最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「ステーキの王様」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-4257号、平成30年11月9日審決、審決公報第228号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「ステーキの王様」の文字を標準文字により表してなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成29年2月22日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は、『ステーキの王様』の文字を標準文字で横書きしてなるところ、『ステーキの王様』の語は、飲食料品を取り扱う分野においては、『サーロイン』の意味を有する表示として使用されている実情がある。そうとすれば、本願商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、該役務が『サーロインを使用した飲食物の提供』程の意味を認識、理解するにとどまり、単に、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきである。よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

 本願商標は、「ステーキの王様」の文字よりなるところ、各構成文字は、同じ書体、同じ大きさ及び等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものである。
 そして、本願商標の構成中、「ステーキ」の文字は「肉や魚の厚めの切り身を焼いた料理。」を、「王様」の文字は「王を敬っていう語。」(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する語であって、これらを助詞の「の」で結合した本願商標全体は、辞書等に掲載されていない語であり、「肉や魚の切り身を焼いた料理の王様」ほどの意味合いを想起させるものであったとしても、原審説示の意味合いを直ちに認識させるものとはいい難く、指定役務の質や内容を直接的、具体的に表示したものとして、取引者、需要者に認識されているとはいえないものである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務の分野において、「ステーキの王様」の文字が、役務の具体的な質や内容等を表すものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することはできず、さらに、取引者、需要者が役務の質等を表示したものと認識するというべき事情も見いだせない。
 そうすると、本願商標は、その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語を表したものとして認識されるというのが相当である。
 してみれば、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の質(内容)を表示するものということはできず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、かつ、役務の質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕


B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-7104、平成30年11月15日審決、審決公報第228号)
別掲(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第3類「洗顔料,せっけん類,香料,薫料,化粧品,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛,口臭用消臭剤,動物用防臭剤」を指定商品として、平成28年12月19日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は、商品の品番又は型番を表示する記号として一般に使用される欧文字の二文字『AK』を普通に用いられる域を脱しない程度に表してなるものであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、太線で表した文字からなり、当該太線の端部が丸められた態様からなるものであるところ、これは一種独特のレタリングを施してなるものといえ、かかる構成態様からして、看者が商品の品番等の記号を表したものと認識するとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願商標が商品の品番等を表す記号として、取引上普通に使用されている事実を発見することができなかった。
 そうすると、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものとはいえず、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/01/04