最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「ビワコロッケ」は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-9479号、平成28年10月18日審決、審決公報第204号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「ビワコロッケ」の片仮名を標準文字で表してなり、願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年4月20日に登録出願、その後、第29類「コロッケ」と補正されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『ビワコロッケ』の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の『ビワ』の文字は、果実の『枇杷』に通じる文字であるから、本願商標全体よりは『枇杷のコロッケ』ほどの意味合いが認められる。そして、指定商品を取り扱う分野においては、枇杷を始め、様々な果実を使用したコロッケが製造、販売されている実情が認められる。こうした状況においては、本願商標をその指定商品中『枇杷を用いたコロッケ』に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、商品の品質、原材料を表示したものと認識、理解するにとどまるというのが相当であるから、本願商標は、商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、『枇杷を使用したコロッケ』以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「ビワコロッケ」の片仮名を横書きしてなるところ、本願の指定商品「コロッケ」は、我が国において親しまれている食品であるから、「ビワ」及び「コロッケ」の文字を結合してなる商標であると容易に認識し得るものである。
 ところで、コロッケは、その原材料に種々の食材を混ぜることで特徴を持たせたコロッケが販売されている事実又は料理のレシピなどで紹介されている事実は認められるが、果実をその原材料に使用することが一般的である事実を見いだすことはできない。
 そして、「ビワ」の文字部分は、果実の名称としての「枇杷」以外に、楽器の名称である「琵琶」を想起させるともいえるものである。してみると、本願商標をその指定商品に使用する場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ビワ」の文字が「枇杷」を表してなるものと直ちに把握、理解するとはいい難いものであるから、原審説示の意味合いを認識するとはいえないものである。
 また、職権をもって調査するも、「ビワコロッケ」の語が、商品の品質等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実を見いだすことはできなかった。 そうすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものではないし、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものでもない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「TSUBAKI」は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-2369号、平成28年10月28日審決、審決公報第204号)
別掲
(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第3類「シャンプー,その他のせっけん類,コンディショナー,ヘアートリートメント,美容液,ヘアーオイル,頭髪用乳液,乳液状の頭髪用化粧品,ヘアースプレー,その他の化粧品」を指定商品として、平成27年3月31日に登録出願されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『TSUBAKI』の文字を普通に用いられる方法により表示してなるが、当該文字は、『椿』の文字に相応するところ、椿は、ツバキ科の常緑高木数種の総称で、種子から椿油を製し(広辞苑第六版)、その椿油がせっけん類や化粧品の原材料に用いられているものである。そうすると、本願商標をその指定商品中、椿油を使用した商品に使用しても、単に『椿油を使用したもの』であること、すなわち商品の原材料、品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、金色の「TSUBAKI」の欧文字を横書きしてなるところ、該欧文字の読みである「つばき」は、「ツバキ科の常緑高木数種の総称。」、「氏姓の一つ」及び「唾液。つば」等の複数の意味(ともに「広辞苑第六版」岩波書店発行)を有するものである。
 そして、本願の指定商品との関係においては、「ツバキ科の常緑高木数種の総称。」、すなわち、植物としての「椿」の種子から抽出された油が商品の原材料として使用されており、その商品の包装や紹介において、「椿油配合」、「椿油使用」又は「椿オイル配合」等の語が原材料を表すものとして使用されている実情がある。
 しかしながら、「TSUBAKI」の欧文字が、椿油が使用された商品の原材料を表示するものとして一般に使用されている事実を見いだすことはできないし、さらには、「椿」や「つばき」の文字のみをもって該原材料を表示する事情も見いだすことはできない。
 してみると、本願商標をその指定商品に使用する場合、これに接する取引者、需要者が、植物としての「椿」であることを連想する場合があるとしても、これが「椿油」であることまでをも認識し、それが商品の原材料、品質を表示するものであると把握、理解するとはいい難い。
 そうすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、商品の原材料、品質を認識させるものではなく、よって、商品の品質の誤認を生ずるともいえないものである。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
 その他、本願についての拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '17/07/12