最近の注目審決・判決を紹介します。

  本願商標(別掲1)は、商標法第4条第1項第11号に該当しない、と判断された事例
(不服2020-7443、令和3年1月26日審決、審決公報第255号)

別掲1(本願商標)



別掲2(引用商標)

 
第1 本願商標

 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年3月22日に登録出願され、指定商品については、原審における同年10月23日受付の手続補正書により、第30類「ポテトチップス菓子」に補正されたものである。


第2 原査定の拒絶の理由の要旨

 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、拒絶の理由に引用した登録第5306695号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成21年7月2日に登録出願、第30類「穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」を指定商品として、同22年3月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。


第3 当審の判断

1 本願商標と引用商標について
(1)本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、灰色の横長長方形の中央下部に「極濃」の文字を大きく横書きし、「極」の文字の右上から「濃」の文字の左上にかけて、「Calbee」の欧文字と「ポテトチップス」の片仮名を二段に横書きした上で、「極」と「濃」の文字の中間部に「GOKU」及び「NOU」の文字を二段書きしてなるものである。
 そして、本願商標の構成中、「極濃」の文字は、別掲3のとおり(記載省略、複数のウェブサイトにおける「極濃」の語の使用例が示されている。)、本願の指定商品「ポテトチップス菓子」を含む「食品」を取り扱う業界においては、「味付けが濃厚であること」や「原材料の配合割合が高いこと」を示す語として、一般に使用されているものであるから、「極濃」の文字は、本願の指定商品との関係においては、自他商品の識別標識としての機能はないものである。また、「GOKU」及び「NOU」の文字は、「極濃」の文字部分の読みを欧文字表記したものと容易に認識されるものである。
 また、本願商標の構成中、「ポテトチップス」の文字は、本願の指定商品との関係においては、商品そのものを、 普通に用いられる方法で表すものであるから、当該文字も、自他商品の識別標識としての機能はないものである。
 さらに、本願商標の構成中「Calbee」の文字は、請求人の業務に係る商品「ポテトチップス菓子」等に使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているものであることは、当審において顕著な事実であるから、本願商標は、「Calbee」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというのが相当である。
 そうすると、本願商標は、その構成中「Calbee」の文字部分に相応して、「カルビー」の称呼を生じ、「(請求人のハウスマークとしての)カルビー」の観念を生じるものである。

(2)引用商標について
 引用商標は、別掲2のとおり、右辺を半円状にした赤色の四角形の内側上部に、赤色の円と黄色の円を重ね、その中央に顔を付した白色の花状の図形を配し、その下部に「シマダヤ」の文字を横書きした図形(以下「シマダヤ図形部分」という。)を表し、その下に、「極濃」の漢字を大きく横書きしてなるところ、その構成中、「極濃」の文字は、上記(1)のとおり、「食品」を取り扱う業界においては、「味付けが濃厚であること」や「原材料の配合割合が高いこと」を示す語として、一般に使用されているものであるから、「極濃」の文字は、引用商標の指定商品との関係においては、自他商品の識別標識としての機能はないものである。
 そして、シマダヤ図形部分中、「シマダヤ」の文字は、辞書等に掲載がなく、特定の語義を有することのない一種の造語として認識されるものであって、自他商品の識別標識として機能を果たし得るものである。また、「シマダヤ」の文字を除いた図形部分からは、特定の称呼、観念は生じないものとみるのが相当である。
 してみれば、自他商品を識別する機能を果たすシマダヤ図形部分が、商品の出所識別標識として看者に強い印象を与えるというべきである。
 そうすると、引用商標は、その構成中、シマダヤ図形部分の「シマダヤ」文字部分に相応して、「シマダヤ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(3)本願商標と引用商標との類否について
 本願商標の要部である「Calbee」の文字部分と、引用商標の要部であるシマダヤ図形部分を比較すると、両者は、構成文字、図形の有無に差異を有するものであるから、外観上、判然と区別し得るものである。
 次に、称呼においては、本願商標から生じる「カルビー」の称呼と、引用商標から生じる「シマダヤ」の称呼とは、その音構成において、明らかな差異を有するものであるから、それぞれを称呼するときは、明瞭に聴別し得るものである。
 さらに、観念においては、本願商標は、「(請求人のハウスマークとしての)カルビー」の観念が生じるのに対し、引用商標からは、特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれはないものである。
 そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。

2 まとめ
 以上からすれば、本願商標は、引用商標と非類似の商標であるから、その指定商品の類否については論ずるまでもなく、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '21/2/10