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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第3号には該当しない、と判断された事例
(不服2018-3907号、平成30年11月19日審決、審決公報第229号)
別掲(本願商標)


 
1 本願商標
 本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり、第24類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年9月13日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同29年3月21日付けの手続補正書により、第24類「小樽で製造又はデザインされたタオル,小樽で製造又はデザインされたタオル地製ハンカチーフ,小樽で製造又はデザインされたハンドタオル」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、その構成中『おたるの たおる』の文字部分は、『おたる』が観光地としても著名な『小樽』を、『たおる』が指定商品との関係から『タオル』を表示したものと認識され、全体として『小樽産のタオル』といった商品の産地等を表示したものと認識され、また、イラスト図形部分は、文字部分を併せみれば、『小樽運河』の風景をイラスト図形で表示したものと認識させるものであって、商品の産地を表示したものと認識されるものである。よって、前記各部分は、自他商品の識別機能を有しないものであり、また、本願商標を全体としてみても、格別自他商品の識別機能を有するものとはいえないものであって、本願商標を指定商品中、例えば『小樽産の商品』に使用するときは、これに接する取引者、需要者が、北海道小樽産のタオルであることを表示したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識として認識することができないものである。したがって、本願商標は、その指定商品中『小樽産タオル』等について使用するときは、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と認められ、商標法第3条第1項第6号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、中央部分に街灯が大きく描かれ、その背面に屋根の付いた建物が複数描かれた町並みの図形と、その左上部に隣接して、「おたるの」の平仮名と、「たおる」の平仮名を二段に書した構成よりなるものである。
 そして、本願商標の構成中の「おたるの たおる」の文字部分は、前半部の「おたる」の文字が観光地として広く知られた「小樽」の意味合いを、後半部の「たおる」の文字が指定商品との関係から「タオル」の意味合いを認識させるものであり、両文字を格助詞の「の」で結合させてなるものと容易に認識されるものであるから、全体として「小樽のタオル」といった商品の品質等を表示したものと認識されるものであって、その指定商品との関係において、自他商品の識別力が無いか極めて弱いものというのが相当である。
 しかしながら、本願商標の構成中の図形部分は、何かしらの町並みの風景を描いた図形を表したものとして認識されるとしても、原審説示のごとき直ちに商品の産地としての小樽運河の風景を描いたものと認識させるとはいい難いものである。
 そうすると、本願商標は、全体として、文字部分と風景を描いた図形が均衡のとれたものといえるものであり、構成全体をもって、文字と図形の組合わせからなる請求人の創造に係る特異な商標として把握されるというべきである。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「海からの贈り物」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-8812、平成30年12月10日審決、審決公報第229号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「海からの贈り物」の文字を標準文字で表してなり、第29類「のりの佃煮,その他の加工水産物,肉製品,食用油脂,煮豆,その他の加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ」を指定商品として、平成29年3月9日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
 原査定は、「本願商標は、『海からの贈り物』の文字を標準文字で表してなり、『海から、人に贈る品物』程度の意味合いが認識され、該文字が海産物や加工水産物を表す際に使用されている事実があることからすると、本願の指定商品中『のりの佃煮,その他の加工水産物』に使用しても、需要者はそれが海産物や加工水産物であると認識するにとどまり、その認識を超えて、何人かの業務に係る商品の表示であると認識するとはいえず、自他商品の識別力を有しない。したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といえることから、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1のとおり、「海からの贈り物」の文字を標準文字で表してなるところ、当審において職権をもって調査したが、本願の指定商品を取り扱う業界において、「海からの贈り物」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、さらに、本願の指定商品の取引者、需要者が該文字を自他商品の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/01/04