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 商標「健康マイレージ」は、地方公共団体が行っている公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標と認められるから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と判断された事例
(不服2013-3202、平成25年9月17日審決、審決公報第168号)
 
1 本願商標
 本願商標は「健康マイレージ」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第42類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として(後に、補正)、平成24年6月29日に登録出願されたものである。

2 当審における拒絶理由
 本願商標は「健康マイレージ」の文字を標準文字で表してなる処、該文字はいくつもの地方自治体が行っている市民、町民等の健康づくりのための事業である「健康マイレージ事業、健康マイレージ制度」(以下、「健康マイレージ事業」という。)を理解させる標章と認められるものである。
 該事業については、インターネット情報の「全国知事会」のウェブサイトにおける「先進政策バンク」のウェブページにおいて、各都道府県から「全国知事会先進政策バンク」に登録された事例として、「施策・事業名称」に静岡県の「健康マイレージ事業」が登録されており、その内容は、「1 概要/『健康マイレージ事業』とは、各市野において、住民に健康づくりを促進する新しい仕組みであり、住民は、市町が決定した健康づくりメニューを一定期間行うことを条件に特典を受けられる制度である。」の記載がある。
 また、「健康マイレージ事業」については、市民や町民の健康づくりのための事業として、別掲の新聞記事情報及びインターネット情報の通り、2006年頃から柳井市等において、その事業や制度等の取り組みが始まり、現在は、柳井市、袋井市、豊田市、北九州市、つくば市、三島市、藤枝市、函南町、裾野市、清水町、浜松市、伊豆の国市、長泉町、泉佐野市、霧島市、豊後高田市、十日町市、中土佐町等いくつもの市や町によって、その事業は行われており、広がりを見せている。そして、それぞれの市や町において、該事業の下、「健康マイレージ」の文字が使用されている。
 そうとすれば、「健康マイレージ」の文字はいくつもの地方自治体が行っている市民や町民の健康づくりのための健康マイレージ事業において使用される、該事業の標章として、一般的に広く知られている。
 してみれば、「健康マイレージ」の文字は、地方公共団体が行っている公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章と認められるものであって、また、本願商標はその事業において使用される「健康マイレージ」の標章と同じ構成文字よりなるものであるから、著名な該標章と同一又は類似の商標というべきである。
 したがって、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当する。


3 当審における拒絶理由に対する請求人の意見
 本願商標について、前記2の拒絶理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人は何ら意見を述べていない。

4 当審の判断
 本願商標並びにその指定商品及び指定役務は前記1(省略)の通りである。
 そして、前記2の拒絶理由は、妥当なものと認められる。
 してみれば、本願商標は地方公共団体が行っている公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標と認められるものである。
 したがって、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当し、これを登録することはできない。
 よって、結論のとおり審決する。


別掲

<新聞記事情報(抜粋)>
2009年5月26日付読売新聞(西部朝刊27頁)
 「『健康マイレージ』北九州市が7月開始、毎日の運動で景品ゲット=北九州」の見出しの下、「◆毎日の運動ポイント化で景品ゲット 政令市初、医療費削減へ新制度/北九州市は7月1日から40歳以上を対象に健康診断の受診や毎日の運動量等をポイント化し、歩数計等と交換する健康マイレージ制度を始める。生活習慣の改善を意識してもらうのが狙いで、政令市では初の取り組みという」の記載がある。

<インターネット情報(抜粋)2013年5月29日検索>
「つくば市」のウェブサイトにおける「市民のための健康サポート『つくば健康マイレージ』」のウェブページにおいて、「『つくば健康マイレージ』のことご存知ですか?」の項目では、「『つくば健康マイレージ』事業/健診を受けたり、健康づくり事業に参加して応募すると記念品をプレゼント。応募者を対象にした抽選で豪華景品が当たるチャンスもあります。」の記載がある。

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '14/11/05