って、本願商標は公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害する虞があるというのが相当であって、商標法第4条第1項第7号に該当する」旨判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通り「シャンパントリュフロゼ ベシュレジャパン株式会社」の文字からなるものである。
 そして、「シャンパン」の文字は「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性葡萄酒」を意味するとして、我国の一般需要者に広く知られている。
 しかしながら、本願商標は前記1の通り、そのシャンパーニュ地方で作られた発泡性ロゼワインを使用した商品について使用するものである。
 そうとすれば、本願商標はこれをその指定商品に使用しても、公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある商標と認めることはできない。
 従って、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 別掲商標は、構成中「彩の国」が埼玉県章とは異なり、地方公共団体たる埼玉県を表彰するものとして、制定時に県告示がされたものではなく、自由に活用できるようにとの考えの下、愛称として採択され、特定の事業を表示する標章ではないから、商標法第4条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2012-1809、平成24年7月31日審決、審決公報第153号)
別掲(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲の通りの構成からなり、第30類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成22年1月5日に登録出願され、その後、第30類「埼玉県産の菓子及びパン」と補正されている。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標はその構成中に、埼玉県の愛称を表示する著名な標章『彩の国』の文字を有するものである。従って、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当する」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲の通り、構成中右側に「彩の国」の文字を、左側に一文字分下げて「七福神」の文字を2列に縦書きしてなる処、「彩の国」の文字は埼玉県のウェブサイトによれば、平成4年11月14日に埼玉県の愛称として選定されたものであり、「七福神」の文字は「七柱の福徳の神。大黒天・蛭子(えびす)・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋」を意味するものである。
 そして、「彩の国」の文字は埼玉県章とは異なり、地方公共団体たる埼玉県を表彰するものとして、制定時に県告示がされたものではなく、自由に活用できるようにとの考えの下、愛称として採択されたものであって、特定の事業を表示する標章ではない。
 そうすると、「彩の国」の文字は国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章とは言えない。
 従って、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '13/4/1