改正特許法等の解説・2008
〜発明の単一性の要件・知的財産裁判の動向
   意匠保護の動向・商標保護の動向の解説〜(2)

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  2.知的財産関係の裁判などの動向
 知的財産関係の裁判などの動向に関して、特許庁が発行している「平成19年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト」に掲載されている資料から紹介する。
 なお、全文は、
http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h19_jitsumusy_txt.htm
の「審判の現状」からダウンロード可能である。

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(1)特許権侵害訴訟と特許無効審判の動向
 2006年における特許・実用新案・意匠・商標合計での審判事件、審決取消訴訟、侵害訴訟の動向は概略以下の通りであった。
 知的財産関係民事事件(侵害訴訟など)の件数は漸減傾向にある。
 また、特許庁における特許無効審判、商標登録無効審判の請求件数も漸減傾向にある。



 

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(2)権利者敗訴の原因・権利濫用抗弁の利用状況
 特許・実用新案の侵害事件に関する地裁判決動向は次の通りである。

侵害事件の地裁判決動向(特実)
※最高裁判所HPに掲載された地裁判決を分析

(注釈) 侵害訴訟事件は、最高裁判所ホームページの知的財産判決速報(地方裁判所分)に判決が掲載された事件のうち、特許権・実用新案権に基づく侵害訴訟事件を対象としております。

 地裁で判決が出されたもののうち約8割強は原告(特許権者)敗訴になっている。ただし、和解・取り下げによって終局したものは下記の表に含まれていない。和解で終局したものの数は判決が出されたものと同程度ある。和解で終局したものの中には、実質的に原告(特許権者)勝訴と認めることのできるものが多くあると思われる。
 裁判所における特許性の判断結果は次の通りである。

裁判所における特許性の判断結果
※平成12年4月〜平成18年12月までの数値


(注釈) 侵害訴訟事件は、最高裁判所ホームページの知的財産判決速報(地方裁判所分)に判決が掲載された事件のうち、特許権・実用新実権に基づく侵害訴訟事件を対象としております。

 平成12年4月〜平成18年12月までの侵害事件総数504件の中で、特許無効の抗弁(特許庁の無効審判において特許は無効にされるべきものと認められるから特許権者は権利行使できない。(特許法第104条の3))がされた件数は307件で、この中の140件(46%)で「権利無効」、51件(16%)で「無効でない」との判断が下されている。
 原告(特許権者)敗訴の理由で最も多いのは「非侵害」であるが、特許侵害訴訟の6割強において無効の抗弁が申し立てられ、その中の46%に権利無効の判断が下されているところから、権利行使にあたっては、事前に無効事由の有無を確認することが必要と思われる。

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(3)意匠権・商標権に関する侵害訴訟の動向
 意匠権、商標権についての侵害訴訟の動向は下記のとおりである。
 特許・実用新案の侵害訴訟の場合と同じく判決によらず、和解・取り下げによって終局したものが判決の数と同程度あり、これは前記の表に含まれていない。
 意匠、商標においても被告が無効の抗弁を申し立てる場合がある。意匠権侵害訴訟では50%が「無効である」との判断を受け、商標権侵害訴訟で「無効である」との判断を受けたのは13%となっている。


<意匠>


<商標>




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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/5/7