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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-8824号、平成30年4月4日審決、審決公報第221号)
別掲(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第24類「布団,布団カバー,かや,敷布,布団側,まくらカバー,毛布,ベッドカバー,織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,布製身の回り品,タオル,手ぬぐい,ハンカチ,ふくさ,ふろしき,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン」を指定商品として、平成28年4月4日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は、『京金彩』の文字を筆文字風に横書きしてなるところ、その構成中の『京』の文字部分は、例えば、『京菓子』が『京都で作られる菓子』を、『京細工』が『京都産の細工物』を意味する等、『京○○』と称して、『京都で作られたもの、京都で産出されたもの』を意味するものとして使用されており、『金彩』の文字部分は、『金泥または金箔でいろどること。また、その物』の語義を有し、古くから使われている語であることからすると、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する者は、『京でつくられた金泥または金箔でいろどられた物』程度の意味合いをもって、商品の品質を表示したものと認識するにとどまるものというべきであって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、京都で作られたもの以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲のとおり、「京金彩」の文字を筆文字風に横書きしてなるものであるところ、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、等間隔に表されており、全体として、視覚的にまとまりのよい一体のものとして把握し得るものである。
 そして、本願商標は、その構成中の「京」及び「金彩」の各文字が、それぞれ「みやこ。『東京』の略。『京都』の略」及び「金泥または金箔でいろどること。また、そうしたもの」(株式会社三省堂「大辞林第三版」参照)の意味を有する語であるものの、本願の指定商品との関係において、上記のとおり、視覚的にまとまりのよい一体のものとして把握し得る構成からなる本願商標の文字全体から、直ちに特定の意味合いが想起され、商品の具体的な品質を表示するものと理解されるとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「京金彩」の文字が、商品の具体的な品質を表示するものとして一般に広く使用されていると認めるに足る事実も見いだせない。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質を表示するものと認識されることはなく、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、かつ、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「うーじ青汁」は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2017-18266号、平成30年4月9日審決、審決公報第221号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「うーじ青汁」の文字を標準文字で表してなり、第3類「つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」及び第5類「薬剤,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」を指定商品として、平成28年5月19日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標の構成中の『うーじ』の文字は『(沖縄で)さとうきび」を指す言葉(語)として広く一般に知られる『ウージ』に通じるものであり、また、同『青汁』の文字は『緑色の汁。緑色の生野菜をしぼった汁』を意味する語であるから、これらが結び付いた本願商標からは、全体として『さとうきびを原料とした青汁』ほどの意味合いが容易に認識される。そして、本願商標の指定商品中には、健康や栄養補助等に関係する食品が含まれ、該食品分野においては、様々な緑葉野菜を使った各種青汁が原料成分として使用されていることは一般によく知られるところであるから、上記意味合いを認識させる本願商標をその指定商品中の『サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品』(第5類)に使用しても、それが『さとうきび由来の青汁を原料とする商品』であることを認識させるにとどまり、その商品の品質、原材料を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「うーじ青汁」の文字を標準文字で表してなるものである。
 ところで、本願商標の構成中、「青汁」の文字は、一般に親しまれた語であるとしても、「うーじ」の文字は、当審において職権をもって調査するも、特定の意味合いで一般に親しまれた語であるというべき事実は発見できなかったことからすれば、それらを結合した本願商標全体から、商品の具体的な品質等を表示するものと理解されるとはいい難い。
 また、同じく職権をもって調査するも、本願の指定商品中の「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」を取り扱う業界において、「うーじ青汁」の文字が、原審説示の意味合いのほか、商品の具体的な品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されていると認めるに足る事実は発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質等を表示するものということはできないから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/11/19