最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「獅子吼」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-5975号、平成29年11月13日審決、審決公報第217号)
別掲(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりであり、第33類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として登録出願され、その後、第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒」他と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、『獅子吼』の文字を筆文字風の書体で縦書きしてなるところ、これは、『石川県南部,白山市の高原名など。』の意味を有する語と認められる。そして、該文字は、スカイスポーツとスノーボードの拠点として知られる観光地であり、該高原の周辺には、レストランや、地元の特産品などが手に入る施設が存在する。このような実情に加え、食品業界においては、観光名所として知られる名称を商品に付して利用することが一般に行われていることも合わせて考慮すれば、本願商標をその指定商品に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、『石川県白山市の高原である獅子吼周辺地域で生産又は販売される商品』であることを表示したものと認識するにとどまるとみるのが相当であり、単に商品の産地、販売地、品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、「獅子吼」の文字を筆文字風に縦書きしてなるものである。
 そして、原審において提示された地名事典(「コンサイス日本地名事典 <第5版>」株式会社三省堂発行)によれば、石川県白山市に「獅子吼高原」が存在することが認められるものの、「獅子吼」の文字は、「獅子がほえること。大いに熱弁をふるうこと。」等の意味を有する語として一般的な辞書に掲載されているものであり、本願商標に接する者がこれから直ちに高原名としての「獅子吼高原」を想起するとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「獅子吼」の文字が、商品の産地、販売地、品質等を表示するものとして一般に使用されている事実も、また、そのように認識されていると認めるに足る事実も発見できなかった。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の産地、販売地、品質等を表示するものとはいえず、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「台風発電」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-5309、平成29年11月10日審決、審決公報第217号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「台風発電」の文字を標準文字で表してなり、第7類「風力タービン・風車の部品及び附属品,水力タービン・水車の部品及び附属品」他を指定商品として、登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『台風の持つエネルギーを利用した発電』程の意味合いを容易に把握、理解させる上、例えば、『海−自然と文化(第6巻)』(東海大学紀要海洋学部)にある『台風エネルギーを利用する発電船の基礎的研究』(寺尾裕)の論文において、『台風を利用した発電』に関して詳細に述べてられているところ、本願商標の持っている意味合い及び前記論文で述べられている内容を併せ考えると、本願商標をその指定商品中、例えば『風力タービン・風車の部品及び附属品』について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は、『台風のエネルギーを利用した風力タービンの部品及び附属品』程の意味合いを認識するにとどまり、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品識別機能を果たさないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号に該当する。また、出願人は、商標法第3条第2項の主張をしているが、使用による識別力を具備しているものとは認めらない。」旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標の構成中の「台風」の文字は、「北太平洋西部および南シナ海に発生してアジア大陸・フィリピン・日本列島などに襲来する、中心付近の最大風速が毎秒17.2メートル以上の熱帯低気圧。」の意味を、「発電」の文字は、「電気を発生させること。」の意味を有する語(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)であるが、「台風発電」の文字全体からは、原審において説示したような意味合いを暗示させる場合があるとしても、これが意味する内容は、「台風の発電」といった漠然としたものであって、直ちに本願商標の指定商品の品質を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識されるとはいい難いものである。
 そして、当審において、職権をもって調査するも、「台風発電」の文字が、その指定商品を取り扱う業界で、具体的に商品の品質を表すものとして、取引上普通に使用されている事実を発見することができず、取引者、需要者が、商品の品質を表すものと認識するというべき事情も見当たらない。
 そうすると、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語を表したものと認識されるというのが相当である。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/09/16