最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「オアシス/OASIS」は、商標法第4条第1項第11号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-17962号、平成29年3月28日審決、審決公報第209号)
別掲


 
1 本願商標
 本願商標は、「オアシス」の片仮名及び「OASIS」の欧文字を二段に横書きしてなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願され、その後、第41類「ソフトウェアの知識の教授」他に補正されたものである。

2 引用商標
 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第5415409号商標は、別掲のとおりの構成からなり、第41類「健康管理についての知識の教授,スポーツの教授」他を指定役務として設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断

(1)本願商標

 本願商標は、「オアシス」の称呼及び観念を生じるものである。

(2)引用商標

 引用商標の上段図形部分と下段文字部分は視覚上分離して把握され、また、両者に観念的なつながりも見いだせないことからすれば、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから、上段図形部分と下段文字部分はそれぞれ独立して自他役務の識別機能を果たし得るものとみるのが相当である。
 そして、引用商標の上段図形部分についてみるに、盾型の枠及び幾何図形は特定の意味合いを認識させるものとは認められず、出所識別標識としての称呼及び観念を生じるものではない。そうすると、上段図形部分においては、図形内の上部中央に顕著に表された「OaSIS」の欧文字部分が看者に強く支配的な印象を与え、該文字部分のみを分離、抽出し、「OaSIS」の欧文字部分に着目されて取引に資される場合も決して少なくないというのが相当である。
 してみれば、引用商標は、上段図形部分の「OaSIS」の文字部分から、「オアシス」の称呼及び観念を生じるものといえる。

(3)本願商標と引用商標の類否について

 本願商標と引用商標の構成中の欧文字は、大文字と小文字の相違はあるが綴りを同じくすることから、両者は外観上近似した印象を与えるものといえる。また、共に「オアシス」の称呼及び観念を生じ、称呼及び観念において共通するものである。
 してみれば、本願商標と引用商標とは、外観において近似し、称呼及び観念において共通するものであるから、これらを全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

(4)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について

 本願商標の指定役務中の「ソフトウェアの知識の教授」と、引用商標の指定役務中の「健康管理についての知識の教授,スポーツの教授」を比較するに、「ソフトウェアの知識の教授」は、ソフトウェアの設計や操作方法等の知識を教授する役務であって、他方、「健康管理についての知識の教授」は、疾病予防や健康保持・増進のための知識を、「スポーツの教授」は、主にスポーツの技能を教授する役務であって、提供される知識の内容に明らかな相違があり、いずれもその専門家により提供されるものであるから、両者の指定役務は、役務の質、提供者、需要者が異なり、関連性を認めることはできない。
 してみれば、「ソフトウェアの知識の教授」と「健康管理についての知識の教授,スポーツの教授」とが、互いに類似する役務であるということはできない。

(5)まとめ

 以上によれば,本願商標と引用商標は類似するが、指定役務が類似しないものであるから、本願商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。



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B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第6号には該当しない、と判断された事例
(不服2016-18169号、平成29年5月10日審決、審決公報第209号)
別掲


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第29類「富士山周辺を原産とする牛肉,富士山周辺を原産とする牛肉の肉製品」を指定商品として、平成27年9月16日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標の構成中、『富士山』の文字部分は、本願の指定商品との関係において、商品の産地を認識させるにすぎない。また、『岡村牛』の文字部分のうち、『岡村』の文字は、ありふれた氏を理解させ、『牛』の文字は、本願の指定商品との関係において、原材料である『牛肉』を理解させるから、本願商標の構成中、『岡村牛』の文字部分は、ありふれた氏と、商品の原材料を認識させるにすぎない。そうすると、本願商標は、その構成中のいずれの部分も自他商品の出所識別標識として機能しないから、全体としても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、「富士山」の文字と「岡村牛」の文字とを上下二段にまとまりよく表示してなるものである。
 そして、本願商標を構成する「富士山」、「岡村」及び「牛」の各文字が特定の意味を有する語であるとしても、請求人の主張及び当審における職権による調査によれば、本願商標は、常に一体的に使用されており、原審説示のように、これに接する需要者が上記各構成文字全てについて、それらの意味合いを分離して理解した上で、本願商標を観察するとはいい難いから、本願商標は、不可分一体の商標と認識されるものというのが相当である。
 そうすると、本願商標は、その指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を有しないとはいえないものであるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。



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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/02/05