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A. 本願商標「いつでも新鮮」は、商標法第3条第1項第6号には該当しない、と判断された事例
(不服2015-19794号、平成28年5月23日審決、審決公報第199号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「いつでも新鮮」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年1月13日に登録出願され、その後、第30類「しょうゆ」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『いつでも新鮮』の文字を標準文字で普通に用いられる方法で書してなるところ、これは人の注意をひくように工夫した宣伝文句といえるものであって、格別要部として把握し得る部分があるとも認め難いことから、その意味合いを看取した取引者・需要者は、これをその取り扱いに係る特定の商品について使用する商品識別の標識と認識するというよりは、むしろ、出願人の取り扱っている商品に関し、『常に新鮮な商品』であることを端的に表現したキャッチフレーズの一種と認識し理解し、本願商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、消費者向けに商品の販売促進のためのイメージを訴えるためのキャッチフレーズ(キャッチコピー)の一類型と理解するに止まり、これをもって自他商品の識別標識とは認識し得ないから、本願商標は、需要者をして何人かの業務に係る商品であるのかを認識することができない商標というべきである。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「いつでも新鮮」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字全体から、「常に新鮮な商品である」という程の意味合いを認識させる場合があるとしても、その指定商品との関係において、該意味合いの語が商品の宣伝広告用のキャッチフレーズとして一般に使用されている事実を見いだし得ないことから、本願商標が、商品のキャッチフレーズを表したものと認識させるものとはいい難い。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品との関係において、「いつでも新鮮」の文字が、自他商品の識別力がない語といえるほどに、取引上普通に使用されている事実も発見できなかった。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号には該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第6号及び第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-3199号、平成28年6月24日審決、審決公報第200号)
別掲
(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり、第25類及び第28類に属する商品を指定商品として,平成26年12月5日に登録出願されたものである。
 その後,本願の指定商品については、第28類「ぬいぐるみ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,愛玩動物用おもちゃ,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具」に補正されたものである。


2 原査定における拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は,『PRC』の文字を普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表してなるところ、当該文字は、『中華人民共和国(People’s Republic of China)の略語』(自由国民社発行「現代用語の基礎知識2014」)を意味する語であるから、全体として『中国製の商品』程の意味合いが認識される。そして、近年、『Made in PRC』と表記された各種の中国製の商品が一般に販売、流通している状況が確認できることからすれば,本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者等は,これを『中国製の商品』であることを認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、『中国製の商品』以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は,別掲のとおり,籠字風に表した「PRC」の各欧文字を密着させて一体的に表されているものであって,全体として特異な態様で表されているといえる。
 そして、当審において職権をもって調査するも、「PRC」の欧文字が、中国を表すものとして,本願商標の指定商品を取り扱う取引者、需要者に広く認識されている事実を発見することはできなかった。
 そうすると、「PRC」の欧文字が,「中華人民共和国」の意味を表す場合があるとしても、これに接する取引者,需要者が、直ちに、原審説示の意味合いを理解するとはいい難いものであり、本願商標は、その構成全体をもって上記外観上の特徴を備えた一体の商標として看取、把握されて、十分に自他商品の識別標識としての機能を果たすものとみるのが相当である。
 してみると、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものであり、また,その指定商品中のいずれの商品について使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/05/07