最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「串カツ田中」は、「串カツ」が揚物料理の一種を表示し、「田中」がありふれた姓氏の一であるとしても、構成文字全体で一種の屋号を表したものと看取されるものであり、当該構成文字全体が指定商品等との関係において、取引上、ありふれて使用されている事実を見出すこともできないから、自他商品・役務の識別機能を果たし得る、と判断された事例
(不服2014-6393号、平成27年1月27日審決、審決公報第183号)
 
1 本願商標
 本願商標は「串カツ田中」の文字を標準文字で表してなり、第29類、第30類、第35類及び第43類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成25年5月20日に登録出願され、その後、補正されている。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は『串カツ田中』の文字を標準文字で表してなり、構成中『串カツ』は『揚物料理の一種。豚肉と葱又は玉葱を交互に串に刺し、衣をつけて揚げたもの』を指称し、『田中』はありふれた『姓氏の一』であるから、全体として『田中氏の生産・販売に係る串カツ』又は『田中氏の取り扱いに係る飲食物、串カツに関する役務』程の意味合いを無理なく看取させるものといえる。してみれば、本願商標は商標として機能すべき格別顕著なところがなく、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識できない商標と言わざるを得ない。従って、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「串カツ田中」の文字を標準文字で表してなり、構成各文字は同し大きさ、同じ間隔をもって外観上纏り良く一体に表されており、生ずる「クシカツタナカ」の称呼も淀みなく一連に称呼し得るものである。
 そして、本願商標は構成中「串力ツ」の文字が揚物料理の一種を表示するものであり、「田中」の文字がありふれた姓氏の一であるとしても、上記構成からなる本願商標にあっては、これに接する取引者、需要者をしてその構成全体で一種の屋号を表したものと看取されるものであり、かつ、本願商標の構成文字全体が指定商品等との関係において、取引上、ありふれて使用されているとする事実を見出すことはできない。
 そうとすれば、本願商標を指定商品等について使用した場合、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できないとは言えず、自他商品又は自他役務の識別標識を十分に果たし得ると言わざるを得ない。
 したがって。本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 商標「ユナイテッドオム/United HOMME」は、片仮名又は欧文字が出願時に日本国内又は外国において既に周知な商標と認め得る的確な証拠は見出せないし、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用する商標と推認し得る何らの証拠も見出せないから、商標法第4第1項第19号に該当しない、と判断された事例
(不服2014-14546号、平成27年2月25日審決、審決公報第184号)
 
1 本願商標
 本願商標は「ユナイテッドオム」の片仮名と「United HOMME」の欧文字を上下二段に書してなり、第18類「皮革製包装用容器、愛玩動物用被服類、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘、皮革」を指定商品として、平成25年5月31日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は『ユナイテッドオム』の片仮名と『United HOMME』の欧文字を上下二段に書してなる処、紳士用の財布・かばん類等の人気ブランドとして、本願商標の出願時は勿論、その後も継続して需要者の間に広く認識されている標章『United HOMME(ユナイテッドオム)』と同一又は類似であって、インターネット情報によれば、人気ブランド商品として多くの会社・企業等により取り扱われている実情にある。そして、本願出願人が、当該人気ブランドを独占的に取り扱うことの正当な地位にあることが明らかではない。そうすると、本願出願人はその出願時、我国において『United HOMME(ユナイテッドオム)』の商標が相当広く知られていることを知りながら、当該商標が未だ商標登録されていないことを奇貨として、その顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的のもとに出願したものとみるのが相当であって、不正の目的をもって使用をするものと推認せざるを得ない。従って、本願商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は「ユナイテッドオム」の片仮名と「United HOMME」の欧文字を上下二段に書してなる処、上段の「ユナイテッドオム」の文字は下段の「United HOMME」の文字の表音と認められる。
 当審において職権をもって調査するも、当該片仮名又は当該欧文字が、本願の指定商品を取り扱う業界にあってその出願時に日本国内又は外国において既に周知商標となっていたと認め得る的確な証拠は見出せない。
 さらに本願商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用する商標であると推認し得る何らの証拠も見出せない。
 してみれば、本願商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものとは言えず、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '16/03/22