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商標「自衛隊応援クラブ」は、国の機関を表示する標章であって、著名な標章「自衛隊」と類似するから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と判断された事例
(不服2013-17559号、平成26年12月26日審決、審決公報第184号)
 
1 本願商標
 本願商標は「自衛隊応援クラブ」の文字を横書きしてなり、第16類「印刷物、紙類、文房具類、書画、写真、写真立て」、第35類「商品情報並びに商品の販売に関する情報の提供、織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供等々」及び第41類「人的交流を目的とするイベントの企画・運営又は開催」を指定商品及び指定役務として、平成24年6月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は『自衛隊応援クラブ』の文字を横書きしてなる処、『防衛省が管理・運営する、日本の安全を保つための、直接及び間接の侵略に対する防衛組織』(広辞苑第六版)を表示する著名な標章である『自衛隊』の文字を顕著に含んでなるものであるから、これと類似するものと認められる。従って、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第6号について
 商標法第4条第1項第6号によれば、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は、商標登録を受けることはできないとされている。
 そして、商標法第4条第1項第6号の趣旨は、同号に掲げる団体の公共性に鑑み、その権威、信用を尊重するとともに出所の混同を防いで需要者の利益を保護するものであると解される(知財高裁 平成20年(行ケ)第10351号判決、平成24年(行ケ)第10125号判決参照)。
 また、商標法第4条第1項第6号に該当する商標は、同号に掲げる団体等の承諾を得た場合であっても、登録することができない。
(2)本願商標の商標法第4条第1項第6号の該当性について
 ア 自衛隊とは、「日本の安全を保つための、直接及び間接の侵略に対する防衛組織。内閣総理大臣が最高指揮権を有し、防衛省が管理・運営する。陸上・海上・航空の各自衛隊からなる。1954年(昭和29)防衛庁設置法により、保安隊(警察予備隊の後身)・警備隊(海上警備隊の後身)を改組したもの。」(広辞苑第六版)とあるように、自衛隊は「内閣総理大臣が最高指揮権を有する日本の安全を保つための防衛組織」であって、極めて公共性の高い重要な組織であり、かつ、その存在や存在意義は、日本国民に広く周知され極めて高い著名性を有するものである。
 そして、「自衛隊」が国の機関を表示する標章であって、著名なものであることについては、請求人も認めている処である。
 したがって、「自衛隊」は国の機関を表示する標章であって著名なものである。
 イ 本願商標と標章「自衛隊」の類否について
 本願商標は「自衛隊応援クラブ」の文字を横書きで表してなる処、これは「自衛隊」と「応援クラブ」の文字からなるものであると容易に理解できるものである。
 そして、前記の通りの自衛隊の公共性の高さ、著名性の高さに鑑みれば、本願商標に接する者は、その構成中の「自衛隊」の文字に着目することは明らかであり、本願商標から「自衛隊」の観念及び「ジエイタイ」の称呼をも生じ、その結果、本願商標は自衛隊又はこれと何らかの関係にある者による商標であると認識させることから、自衛隊との関係で他人が本願商標を使用した場合には、その出所について誤認を生じる虞があるものと言わなければならない。
 したがって、本願商標は国の機関を表示する標章であって、著名な標章「自衛隊」と類似する商標である。
(3)請求人の主張について
 ア 請求人は、「本願商標は、『自衛隊』と『応援クラブ』との結合商標であるが、たとえ『自衛隊』が著名な標章であるとしても、両用語を切り離して看取するような格別な要因はなく、一連にのみ称呼されるとともに、全体として纏った用語として認識される。」旨主張する。
 しかしながら、本願商標は「自衛隊」の極めて高い著名性により、これに接する者が「自衛隊」に着目することは、前記(2)認定の通りである。
 以下、イ乃至エ迄省略
 オ したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(4)結論
 以上によれば、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当し、登録することができない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所
最終更新日 '16/03/22