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 別掲商標は、構成中「開成中突破模試」の文字部分が指定役務の質、内容を表示して、自他役務の識別機能を果たすものではないし、「開成中」と略称する「開成中学校」が全国各地に複数存在するとしても、これを採択使用することが、商取引の秩序を乱すというような事情を窺うことはできないこともあって、構成自体がきょう激、卑わいなどの文字又は図形からなるものではない等、公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある商標とは言えないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2013-17843、平成25年11月28日審決、審決公報第169号)
別掲
(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲の通りの構成からなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,進学のための模擬試験の実施,教育情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として、平成25年2月20日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標はその構成中に『開成中』の文字を有してなる処、該文字は東京都荒川区西日暮里にある学校法人開成学園が運営する著名な『開成中学校』を表すものであるから、上記学校法人と関係が認められない出願人が商標として採択使用することは、商取引の観点に照らして穏当でない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は別掲の通り、濃赤色の正方形の上部に白抜きでトロフィーと思しき図形と、その左右両側に桃色の帯状図形を配し、該正方形の下部に、白抜きで「開成中」及び「突破模試」の文字を上下二段に書した構成からなるものである。
 ところで、中学校等の各学校は教育行政の一端を担うものであり、一般的には、特定の地域において存在するものである。そして、本願の指定役務に係る学習塾などの受験業界においては、当該特定の学校の入学試験合格に向けた講座が開催され、「○○中模試」、「○○高模試」等の表示のもとで、模擬試験が実施されている実情がある。
 そうとすると、本願商標構成中の「開成中突破模試」の文字部分は、「開成中学校の入学試験を突破するための模擬試験」程の意味合いを認識させるものであり、その指定役務との関係においては、役務の質、内容を表示するものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たすものではない。
 そうすると、「開成中」の文字を有する本願商標が登録されたとしても、その指定役務の分野において、請求人が該「開成中」の文字を独占的に使用できるものということはできない。
 また、本願商標に接する取引者、需要者は「開成中突破模試」の文字部分について、上記の通り認識し、その構成中の「開成中」の文字部分について「開成中」と略称される、それぞれ所在等が明確な特定の学校として認識するものというべきであるから、請求人が本願商標を使用することが、当該学校及びその名声等にただ乗りするものであるとか、名声等を希釈化するものであるというような事情を窺うことはできない。
 してみれば、本願商標が、その構成中に「開成中」の文字を有し、「開成中」と略称する「開成中学校」が全国各地に複数存在するとしても、これを採択使用することが、商取引の秩序を乱すというような事情を窺うことはできない。
 さらに、本願商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、本願商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもなく、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
 したがって、本願商標は公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある商標とは言えないから、商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り蜜決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '14/11/10