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A. 本願商標「おいしいって、金メダル。」は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-11169、令和1年5月30日審決、審決公報第235号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「おいしいって、金メダル。」の文字を標準文字で表してなり、第35類「広告,市場調査又は分析,インターネット・郵便・電話・ファクシミリを利用した商品の販売に関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,飲食物のレシピに関する情報の提供,インターネットによる飲食物のレシピに関する情報の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、平成29年4月4日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『おいしいって、金メダル。』の文字を標準文字で表してなるところ、飲食物を提供あるいは小売や卸売を行う業界においては、その構成中、『おいしい』の文字は、普通に使用されている語であり、『金メダル』の文字は、第一位の順位にあることを指称するものとして普通に使用されているというべきであって、その構成全体から『おいしいことが一番である』の意味を容易に理解させるにとどまるものである。そうすると、本願商標は、その指定役務中、飲食物に関する役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、『役務の提供に係る飲食物・飲食料品が一番おいしいものであって、その一番おいしい飲食物・飲食料品に関する役務』であることを理解するにとどまり、結局、需要者をして何人かの業務に係る役務であるかを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、上記役務以外の役 務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるため、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「おいしいって、金メダル。」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「美味である。好ましい。」といった意味を有する形容詞の「おいしい」に助詞の「って」を続け、その後に、「金製又は金めっきのメダル。」の意味を有する名詞の「金メダル」を組み合わせてなるものであり、その組合せからは、原審が示した「おいしいことが一番である」との意味を表した語句などとして理解されるとまではいい難く、また、当審において職権をもって調査するも、当該文字が、上記意味を表した語句などとして、広く一般に使用されているといった事実を発見することもできなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定役務について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものとはいえず、かつ、役務の質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「CREPE BAUM」は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2018-15643、令和1年6月5日審決、審決公報第235号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「CREPE BAUM」の文字を標準文字で表してなり、第30類「茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ」を指定商品として、平成29年4月11日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『CREPE BAUM』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、『CREPE』の文字は、『小麦粉・牛乳・卵などを混ぜ、鉄板などでごく薄い円形に焼いたもの。』を、『BAUM』の文字は、『バター・砂糖・卵・小麦粉・コーンスターチなどを混ぜ合わせて、切り口が木の年輪に似た層を表すように、太い棒に少しずつ塗り重ねながら焼いた菓子。』を指称する『バウムクーヘン』の略称と認められることから、本願商標は全体として『クレープを使用したバウムクーヘン』といった意味合いを認識させる。そうすると、本願商標をその指定商品中の『菓子』に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「CREPE BAUM」の文字を標準文字で表してなるものである。
 そして、本願商標は、「CREPE」及び「BAUM」の各文字を結合してなるものと認識し得るものの、原審説示の「クレープを使用したバウムクーヘン」であることを直ちに認識するものとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、「CREPE BAUM」の文字が、上記指定商品との関係において、商品の品質を具体的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、かつ、当該文字に接する取引者、需要者が、それを商品の品質を表示したものと認識するとみるべき事実も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、商品の品質を表示する標章のみからなるものとはいえず、また、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/05/06