最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「おやつキューブ」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-5252号、平成30年9月12日審決、審決公報第226号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「おやつキューブ」の文字を標準文字で表してなり、第31類「ペットフード,その他の飼料」を指定商品として、平成28年11月30日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『おやつキューブ』の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、おやつ用の立方体形状の商品であるという商品の特徴を簡潔に表すものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識できないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「おやつキューブ」の文字を標準文字で表してなるものである。
 そして、本願商標が「おやつ用のキューブ状のもの」程の意味合いを想起させる場合があるとしても、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品について「おやつキューブ」の文字が、原審説示のような商品の特徴を簡潔に表すものとして使用されている事実はもとより、当該文字が本願の指定商品の取引者、需要者に、自他商品の識別標識と
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕


B. 本願商標「pHスキンケア」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-5934、平成30年9月4日審決、審決公報第226号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「pHスキンケア」の文字を標準文字で表してなり、第3類、第11類及び第44類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年9月30日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同29年7月7日受付の手続補正書により、第3類「せっけん類,化粧品,化粧水」、第11類「家庭用イオン水生成器並びにそのフィルターカートリッジ,家庭用整水器並びにそのフィルターカートリッジ,家庭用電解水生成器並びにそのフィルターカートリッジ,家庭用浄水器並びにそのフィルターカートリッジ,家庭用風呂用電解水生成器並びにそのフィルターカートリッジ,業務用イオン水生成器並びにそのフィルターカートリッジ,家庭用電熱用品類,浄水装置,家庭用電気式美容機械器具,家庭用美容美顔器,業務用電気式美顔器」及び第44類「美容,理容,医療情報の提供,健康診断,エステティック美容,スキンケア美容」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『pHスキンケア』の文字を標準文字で書してなるところ、その構成中『pH』の文字は、『水素イオン指数』の略語であり、『スキンケア』の文字は、『肌の手入れ。』等の意味を有する語であるので、本願商標は、全体として『pHによるスキンケア』程の意味合いを容易に認識させるものである。そして、『pH』をコントロールすることにより肌の手入れ等を行う化粧品・シャンプー、又は美容法などが存在する実情が認められることから、本願商標を、その指定商品・役務中、例えば『「pH」をコントロールすることにより肌の手入れ等を行うシャンプー・化粧品・化粧水・家庭用整水器・家庭用電気式美容機械器具・家庭用美容美顔器・業務用電気式美顔器・美容・エステティック美容・スキンケア美容』等に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質、役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するものである。また、本願商標を前記商品・役務以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質、役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品・役務以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨を認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、「pHスキンケア」の文字からなるところ、その構成中の「pH」の文字が「水素イオン指数」の意味を有する語であり、また「スキンケア」の文字が「肌の手入れ」の意味を有する語(ともに広辞苑 第7版 岩波書店)であるとしても、これらを一連に表した「pHスキンケア」の文字が直ちに特定の商品の品質又は役務の質等を具体的かつ直接的に表したものと理解、認識させるとはいい難いものである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、「pHスキンケア」の文字が、具体的な商品の品質又は役務の質を表示するものとして、取引上一般に使用されていると認めるに足る事実を発見することができず、さらに、本願の指定商品及び指定役務の取引者、需要者が該文字を商品の品質又は役務の質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語と認識されるというのが相当である。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質又は役務の質を表示したものとして認識されることはなく、自他商品又は役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、かつ、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれもないものというべきである。
 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '18/12/31